悪役同士が戦って……
茜が見張りの男の前に姿を現すと、男は驚いた表情を浮かべる。しかし、それも一瞬のことで、すぐに冷静さを取り戻したようだ。彼は腰に差していた剣を抜くと構えた。それを見た茜も身構える。そして、戦いが始まったのである。俺はその間に建物の中へと侵入することに成功したのだが――中に入った瞬間、何かがおかしいことに気づいた。
(人が……いない?)
そう、誰もいないのだ。俺は不思議に思いながらも先へ進んでいくことにした。第5悪の組織の本拠地の中を探索している最中のことだが、俺はふとある疑問を抱いた。それは、なぜこうも簡単に侵入することができたのかということだ。茜の話によれば、この組織のアジトは厳重に警備されているはずなのだが……今のところ誰とも遭遇していないし、物音一つ聞こえてこない。まるで人の気配すら感じないのだ……これは一体どういうことなのだろう? そんなことを考えているうちに、俺は大きな扉の前に立っていた。どうやらこの部屋の中に第5悪の組織の本拠地のトップがいるみたいだが……。
「さて、どうしたものか……」
俺が悩んでいる間にも時間は過ぎていくばかりだ。このままでは埒が明かないと思い、思い切って中に入ることにした。そして――中に入った途端、俺の目に飛び込んできたのは……。
「なっ!?」
その光景を見て思わず言葉を失ってしまう……そこには大量の死体が転がっていたのだ。それも一人や二人ではない、かなりの数の死体があるようだ。しかも全員が同じ制服を着ていることから察するに――彼らは全員第5悪の組織の構成員だったのだろう。
「これは一体どういうことだ!?」
俺が困惑していると、背後から男の声がしたので振り返る。そこには、長身で緑髪の男が立っていた。年齢は20代後半といったところだろうか? 服装からしてこの男がリーダー格なのだろうと思う。俺は警戒しながら話しかけた。
「お前は何者だ?」
すると、男はニヤリと笑みを浮かべながら口を開く。
「俺か? 俺はなぁ……第6悪の組織の長だけどよぉ……なんか文句ある?」
(どうして第6のボスがここに居るんだよ!?)
「第5の奴らを殺したのは、お前で間違いないな?」
「ああ、そうだけど……なんか文句ある?」
男は悪びれる様子もなく答える。俺は質問を続けた。
「どうして殺したんだ?」
すると、男はヘラヘラしながら答えた。
「いや〜、あいつらが生意気で邪魔だったからさぁ……つい殺しちゃったんだよぉ」
「そうか……なら、俺がお前を殺しても問題ないな。お前は俺にとって……生意気で邪魔な存在だからな」
俺がそう言うと、男は突然笑い始めた。そして――大声で叫ぶように言った。
「おいおい! この俺がお前みたいなガキに殺されるなんて……そいつは傑作だなぁ!」
(コイツ……完全に俺を舐めてるみたいだな)
俺はそう思うと、男に向かって手をかざして闇魔法を放った。
「ダーク・シャドウ!」
すると、男の足元に闇の沼が出現して、そこから無数の手が伸びてきて男を拘束しようとするが……男はそれを軽々と躱してみせる。それを見た俺は舌打ちをした。
「へぇ〜、中々やるじゃん」
男は余裕そうな表情を浮かべながら言うが、そんな隙だらけの状態を逃すはずがないだろう? 俺はすかさず次の魔法を放った。
「ダーク・スフィア!」
今度は男の周りに無数の闇の玉が出現して、それが一斉に襲いかかる。しかし――それでもなお、男は無傷だった。
(マジかよ……)
俺が驚いていると、男はニヤリと笑みを浮かべる。そして、俺に向かって手をかざすと叫んだ。
「ジスク・グラビティ!」
次の瞬間、俺の体が地面に押し付けられてしまう。そして、そのまま地面に倒れ込んでしまった。立ち上がろうとするも全く動けない……それどころか段々と意識が遠のいていくのを感じた。
(くそっ!)
俺が悔しがっていると、男がゆっくりと近づいてきた。そして、俺を見下ろすようにして言う。
「お前はなかなか強かったよぉ……でもなぁ、所詮はその程度さぁ」
男はニヤリと笑みを浮かべると、俺にとどめを刺そうとする。
「もがきながら死にやがれぇ! ジスク・グラビ――」
俺は不気味な笑みを浮かべながら、大声で叫んだ。
「戦いはこれからだろ!? 殺し合おうぜぇぇぇぇぇぇええ!」
俺の叫び声を聞いた男は驚いたように目を見開くが、すぐに笑い始めた。そして、口を開く。
「ギャハハ! なんだよそれ? お前、正気かぁ?」
「んなこと、どうでもいい! さあ、続きを始めようか!」
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