第12話 女神降臨

「,,,,,,て。お,,,て。起きて,,,」


あれからどのくらい寝たのだろう。

聞き覚えのない声が僕の意識を覚醒させる。

精霊たちの声ではない。

彼らは元気な子供のような声だが、今僕に話しかけている声は透き通るような落ち着いた声である。

声の主を確かめようと目を開けると,,,


「,,,,,,やっと,,,起きた。」


そこには女神が降臨していた。

白い髪に白い肌、赤い目の少女。

そこに黒い服装を加えることでより美しさが際立っている。

そんな少女を目にした瞬間僕の口から意思がそのまま出てきた


「かわいい。」


そのまま頭に浮かんだ言葉を口にした。

そして目の前にいる少女はポカンとした後、すぐに顔が真っ赤になった。


「,,,,,,なに,,,,,,言ってるの,,,」


「あ、いや。可愛いなと思って,,,」


顔がますます赤くなった少女は俯きながら僕に話しかける。


「,,,,,,わたしが,,,,,,怖くないの?」


「怖い?こんなに可愛い女の子を怖がっていたら世の中の全てに怯えて暮らさなきゃならないよ。」


「,,,,,,!」


そう伝えると少女は泣き始めてしまった。

しまった。いきなり見ず知らずの男から可愛いと言われたら怖いよな。僕が後悔していると少女は満面の笑みで口を開く。


「,,,,,,じゃあ,,,結婚,,,,,,する,,,,,,」



その言葉を聞いた瞬間僕の頭は真っ白になった。

いきなり結婚!?とも思ったが、これはいいかもしれない。

僕は前世も含め、他人にあまり興味が無い。

そんな僕が結婚するチャンスなど今後あるかどうか分からない。

それに、このまま結婚しないと母様が適当な人と無理やり結婚させて来そうだからな。

もう勇者のことなんてどうでもいいや。

この子と暮らせるように邪魔するやつはボコボコにしよう。


「うん。いいよ。」


そんな近所の友人の頼みを聞くような軽い返事を返した。


「,,,!,,,,,,でも,,,,,,まだダメ。この街で,,,,,,やることがある。2日,,,,欲しい。その後,,,,,け,,,結婚,,,」


再び顔を赤くした少女が申し訳なさそうにそう告げる。


「じゃあ婚約だね。」


「婚約,,,,,,!」


こうして2日後に結婚予定の婚約が(勝手に)成立した。

その時僕は重大な問題に気づいてしまった。

自己紹介がまだだった。


「そういえば、自己紹介をしてなかったね。

僕はルイダ。好きなことは昼寝。昨日成人したばかりだ。」


すると少女も口を開く。


「,,,,,,私は,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,ディア。好きなことは読書。,,,,,,年齢はひみつ。」


ディアは恥ずかしそうにそう答える。

僕にはその姿がとても愛らしく見えた。

他人との交流とは僕の昼寝を邪魔するめんどくさい事としか考えていなかった。

今までもそうだったし、これから死ぬまでずっとそうだと思っていた。

しかしディアは家族以外で初めてめんどくさいと思わない不思議な雰囲気を纏った子だった。


「じゃあ2日後、またこの場所に集まろう。その間に僕もやることを片付けてくるよ。」


先程はどうでもいいと思ったが、「勇者」の事はそうもいかない。

2日後までに勇者をやめてディアと結婚する。

僕はその事を決心した。


「,,,,,,わかった。私も早く終わらせるから。,,,またこの木陰で。」


そうと決まればいち早く行動しなければ。

僕は城壁へ走り出した。


「,,,,,,『テレポート』。」


ディアの声が聞こたので僕は足を止め木陰の方へ振り返る。

しかし、そこにはディアはいなかった。

おかしいと思い木陰に戻ろうとした瞬間、僕の首筋に痛みが走った。

嫌な予感がした。

僕の家には毒を塗った針を刺して人を気絶させる冥土が居る。

振り返るとやはりそこに冥土がいた。


「さぁ、謁見の時間です。坊っちゃま。」


こうして僕は昨日から数えて4回目の気絶をしたのであった。

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