敵対者が現れて……
翌朝――目を覚ますと、目の前には眠っている夏希と冬香ちゃんがいた。俺は二人を起こさないようにそっとベッドから出ると、リビングへと向かう。そして、ソファーに座ってテレビをつけた。ニュース番組を見ていると、ここ最近、日本の治安が悪くなっているとタレントのおじさんが言っている。
(仮に日本の治安が悪くなっても、夏希たちが幸せだと思えるなら構わないけどな……)
俺がそんなことを思っていると、夏希と冬香ちゃんが目を覚ましたようで、寝室から出てくる足音が聞こえてきた。
「おはよう……」
「お兄ちゃん、おはよ~」
二人は眠そうな声で挨拶してきた。俺もまたそれに返すように口を開く。
「二人ともおはよう。今、朝食作るから座って待ってて」
「ありがとう、隼人」
「分かったぁ~」
夏希と冬香ちゃんが椅子に座るのを一目見ると、俺は朝食を作り始める。しばらくして料理が完成し、テーブルの上に並べると、二人は美味しそうに食べ始めた。俺もまた食事を始めることにする。そして――朝食を食べ終えると、後片付けを始める。今日は休日なので、ゆっくりと過ごすことができるだろう。
「ねえ、隼人……」
夏希が話しかけてきたので、俺は作業を止めて彼女の方を向いた。
「どうした?」
「今日はどこか行かない?」
「……そうだな。たまには出かけるのも悪くないかもな」
俺はそう答えると、後片付けを終えて外出の準備を始めることにした。そして――俺たちは家から出て街へと向かうことにするのだった……。
家を出てから数十分後――俺たちは街へとやって来た。休日だけあって多くの人々で賑わっている。俺は隣にいる夏希の方を見ると、彼女は笑顔を浮かべていた。どうやら楽しんでいるようだ。冬香ちゃんも笑顔で楽しんでいる。
そんなことを考えていると――突然、後ろから声をかけられたので振り返る。そこには一人の男性がいた。年齢は20代半ばといったところだろうか? 身長は175センチくらいで、整った顔立ちをしている。服装も清潔感があってオシャレだ。
「やあやあ! 君を探していたよ!」
そう言うと男は、俺の手を握ってきた。
「えっ……誰?」
俺は困惑しながらもそう尋ねると、男は口を開いた。
「僕は君と同じ世界に住む者だよ! 」
(一体何が言いたいんだ……?)
「何の用ですか?」
俺が警戒しながら聞くと、彼は笑いながら答えた。
「そんなに怖がらなくて大丈夫だよ! 僕はただ君に興味があるだけさ! えーと、確か名前は……市原隼人くんだよね!」
「……っ! どうして俺の名前を……!?」
「ダメじゃないか~、組織を勝手に抜けるなんて……」
(コイツ……もしかして他の悪の組織の……!)
俺は拳を握りしめると、戦闘態勢に入る。それを見た夏希と冬香ちゃんが慌てて口を開いた。
「お兄ちゃん、どうしたの!?」
「隼人!?」
(ここで魔法を使ったら周りの人を巻き込んでしまう……が、コイツは恐らく魔法を使わないと倒せない相手! やむを得ないが、魔法を使って――)
「そんなに警戒しないでよ~! 僕はただ……ボスから君を殺せと命令されちゃったんだから……」
「なっ……!?」
(ボスだと!? 悪の組織が複数あるのは何となく知ってはいたが……そういうことか)
「夏希、冬香ちゃん……速く逃げろ!」
「えっ!?」
「お兄ちゃん!?」
「聞こえなかったのか! 速く逃げろと言ってるんだ!」
俺がそう叫ぶと、夏希と冬香ちゃんは走って逃げて行った。それを確認すると、俺は目の前の男に目を向ける。
「悪の組織の幹部……だろ?」
「ん? 何の事かな?」
(とぼけやがって……!)
「まあいいさ、ここでお前を倒すだけだ」
俺がそう言うと、男はニヤリと笑った。そして――ゆっくりと口を開いた。
「それは無理じゃないかな~?」
「……どういうことだ?」
「君が第1悪の組織のボスだってことは聞かせてるけど……格が違うよ!」
「そうか……死ね!」
俺は無詠唱魔法を発動する。そして、闇属性の光線を放った。それは一直線に男へと向かっていくが、男は涼しい顔で躱してみせる。
「こんな遅い攻撃……簡単に避けられるよ?」
「ちっ……!」
俺は舌打ちすると、次々と魔法を繰り出していくが、全て躱されてしまう。そんな攻防が続いていたその時だった――突然、俺の魔法が発動しなくなってしまった。
(魔法が……発動しない!?)
「どうやら……僕の魔法が発動したみたいだね!」
「何っ!?」
「この魔法はね~『
(魔法が使えないなら……!)
俺は拳を握りしめると、男に向かって突進していった。そして、男の顔面に一撃を叩き込む!
「ぐふっ!」
男は勢い良く吹き飛び地面を転がったが、すぐに立ち上がった。そして、ニヤリと笑う。
「とても力強くて骨が折れるぐらいのグーパン……でも残念だったね! その程度じゃ僕は倒せないよ!」
そう言うと、男は俺に向かって火属性の魔法を放ってきた。
「ファイア・サウンド!」
音符の形をしている火の塊が俺に向かって飛んでくるが、攻撃を間一髪で躱す。そして、再び拳を握りしめると――男に向かって走り出し、渾身の一撃を放つ。
「うおぉぉぉぉぁぉおおっ!!」
だが、俺の攻撃は簡単に躱されてしまった。
「そんな大ぶりの攻撃……当たる訳ないじゃん!」
「くそっ……!」
(魔法が使えないんじゃ、どうやってコイツを倒せばいいんだよ!?)
俺が心の中でそう叫んだその時――突然、男の体が吹き飛んだ。何が起きたのか分からずにいると、一人の少女が俺の前に現れた。
その少女は、魔法少女――色坂茜だった。
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