第4話 気配


心臓が一瞬止まったかのように感じられた。






静寂の中で、背後の気配がますます強くなっている。


振り向いてはいけない.....



ドアが完全に閉じる音が響いた後、目の前にはただの暗闇が広がっていた。


ほとんど何も見えないその空間の中で、微かに感じる異様な冷気と重苦しさが私の背筋を寒くする。



冷たさが肌に刺さり、古びた匂いが鼻をつく。


玄関のマットに立つと、湿気でしっとりとした感触が足の裏に広がる。


靴を片足ずつ慎重に脱ぎ、靴底から滴る湿気がマットに吸い込まれる。


目に入るスリッパは埃をかぶり、使われていないことが一目で分かる。


鮮やかな色合いが静寂の中で異様に目立つ。


背筋に寒さが走り、スリッパを一つ手に取る。


軽く振ると、細かな埃がふわりと舞い上がる。

内側を確認すると、少し擦り切れているがまだ使えそうだ。


スリッパを足に合わせ、履くと内側の布地がほんのり温かい。

少しだけ安心感が広がる。

もう片方のスリッパも取り、同様に履く。

足がスリッパに包まれ、冷たい外気から解放される。


歩くたびにスリッパが柔らかく静かな音を立て、家の中の静けさの中で微かに響く。


家の内部は予想以上に荒れ果てていた。

壁のクリーム色は色あせ、所々に剥がれた部分や汚れが目立つ。

古い家族の写真や絵画は埃をかぶり、古びた額縁が寂寥感を引き立てる。


写真や絵画の中でわずかに反射する光があるが、全体は暗いままだ。


歩くたびにスリッパが床に触れ、柔らかく湿った感触が伝わる。

古い木製の床板が、歩くたびに軽く軋む音を立てる。


廊下の終わりには、リビングやダイニングがあると思われるドアがぼんやりと見える。

静かな空間の中に自分以外の存在を感じ、心臓が激しく鼓動する。



廊下の突き当たりに近づくにつれて、暗闇の中に包まれる感覚が強まる。



視界が限られ、周囲が完全に見えない中で、足元を慎重に確認しながら進む。




ようやく廊下の終わりに近づくと、リビングのドアが目の前に現れる。



深呼吸をしてからそのドアを押す。


古い木のドアがギーギーと不気味な音を立てて開くと、暗闇の中で古びた家具や埃をかぶった物たちがぼんやりと浮かび上がる。


長い間放置されていた証拠が広がる。


静まり返った空間に、久しぶりの人間の気配が戻るその瞬間、

さらに深い静けさが家全体に広がる。

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