第11話 怒りと自爆と策略と
一方教会ではそこにいる全員が慌てていた。
その理由はもちろん脱走した勇者のことである。
「あのバカ息子がァ!謁見まであと1時間もないのにどこに逃げたんだァ!」
「アナタ、落ち着いてください。あと一時間以内に見つければいいのですから。」
「落ち着いていられるかぁ!どこにいるか分からない上、拘束もできない!いったいどうすればいいんだ!」
ちなみに1番荒れているのは面倒が増えすぎた公爵だった。
それとは逆に夫人は落ち着いていた。
「アンチマジックやスリープが効かなかったのは勇者スキルの恩恵だ。だけど兄貴の場所さえ分かればお袋も親父もいらない。」
そんな中解決策を出したのはヴァイオレットだった。
「親父、親父なら金がなくて家に帰れない時どこで時間を潰す?」
「うーん、私なら街の外の木陰で昼寝するかな。昔、仕事をサボる時はそうしていた。」
「ア、ナ、タ?」
「あ!マズイ!」
母が父の胸ぐらをつかみ隣の部屋に連れていかれるのを横目で見ながらヴァイオレットはポケットからベルを出し鳴らす。
「何用でしょうか、ヴァイオレット様」
冥土長サリーが音もなく現れる。
「街の外の木の近くを探せ。アニキは親父に似てるから昼寝をしてるはずだ。その隙に魔物用麻酔を使え。」
「それですと3日は動けませんがよろしいので?」
「勇者スキルは毒耐性も上がる。恐らく効果は10分ほどだ。だが、それくらいしないとアニキは無力化できない。」
「かしこまりました。」
そう言い残して部屋にはヴァイオレットだけが残った。
「全く手のかかるアニキだぜ。まぁ、そこがいいんだけどな。」
「ほんとにヴィーはお兄ちゃんが大好きだね!」
「あったりまえだろ?いつも面倒くさそうにしてるけどアニキが凄いことは知ってるんだから。むしろあたし達以外の女にアニキが惚れてないか心配で,,,」
「大丈夫。お兄ちゃんが結婚なんてめんどくさいことする訳ないよ。」
「,,,それもそうだな。じゃ、教会の本でも漁るか。」
「うん!私たちの目的のために!」
両親が話し合い(物理)をしている隣の部屋で盛大なフラグを立てる妹たちであった。
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