魔法少女が二人いて……

 それから数十分後――俺は夏希と冬香ちゃんが待っている家へと戻ってきた。ドアを開けると、二人は出迎えてくれた。


「お兄ちゃん、大丈夫? ……その人、誰?」

「色々あったみたいね」


 二人がそう言うのに対して、俺は苦笑を浮かべるしかなかった。そして、茜の方に目を向ける。


「とりあえず紹介するよ。コイツは……」


 俺がそう言うと、彼女は自己紹介を始めた。


「色坂茜といいます」


 すると、二人は驚いたような表情を浮かべた後、口を開いた。


「し、四宮夏希よ……」

「冬香です……」


 二人の反応を見た俺は、茜に話しかけた。


「それで……本当に泊まるのか?」

「もちろんよ」


(色々と心配だし、夏希たちには申し訳ないなぁ……)


 俺がそう考えていると、夏希が口を開いた。


「隼人、この人は一体どういう人なの?  どうして一緒にいるの?」

「それは……」


(どう説明すればいいんだ?)


 俺が答えられずにいると、茜が代わりに説明を始める。


「私は隼人を助けた張本人よ」

「「えっ!?」」


 茜の言葉を聞いて、夏希と冬香ちゃんが驚愕の表情を浮かべた。そして、二人は俺のことを見る。俺はゆっくりと口を開いた。


「実はな……」


 それから俺は二人に説明を始めたのだった――。


 俺が話し終えると、二人はしばらくの間黙り込んでしまったが――やがて夏希が口を開いた。


「そうゆうことだったんだ……」


(まさかこんなことになるとは思ってなかったけどな……)


 俺は心の中でそう思うと、夏希の方に目を向けた。


「すまないな……迷惑じゃないか?」


 すると、彼女は首を横に振って答える。


「全然平気よ」


(それならいいが……)


 俺が納得していると、夏希が再び口を開いた。


「それで?  これからどうするつもりなの?」

「とりあえず様子見だな……」


 俺がそう答えると、夏希は納得したように頷いた。そして、俺は口を開く。


「とりあえず、ご飯作ろっか?」

「ええ、そうね」

 

 俺は靴を脱いでキッチンへと向かった。それからしばらくして――料理が完成すると、テーブルの上に並べていく。すると、茜が話しかけてきた。


「美味しそうね」

「そう言ってもらえると嬉しいよ」


 そして、全員が席に着いたところで手を合わせる。


『いただきます!』


 俺たちは一斉に言うと、食事を始めたのだった。そして、食事を終えると――茜は洗い物を手伝ってくれることになった。


「悪いな……」


 俺がそう言うと、彼女は微笑みながら答える。


「気にしないでいいわ。泊めさせてもらってる身だしね……」


(案外、優しい性格なんだな)


 そんなことを考えていると、夏希が俺の耳元で囁いてきた。


「ねぇ、隼人……茜さんに見惚れてない?」

「えっ!? みっ、見惚れてなんかいないぞ!?」


 俺は慌てて否定するが、夏希は頬を膨らませながら俺のことを見てくる。


「本当かなぁ……」


(夏希の奴、嫉妬してるのか?)


 俺は苦笑いを浮かべると、再び洗い物を再開するのだった。そして――夜になり、寝る時間になったのだが……俺たちは全員で一つの部屋に布団を敷いて寝ることになった。


(わざわざ一部屋で全員が寝る必要があるのか?)


「それじゃあ……お休み」


 俺がそう言うと、三人はそれぞれ返事をしてから布団に入った。それから数分後には、三人の寝息が聞こえてきた。どうやらもう寝たみたいだ。


(寝付くの早いな……)


 俺は中々寝付けられなかったので、しばらく布団に入ったまま起きていたが、いつの間にか眠ってしまっていたのだった――。


 翌朝――目を覚ました俺は体を起こした。すると、三人の姿が見えなかったのだ。


(どこ行ったんだ?)


 そう思いながらリビングに向かうと、そこには茜の姿があった。彼女はテレビを見ながらくつろいでいるようだ。


「あら、起きたのね」

「ああ……」


 時刻を見ると11時を過ぎていた。どうやら夏希と冬香ちゃんは学校へ行ってしまったようだ。茜が学校に行ってないのが気になるが……多分、魔法少女として活動しているから学校には行っていないのだろう。俺はそんなことを考えながら口を開く。


「二人は学校に行ったみたいだな」


 俺がそう言うと、茜はテレビに目を向けながら言った。


「そうね。それにしても、昨日は大変だったわ……」

「そうだな……」


(まさかあんなことになるなんて思いもしなかったからな……)


 俺がそう思っていると、茜が突然こんなことを言い出した。


「ねえ、あなたも私と一緒に悪の組織を滅ぼさない?」

「は? 何だよ急に……」

「私一人で行動するには限界があるの」

「まあ、確かにそうかもしれないが……」

「それならいいじゃない」

「でもなぁ……」


(元悪の組織のボスが、正義の魔法少女と一緒に悪を滅ぼすってどうなんだよ?)


 俺は少し考え込んでしまう。すると、茜がこんなことを言い出した。


「それに……仲間は多い方がいいと思うわよ?」

「まあ……確かにな」


(悪い話じゃないかもだけどさ……)


 俺はしばらく考えた後――こう答えたのだった。


「分かったよ……俺もお前と一緒に戦うことにする」


 俺がそう言うと、茜は嬉しそうな表情を浮かべた。そして、俺の手を握るとこう言ってくる。


「ありがとう!」

「お、おう……」


(この笑顔は反則だろ……)


 俺は照れてしまい顔を逸らすと、彼女は不思議そうな顔をした。


「どうかしたの?」

「何でもない……」


 それから俺は茜と一緒に家を出ることにした。そして、鍵を閉める時に思ったのだが、この家は2LDK+ロフト付きのアパートなので一人暮らしには広いと思う。まあ、俺には関係ないけど……。


「本日向かうのは、第4悪の組織のアジトよ。居場所は突き止めてあるから、悪党を滅殺するだけよ」

「お前って意外とサイコパスだよな……」


 俺がそう言うと、茜は不機嫌そうな表情を浮かべた。


「失礼ね……私は正義の味方、魔法少女よ」

「はいはい……」


 そんなやり取りをした後、俺たちは目的地に向かって歩き出した。そして、しばらく歩いていると――第4悪の組織のアジトに到着した。そこは古びた倉庫のような建物で、周りに人気はなかった。どうやらこの中に奴らがいるようだ。俺は茜に話しかけた。


「それで?  どうやって中に入るんだ?」


 すると、茜はニヤリと笑みを浮かべる。


「もちろん正面からに決まってるじゃない」


(おいおい……大丈夫なのかよ?)


 俺が不安を感じていると、茜が先に行ってしまったので仕方なく後を追うことにしたのだった――。

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