第5話 放置された空間
リビングのドアを押すと、古びた木の扉がギーギーと不気味な音を立てて開いた。
部屋に入ると、まず感じたのは、冷たく湿った空気とともに漂う古い匂いだった。
薄暗い中、目が慣れるまでの時間がかかりそうだ。
リビングは広めの空間で、左側には大きな窓があり、そのカーテンは重く、
所々にカビのようなシミが見受けられる。
外からの光はほとんど届かず、室内は深い暗闇に包まれている。
窓の下には古びたソファが置かれ、厚いカバーがかけられている。
カバーには埃が積もっており、その上に無造作に置かれたクッションがさらに古びた雰囲気を醸し出している。
ソファの前には、木製のテーブルがあり、上には古い新聞や雑誌が散乱している。
新聞は湿気でふやけ、ページがくしゃくしゃになっている。
テーブルの脚は数箇所が傷んでおり、木の表面がひび割れている。
部屋の中心には、大きな暖炉があり、その中には長い間使われていない灰が積もっている。
暖炉の上には古い時計が置かれており、その秒針が刻む音が、静かな空間に響き渡る。
時計の文字盤はひび割れ、ガラスの部分が曇っている。
時計の横には、いくつかの古い写真立てが並び、埃をかぶっている。
壁には淡いクリーム色のペイントが施されているが、年月が経つにつれて色あせ、所々に剥がれた部分が目立つ。
壁の一部には古い家族の写真や絵画が掛けられており、額縁はひび割れ、埃が積もっている。
写真の中の家族の笑顔が、暗い中で薄らと見え、どこか不気味な雰囲気を漂わせている。
部屋の床にはカーペットが敷かれており、その上には数年分の埃が積もっている。
カーペットの織り目はほつれ、色褪せている。
歩くたびにカーペットがほんのりと沈み、微細な埃が軽く舞い上がる。
天井には古いシャンデリアが吊るされており、幾つかのクリスタルが曇っている。
シャンデリアの下には、目立たない位置にひっそりと置かれた古い椅子があり、その背もたれには蜘蛛の巣が張りついている。
部屋全体に漂う冷たい空気と重たい埃の匂いが、私の呼吸を少し困難にさせる。
古びた家具や物たちが、長い間放置されていた証拠を示し、静かな部屋の中で静寂とともに不安が一層深まる。
この空間に一人でいることで、心の奥深くに潜む恐怖が強くなり、手が震えるのを感じる。
私はその不安な感覚を抑えながら、さらに奥へと進む決意を固める。
部屋の静けさと恐怖が一体となり、私を包み込む中、深い暗闇の中に踏み込む準備をする。
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