第4話



普段からあまり話さないから誤解が生まれたんだよ!と言う律の一言から、レストランの親睦会が開かれることになった。


スタッフ全員が集まって、楽しそうに食事をし、お酒を飲んでいる。


私も普段はお酒なんて飲まないけど、美味しいからか、柄にもなく楽しんでしまっている。


「莉乃、今日はよく飲んでるね!」

「うん、楽しいからかな、お酒がよく進むよ」


こんなに沢山お酒を飲んだのは、いつぶりだろうか


「明日は休みだから、たらふく飲めるもんね」


律は豪酒でちょっとのそっとじゃ酔わない。酔ったところは一度も見たことがない。


「でも、飲みすぎはよくないよ」

「うん、」


次第に酔いが回ってきたのか、ちょっとフラフラするような気が…


うん。これ以上飲むのは止めておこう。


「莉乃、顔赤いけど、少し飲みすぎたんじゃないか?」


「あ、シェフ…大丈夫、大丈夫です…ちょっとふらふらするだけで…」


立ち上がろうとすると、バランスを崩して倒れそうになる。


そんな私をシェフがすぐに支えてくれた。


「ほら、無理すんな。少し外の空気でも吸いに行くぞ」


「すみません…」


また迷惑をかけてしまった。


私を支えながら、外に連れ出す。



夜風が心地よく吹く中、シェフが私をベンチに座らせてくれた。


「ここで少し休んでて」

そういうと立ち上がって、店の中に入ろうとする。


私はシェフの服の裾を掴んだ。


「行かないでください、、」


酔ったからか、人肌恋しい。


「は?」

調子に乗って、わがまま言って呆れられた…


「す、すみません」


恥ずかしい。消えたい。

今ので酔いが覚めた気もする。


「いや、水を持ってくるだけですぐ戻ってくるから、大人しく座って待ってて。」


完全に子供扱いされてる。


シェフが水を取りに行き、戻ってくる。


「ありがとうございます。シェフ…すみません、迷惑かけてしまって、」


「気にするな。誰だって酔うことはある」


水を飲みながら、少しずつ落ち着いてくる。


「シェフって、本当は優しいんですね…いつも厳しいけど、こういう時は…」


まだ酔いが回っているのか、思ったことをそのまま口にしていた。


「仕事では厳しくするけど、ちゃんと大切に思ってるから。だから、無理すんな」


シェフは私のことを従業員として、従業員だから大切にしてくれる。


従業員として扱ってくれているだけでもありがたいのに、残念な気持ちになる私は…


なんて欲張りなんだろう。


「ありがとうございます、シェフ。これからも期待に応えられるように頑張ります」


「そうだな。一緒に頑張ろう」



夜風が心地良いからだろうか、シェフの低い声が落ち着くからだろうか、眠くなって…

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