第8話 勇者の条件

「そこは僕が説明するよ」


いつの間にか眼鏡をかけた神が話し始める。


「まずは魔力の質について。魔力の量は基本みんな初期値は同じなんだけど、消費すればするだけ量が増える。ここまでは君も知ってるね?」


あぁ。

貴族なら小さい頃に習うからな。


「そう。普通の人間ならね。」


おい、まさか,,,


「そう。君は神の空間、それも序列二位の僕の空間に入りその上神と会話をしている。神は細胞一つ一つがドラゴン並の魔力の塊でできている。そんな存在と同じ空間で会話なんてしたら、そりゃまだ形の定まっていなかった君の魂はそれに適応して魔力量がえげつないほど上がるよね。」


つまり僕はお前と会話した時点で勇者になることは確定していたと?


「いや、魔力量は精霊が気に入る基準の中でも3番目だ。だからこの時点では確定はしていなかった。問題は魂の色と性格だ。」


それはお前とは関係ないのか?


「あぁ。僕は一切関係していない。魂の色はその魂が生まれた時点で決まる。例えば魂の色が赤色だったら死んでも、天界に行っても、冥界に行っても、転生してもその人の魂の色は赤のままだ。魂の色に干渉するには最高神とその他の神が全員消滅するくらいの魔力が要る。だから君の魂の色は一切変化していない。つまりは運が良かったんだよ。」


僕からしたら不運だけどね。


「だけど、魂の色によって運動能力や魔法の適正だって変わってくるよ?赤だったら火属性で丈夫な体に。青だったら水属性で器用になったり。珍しいのだったら白の光属性だったりする。だけど光属性は魔力が多過ぎてだいたい体が弱い。」


なるほど。

その色によって人生が変わってくるわけか。

ちなみに僕は何色なんだ?


「君は無色。透明だね。故に何色にもなれるし何色でもない。偶に色の薄い人はいるけど全くの無色なんて僕は見たことがなかった。精霊は綺麗な魂を好むからね。無色以上に綺麗な色はこの世に存在しないから君を好むんだよ。」


無色の魂の特徴は分かるのか?


「さっきも言っただろう『何色にでもなれるし何色でもない』って。つまり君はすべての属性の魔法が使えて、その他の能力も高水準。君は成長すれば歴代最強の勇者になれるのさ!」


ふーん。どうでもいいや。


「どうでもいい,,,だと!?やろうと思えば世界征服も神へ成り上がることも出来るのに?」


世界征服は征服する前も後もめんどくさいし、神は仕事押し付けられそうだからヤダ。

それより最後の性格については?


「君はほんとにブレないな。まぁいいや。性格についてだね。これは簡単だよ。君は精霊がどんな生活を送っているか知ってるかい?」


いや、知らんよ。

さっきまで精霊のことすら知らなかったのに分かるわけないじゃん。


「精霊は基本的に朝起きて日向ぼっこしてから寝る、の習慣で生活を送っている。」


いいなぁ。

僕もそんな生活を送りたい。


「そう。その考え方。精霊はその生活に満足している。そしてその生活を批判せずあろうことかその生活を望む君を精霊たちは気に入ったのさ。」


なるほど、納得。

確かに僕も好きなだけだらけさせてくれる人は好きだし、それと同じか。


「それと同じだよ。意思の強い上位聖霊や精霊王以外は君を見た瞬間にベッタリだよ。っと、そんな話をしている内に日が登り始めたね。」


うぅ、また地獄が始まるのか,,,。

そいえば僕は転生した時とは別に勇者スキルを押し付けられた時にもお前の空間に行って会話したけど、魔力量が上がってるなんてことないよな。


「え、もちろん上がってるよ?今の魔力量は元の3倍くらいかな?」


待て、元はいくつだったんだ。


「それは,,,いやこの際勇者スキルのチュートリアルついでに調べてみようか。」


勇者スキルで調べる?

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