第8話 異変



家中を一通り探索し終わった後、私は深い疲労感とともにリビングの中央に座り込んでいた。


足元には、散らばった荷物と共に、一日中探し回った証拠が残っている。


部屋の隅々まで調べたが、異常を説明できる手がかりは見つからなかった。

やっと落ち着いて考えられる時間を得たが、頭の中には母の「○○○○○に殺される」という言葉がぐるぐると回り続けていた。


冷たい風がリビングの窓から吹き込む。

振り返ると、そこには誰もいない。


心臓が早鐘のように打ち始め、何か不穏な空気が漂っている。

空気の変化にさえ敏感になっている自分に、少し不安を感じながらも、冷静さを保とうと必死になっていた。


台所の古い食器棚の隅に、小さな包みが落ちているのを見つけた。

手に取ってみると、それは母が使っていたと思われる古びた木の箱だった。

じっと箱を見つめながら、心臓の鼓動が一層激しくなる。

箱の蓋を開けると、中には古い手紙と、小さな装飾品が入っていた。

手紙には母の筆跡で何かが書かれているが、内容は色褪せていて読み取るのが難しい。


手紙を開こうとすると、箱の中から再び奇妙な冷気が漂ってきた。

その冷気が私の肌に触れると、冷たい震えが体中に広がる。

手紙の内容を読み取る前に、胸がぎゅっと締め付けられるような不安感が押し寄せてくる。

手紙には「家を守る者」とだけ書かれていたが、その言葉が何を意味するのか全くわからない。


リビングのソファ近くに置かれていた椅子の隙間に、一枚のメモが落ちていた。

拾い上げてみると、それは母の手書きで「来るな」とだけ書かれていた。

冷たい空気が一層深まる中、そのメモを見つけた瞬間、心臓が一瞬止まるような感覚が走った。

母が何かを知っていたのか、それとも何かから逃れようとしていたのか、その答えを探し続けるしかない。


夜が深まるにつれて、リビングの窓から外を眺めると、視界の端に動く影が見えたような気がした。

外には何も見当たらないが、その影が心に重くのしかかる。

恐怖が胸の奥でふくらみ、思わず息を呑んでしまう。

自分が一人でここにいるという現実が、ますます恐ろしいものに感じられる。



その瞬間、背後からかすかな音が聞こえた。

振り返ると、何もないはずのソファの上に、黒い影が一瞬だけ見えた気がする。

目をこらしても、影は消えてしまっていた。


台所の奥にある古いワードローブの扉が、静かに軋む音を立てながら開いているのが見えた。

そこには普段は見られない物が散乱している。

近づくと、突如として風が吹き込み、私の髪が乱れる。

目の前にあるのは、まるで誰かが急いで隠したかのように乱雑に置かれた、昔の家具や古びた装飾品だった。


夜の闇がますます深くなる中で、私は異常な現象に対処しながらも、心の奥での恐怖が抑えきれない。

電気を点けるたびに、部屋の隅々で微かな動きがあるように感じ、何も見当たらないにもかかわらず、何かが私を見ているような気がしてならない。


今夜、家の中に隠された謎が、私を包み込む暗闇と共に徐々に明らかになるかもしれない。


母が遺した言葉と、家に潜む不穏な空気が交錯する中で、私はただひたすらに、この恐怖の正体を解明しなければならない。


夜が明けることなく、ただ恐怖と緊迫感だけが、私を包み込んでいる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

遺品整理 @a_________

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る