魔法少女と戦って……

 翌朝――目を覚ますと、隣には裸姿の夏希がいた。昨日のことを思い出してしまい顔が赤くなるのを感じたが、なんとか平静を保つことに成功する。それからしばらくして彼女も目を覚ましたようで、俺の姿を見るなり抱きついてきた。俺もまた彼女を抱きしめる形で受け入れることにするのだった。


 その後、俺たちは(妹の冬香ちゃんも含めて)朝食を摂ると、夏希と妹の冬香ちゃんは学校へと向かって行ってしまった。家の中に一人残された俺はというと――。


「しつけぇぞ……色坂茜」


 俺はそう言いながら、玄関の扉を開ける。すると――そこには予想通りの人物が立っていた。茜は不敵な笑みを浮かべながら口を開く。


「気づかないと思っていたけど……」

「何の用だ?」


 俺が尋ねると、彼女はニヤリと笑って答えた。


「悪を滅するため……いえ、あなたを殺すために来たのよ!」

「そうか……」


 俺はそれだけ呟くと、拳を握りしめた。そして、戦闘態勢に入る。それを見た茜もまた魔法を詠唱し始めた。彼女の魔法が完成する前に攻撃しようと駆け出した瞬間――俺の体は動かなくなった。まるで金縛りにあったかのように指先一本動かせない状態だ。そんな俺を嘲笑うかのような表情で彼女は話しかけてきた。


「私の新魔法『時間停止エンペラータイム』よ! この魔法を使えばどんな敵だって倒せるわ!」


 彼女はそう言うと、身動きの取れない俺に向かってゆっくりと歩いてくる。そして――口を開いた。


「悪党滅殺! イナズマ・プラネッド!」


 彼女は俺に向けて雷属性の魔法を放つ。放たれた魔法が俺に当たろうとした次の瞬間――。


「正義の勝利ね! 悪の組――」

「いつでも正義が勝つとは限らねぇんだよ……クソビッチ!」


 俺はそう言うと、彼女の魔法を弾き飛ばした。そして、反撃に転じる。蹴りを食らわせようとしたが、彼女は間一髪で回避すると距離を取った。


「な……どうして動けるのよ!? あんたは体が動かないはずなのに!?」

「確かに体は動かなかったが……体が動かなくても脳が機能してれば、無詠唱魔法が使えるんだよ!」

「……っ!? 無詠唱魔法が使えるなんて……!」


 彼女は動揺を隠しきれていないようだった。そんな隙だらけな彼女を見逃すはずもなく、俺はすかさず攻撃を仕掛ける。


「ダーク・ライン!」

「くっ……!!」


 彼女は俺の放った闇属性の魔法を躱すことができずに、直撃を食らう。そして、彼女はその場に倒れこんだ。


「正義が悪に勝つとは決まってねぇんだよ……」


 俺は倒れている彼女にそう吐き捨てると、大きく息をついて彼女のことを見つめる。


(それにしても……コイツの魔法が解除されてから体が動くようになるまで、一瞬だったけど妙に時間がかかったような……)


 そんなことを思っていると、彼女は目を覚まして立ち上がろうとするが――俺が口を開いた。


「これ以上、俺に牙を向けたら……殺すぞ」


 俺は冷酷な目つきで彼女にそう告げると、彼女は下を向いて動かなくなった。


「分かったならさっさと帰れ。そして……二度と俺の前に姿を見せるな」


 俺がそう命令すると、彼女はゆっくりと立ち上がり、何も言わずに立ち去っていった。俺はそれを確認すると、家の中へと戻っていった。そして、リビングのソファーに倒れ込むと、深い眠りに落ちていったのだった……。


 それから数時間後――目を覚ました俺の近くには夏希と妹の冬香ちゃんの姿があった。どうやら学校から帰ってきて風呂にも入ったようだ。


「お兄ちゃん、おはよう!」

「隼人、体調悪いの?」

「大丈夫。少し疲れて寝てただけだよ」


 俺はそう言いながら起き上がると、背伸びをした。そして、ソファーから立ち上がると、キッチンへと向かって夕食の支度を始める。すると、夏希が話しかけてきた。


「ねえ、隼人……」

「どうした?」

「私も手伝ってあげる!」 

「お姉ちゃんだけズルい! 私もお兄ちゃんの手伝いする!」

「ありがとな……」


 俺はそう言うと、夏希と冬香ちゃんに指示を出しながら調理を始めた。そして――夕食が完成してテーブルに並べられる。俺たちは席に着くと、早速食べ始めた。食事を終えると、俺は後片付けを始めることにした。


 そして、洗い物をしている最中――夏希と冬香ちゃんの声が聞こえてきた。


「お姉ちゃん……」

「どうしたの?」

「今日は一緒に寝てもいいよね……?」


 俺が後片付けを終えてリビングに戻ってくると、二人は何やら話し合っていた。どうやら俺を間に入れて三人で寝たいらしい。


(まあ、別に断る理由もないんだけどな……)


 俺はそんなことを思いながらも、夏希と冬香ちゃんに声をかけることにした。


「今日は三人で寝ようか」


 俺がそう言うと、二人は嬉しそうな表情を浮かべる。そんな二人を連れて寝室へと向かった。そして――三人で布団の中に入る。


「お休み……」

「お休みなさい、お兄ちゃん!」

「ああ、お休み」


 俺はそう答えると、眠りについたのだった――。

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