魔法少女と仲間になって……

「どうしてお前がここに……!?」

「悪党滅殺! もう二度と正義は悪に負けない!」


 すると、吹き飛ばされた男は額から血を出しながら立ち上がり、頭を掻きながら口を開いた。


「魔法少女……か。邪魔が入ってきたけど……まっいっか! どっちも殺せばOK!」

「元悪党、あなたを助けにきたわけじゃないから。勘違いしないでよね」

「へいへい。つうか、俺は言ったはずだぞ。二度と俺の前に現れるなって」

「……そんなこと聞いてないわ」

「なら、仕方ないな」


 男はそう言うと、茜に向かって火属性の魔法を放ってきた。茜はその攻撃をひらりと躱すと、再び男に向かって魔法を放った。


時間停止エンペラー・タイム!」


 男の体はピタリと動かなくなり、それと同時に俺は魔法を発動できるようになった。恐らく奴の『魔法封印マジック・シール』の発動が止まったのだろう。


「悪は滅ぶべし!  正義の鉄拳!」


(いや、それただのパンチだろ……)


 俺が心の中でそうツッコミを入れると、茜の放った魔法が、男に向かって飛んで行く。そして――男の腹部に直撃した。男は口から血を吐きながら地面に倒れると、ピクピクと体を痙攣させる。どうやら気絶してしまったようだ。


(パンチじゃないし……)


 俺は茜の方に顔を向けると、彼女に話しかけた。


「どうしてお前がここにいるんだよ?」

「それはこっちのセリフよ」

「俺は彼女たちと外出してたら、コイツに声をかけられて殺されそうになったんだよ」

「……なるほどね」


 茜は納得するように言うと、男の方に顔を向ける。そして、そのまま立ち去ろうとしたので、慌てて彼女の腕を掴んだ。


「ちょっと待てよ! もう行くのか?」

「ええ、そうよ。もう用事は終わったし……」

「そうか……って、コイツはどうするんだよ!? まさかこのままにしておくつもりか!? そしたらまた俺を殺しにくるじゃねぇか!」

「しょうがないわね……それじゃあ、私に任せて」


 茜がそう言うと、男に向かって手をかざした。すると、男の体が発光し始め、やがて消滅したのだった。それを見た俺は、驚愕の表情を浮かべる。


「今のは一体……」

「私の固有魔法よ」

「へぇ~、そうなんだ~」


(怖っ!)


 俺が引きつった笑みを浮かべていると、茜は「それじゃあ」と言って立ち去ろうとしたので、俺は慌てて引き止める。


「待ってくれよ! もう少し話をしようぜ?」

「話すことなんてないわよ……」

「そんなこと言わずにさ~、頼む!」


 俺が必死に頼み込むと、彼女は渋々了承してくれた。こうして俺たちは近くのカフェに入り、話をすることになったのだった。


 カフェに入ると、俺と茜は向かい合うようにして席に座った。そして――注文した飲み物が届いたところで、俺は口を開くことにした。まずはお礼を言わなければならないだろうと思い、頭を下げる。


「ありがとな」


 すると、茜は少し驚いたような表情を浮かべた後、小さく笑った。


「何笑ってんだよ?」


 俺がそう尋ねると、彼女は慌てて表情を引き締めた。そして、口を開く。


「いえ、何でもないわ」

「……そうか」


(何か言いたそうだったけど気のせいか?)


 そんなことを考えていると、茜が話しかけてきた。


「それで?  あなたはこれからどうするの?」

「……とりあえず、しばらくは様子を見るつもりだ」


(まさか他の組織から狙われることになるなんて……思いもしなかったからな)


 俺がそう思っていると、彼女が返事をする。


「そう……」

「何だ? 何か言いたいことでもあるのか?」


 俺が尋ねると、彼女は首を横に振って答える。そして、続けて口を開いた。


「何でもないわ」

「そうか」


 俺は深く考えずに飲み物を口に含んだ。それから数分後――茜が突然こんなことを言い始める。


「ねえ、もしよければなんだけど……」

「ん?」


 俺が首を傾げると、彼女は少しモジモジしながら言葉を続けた。


「私もあなたの傍に居させてくれないかしら?」

「は……?」


 突然の申し出に困惑していると、茜が説明を始めた。


「じ、実は私……ある組織から命を狙われているの」

「そうなのか?」


(まさか俺と同じ状況だったとはな……)


 俺が驚いていると、彼女は更に話を続ける。


「それで、一人でいるよりは誰かと一緒に居た方が安全だと思って……」

「なるほど……」


 俺は少し考えた後、ゆっくりと口を開いた。


「分かった。一緒に居よう」

「本当!?」


 茜は嬉しそうな表情を浮かべると、身を乗り出してきた。俺は慌てて離れると、少し顔を赤くしながら口を開く。


「あ、ああ……」


(近いっての!)


 俺が顔を背けると、茜はハッと我に返り、恥ずかしそうに座りなおした。そして、再び話し始める。


「それじゃあ、よろしく」

「おう」


 それから俺たちはカフェを出た後――俺は夏希に電話をかけた。そして、茜と一緒に帰ることを伝えたのだった。

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