第7話 勇者スキルと精霊
「あはははは」
「うふふふふ」
「えへへへへ」
小さな子の笑い声が聞こえて、僕は目を覚ました。
僕が目を開けるとそこには月明かりに照らされた妖精のような小さな生き物が3匹いた。
「あ、おきた〜」
「おきた〜」
「ほんとだ〜」
疲れすぎかな?幻聴だけでなく幻覚まで見えてきた。
「幻聴じゃないよ。」
僕の耳元からつい最近聞いた声がした。
それに気づいた時には僕の拳は魔力を纏い、その声を発した物体を殴っていた。
「ぶべらっパァ!」
,,,おかしい。
奴の顔はもっと強度があったはず。
今殴った物はゴムボールくらい柔らかかった。
その疑問を晴らすために声がした方を向いてみる。
「いたた、いきなり殴るなんて酷いよ。」
そこには翼の生えた球体にゆるキャラみたいな顔が付いた物体があった。
しかし、その物体の正体は既にわかっている。
「なんでここにいる。神」
その物体から発せられた声は、紛れもなく神の声だった。
それにこんなおかしな物体神くらいしか使わないだろう。
「そ、それは,,,君への説明とお詫び。」
なるほど、説明もお詫びもどちらも勇者スキルについてだな。
「君は話が早くてとても助かるよ。そう、僕は勇者スキルについて話に来たんだ。」
ここでも思考は読み取られるのか。
って言うかその姿と周りにいる妖精はなんだ?
「あ、そいえば普通の人間には精霊は見えないんだっけ。この子達は精霊。まぁ妖精みたいなものさ。この子達に好かれると魔法の威力が上がったり、消費魔力が減ったり、偶に無詠唱ができるようになったりするんだ。」
つまり、好かれてメリットはあるがデメリットはないと。
「それが,,,君に限ってはそんなことは無いんだ。」
どういうことだ?
「好かれる精霊が3人くらいまでなら良かったんだ。精霊は一人一人持つ力が大きいからさっき言ったみたいなことができるんだけど、人1人に対する精霊の数が多いと必然的にその人は絶大な力を手に入れる。そして君は元より沢山の精霊たちに好かれていた。その沢山の精霊たちと共に成人の義を受けると,,,」
まさか!
「君のことが好きな精霊たちは君に強力なスキルを与えようとする。」
そしてその強力なスキルと言うのが,,,
「そう、『勇者』スキルだ。」
つまり僕のスキルは成人の義を受ける前から決まっていた?
「うん、そう言う事。さらに君に好意を抱いてる精霊の数が多すぎて神の僕でも君のスキルに干渉できなかったんだ。ちなみに精霊が見えるようになったのは『勇者』スキルのおかげだよ」
なるほど。
だからあの時お前は顔が真っ青だったのか。
それでお前のその姿は何なんだ?
「この姿は神鎧と言って神が地上に追放された時に魂を込められる鎧で、耐久値と再生能力は高いけど五感や痛覚は感じるし、元の姿とは程遠い姿になるから元の名前も悪用できない。更に精霊のように普通の人には見えないんだ。」
ふーん、そう。
「あれ!?僕の話は興味なし!?こうなった過程とか気にならない?」
うん、特に気にはならない。そんなことより,,,
「君らは僕のことが好きなのか?」
「うん、だいすき〜」
「ルイダすき〜」
「すき〜」
3人の精霊が僕の腕にしがみついてきた。
,,,かわいいな。
それに名前を知っているあたり神に着いてきたのでは無く本当に僕の周りに居たようだ。
「そいえば君たちは3人しか居ないけど他にはいないのか?さっきあいつは3人くらいじゃ勇者にはならないって言ってたけど。」
「ついにアイツ呼ばわりですね。分かります。」
「ほかにもいるよ〜」
「ルイダがみえるようになったからみんなかくれたの〜」
「でもみんなちかくにいるよ〜」
どうやら精霊とは恥ずかしがり屋な性格のようだ。
そして僕は最後の質問を精霊に投げかける。
「じゃあ最後の質問だけど、君たちはなんで僕が好きなの?」
「それはまりょくの量と」
「たましいの色と」
「なによりその性格だよ。」
聞いても理由が分からなかった。
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