もう一人の魔法少女がいて……

 翌朝――目を覚ますと、目の前には美少女の顔があった。


(そっか……。昨日一緒に寝たんだった)


 そんなことを思いながらも、俺は彼女の寝顔を眺める。すると、彼女はゆっくりと目を覚ました。


「おはよう、隼人……」

「ああ、おはよう」


 俺はそう答えてから夏希にキスをする。そして――俺たちは朝御飯の支度をしていた。妹の冬香ちゃんはまだ寝ている。


「なあ、夏希。冬香ちゃんっていつもあんな感じなのか?」


 俺がそう尋ねると、彼女は答える。


「ええ、そうよ。朝が弱いみたいでね……」


(なるほど……アニメでも朝は苦手だったしな)


 俺はそんなことを思いながら料理を作る手を止めずに続ける。そして――朝食を作り終えると、俺は冬香ちゃんを起こしに部屋へと向かった。


 冬香ちゃんの部屋に入ると、彼女はぐっすりと眠っている。そんな彼女を見て、俺は苦笑した後――耳元で囁くように話しかけた。


「おーい、起きてくれー」


 しかし、彼女は全く起きる気配がない。そこで俺は彼女の耳に息を吹きかけた。

すると――彼女はビクッと体を震わせると同時に目を覚ます。そして、俺の顔を見て驚いた表情を浮かべた。


「えっ? お兄ちゃん!?」


(可愛いな……)


 俺はそんなことを思いながら口を開く。


「おはよう、冬香ちゃん」


 俺がそう挨拶すると、彼女も笑顔で答えた。


「おはよう! お兄ちゃん!」


 俺たちはそんなやり取りをした後、リビングへと向かい――三人で朝御飯を食べ始めた。朝食のメニューはご飯に味噌汁、それに焼き鮭といったシンプルなものだ。しかし、これがめちゃくちゃ美味しいのだ。俺が夢中で食べていると、夏希が話しかけてきた。


「どう?  私の料理は?」


 俺は口の中に食べ物が入っている状態で返事をする。


「夏希が作った料理は最高にうまい!」


 すると、夏希は頬を膨らませた。そして、俺に向かって口を開く。


「ちゃんと飲み込んでから話しなさいよね!」


 そう言われて俺は慌てて口の中のものを飲み込むと――改めて返事をした。


「めっちゃ美味いよ!」

「ふふん! そうでしょう!」


 夏希は嬉しそうな表情を浮かべている。そんな彼女の隣で冬香ちゃんも嬉しそうに笑っていた。


夏希と妹の冬香ちゃんは学校へと行ってしまい、家の中に居るのは俺一人だ。俺はリビングのソファーに座ってテレビを見ながら、今後のことを考えていた。


(これからどうしよう……)


そんなことを思っていると――突然、玄関の方からチャイムが鳴る音が聞こえてきた。


「誰だろう?」


 俺はそう呟いて、玄関へと向かう。そして扉を開けようとした瞬間――扉が破壊されて一人の人物が家の中に入ってきた。


「えっ……扉が……」

「夏希ちゃんの家にどうして悪の組織の残党がいるのか分からないけど……そんなことどうでもいい。悪は滅するのみ! クロスチェンジ!」


そして――魔法少女へと変身した。


(やっぱりか……)


 俺は心の中でそう思いながら彼女を見つめる。

 すると、彼女は俺に向かって話しかけてきた。


「悪の組織は滅するのみよ! 覚悟しなさい!」


 そう言って彼女は俺に攻撃を仕掛けてくる。しかし、俺はそれを軽々と躱す。そして、彼女の手を掴むと……そのまま壁に押し付けた。


「なっ……何をするのよ!?」

「それはこっちの台詞だ。扉の修理代はしっかり払って貰うからな。もう一人の魔法少女! 名前は確か……色坂茜いろさかあかねと言ったっけか……」


 俺がそう言うと、茜は驚愕した表情で叫んだ。


「どうして私の名前を知ってるのよ!?」

「それは……秘密だ」


 俺はそう言って、茜の手を引っ張りながら家の外へと連れ出した。そして、茜の手を離す。彼女は俺の手を掴んでいた手をさすりながら俺のことを睨みつける。


「ちょっと! 急に何するのよ!」

「お前のせいで家の扉が破壊したんだぞ! しっかり責任とれよ!」

「うっ……うるさいわね! 悪は滅ぼすだけよ!」


 彼女はそう叫ぶと、再び攻撃を仕掛けてきた。しかし、俺はそれを軽々と躱していく。そして、彼女の背後に回り込むと……そのまま羽交い締めにした。


「くっ……離しなさいよ!」

「離すわけないだろ。お前が扉の修理代を払ってくれるまでこのままだ!」


 俺がそう言うと、彼女はジタバタともがき始めた。しかし、俺から逃れることはできないようだ。やがて諦めたのか大人しくなると、俺に話しかけてきた。


「分かったわよ! 扉を修理すればいいんでしょ!」

「当たり前だ」


 俺がそう言うと、茜は不満そうな顔をしながらも詠唱を唱えて魔法を放ち――破壊された扉は元通りになった。


「これでいいでしょ!」


 茜は俺に向かって叫ぶと、そのままどこかへ飛んで行ってしまった。


 俺はそれを見届けると、家の中へと戻っていった――。


―――――――――――――――――

色坂茜と四宮夏希は友達ではありません。

色坂茜が一方的に四宮夏希のことを知っているだけです。

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