memory3 ラスト Ⅲ
「マスター?」
僕はお城の最上階に行き、声を掛ける。
マスターを探す時には初めにここを訪れる様にしていたんだけど……どうやら、今は別の場所にいらっしゃるらしい。
本当はマスターの居場所を探る機能も僕には備わっているらしいんだけど、それを使うのは『プライバシーの侵害』という事で。僕は毎回、自分の足でマスターを探すんだ。
だから今回もマスターの行きそうな場所を考えながら、次なる場所へと向かおうとした時――『何か』が頭の中へ入ってきた。
『皆さん、大変に残念なお知らせがあります……』
これは……『電波』……?
今までに無い事だったのでよくは判らないけれど、とにかく何かの信号を使って送られてくる事だけは判る。
『先程、星那様が……お亡くなりに、なられました……』
――え? ……それって、一体、どういう……?
急な報せに、僕はエレベーターのボタンを押すのも止めて、次なる言葉を待った。
それから、何時間経ったのだろう……。
あれっきり、何の音沙汰も無い。
けれど、それはさっきの情報に偽りが無いという、何よりの証拠だった。
何故なら、あんな冗談をマスターがなさる筈は無いと思うし、城の中にいる僕にも聞こえたくらいなんだからマスターやシェナさんが気付かない訳が無い。
それなのに何の訂正も無いって事は――
「……やっぱり、本当に……」
マスターは、死んでしまったんだ。何だか実感が湧かない。
僕は、エレベーターに乗るのをやめて、窓に向かって腰を降ろした。
この世界のどこにも、もうマスターはいないんだ。そう思うと、僕は次に何をすれば良いのかが判らなかった。
暫くして、ぼうっと眺めていた窓の外に、白い物を見付けた。
目を凝らして見ると、それは――雪。
次第に量を増して、雪は降り積もってゆく。
……なんだか、雪って悲しい心みたいだ。僕はぼんやりと思う。
冷たくて、ふわふわと……一つ一つは小さいけれど、確実に存在する。
そして地に落ちると周りの熱をも奪って、やがては少しずつ積もっていくんだ。
――そう考えたら、雪は僕らの代弁者みたいな気がしてくる。
マスターの事を想う、様々な『人』。
皆の、心の様に。
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