第53話


私は夜の街を一人で歩いていた。


いつもなら魔術の鍛錬のために、学校が終わると寄り道をせずにすぐに姫路家の屋敷に帰るのだが、今日はそんな気分ではなかった。


生まれて初めての失恋の痛みで、私の精神はズタズタに引き裂かれていた。


私は月城真琴に恋をしていた。


そのことに気がついた時には、もう私の初恋は終わっていたのだ。


二日前の土曜日、私はショッピングモールで花村萌と月城真琴がキスをしているのを見てしまった。


その時に感じた心の痛みによって私は自分が月城真琴にどんな感情を抱いていたのかを自覚した。


そしてその想いがもう決して報われることはないことも。


思えば、柊は最初っから私の気持ちに気づいていたのだろう。


だから私に月城真琴との同盟を結ぶことを提案してきたのだ。


私が初恋の人間と殺し合うことがないように。


私が初恋の人間と側にいられるように。


私はそんな柊の提案に乗り、月城くんと同盟を結んだ。


月城くんの方でもなんらかの理由で私を必要としてくれていたようで、同盟関係はあっさりと成立した。


そしてその矢先に花村萌と月城くんがキスをしているのを見てしまった。


二人が唇を重ねている姿を見た時に感じた胸の痛みは、今でもはっきりと思い出せる。


息が苦しくなって、世界が色褪せていき、何もかもが無意味に思えてくる。


私は叫び出したり、泣き出したい気持ちをなんとか堪えてあの時は月城くんに気づかれにようにその場を後にした。


そして家に帰って今までで一番泣いた。


月城くんと花村萌が交際関係にあったなんて知らなかった。


月城くんは最近は大人しくなったけれど、前までは周囲に横柄な態度をとる性格の悪い人間だと思われて忌避されており、花村萌もそんな月城くんを忌避する人間の一人だと思っていた。


でも私の知らないところで二人は互いに互いを好きになり、付き合っていたのだ。


そうでもなければ、休日に二人きりで出掛けて、キスをしたりはしないだろう。


一体何が二人の出会いのきっかけだったのか。


もしかしたら魂喰いに襲われた花村萌を月城くんが助けたのがきっかけなのかもしれないと、そんなことを思った。


だがもうそんなことはどうだっていい。


私は失恋してしまった。


もう私の月城くんへのこの想いが成就することはない。


月城くんは花村萌のことが好きなのだから。


せめて…せめて自分のこの気持ちを月城くんに伝えたかったとそう思った。


だが今ではそれも叶わない。


花村萌と付き合っている月城くんに今更私が想いを伝えたところで迷惑でしかないからだ。


同盟関係も、解消したほうがいいだろう。


元々この同盟関係は、柊が私のために気を回して考えだしてくれたものだ。


でも月城くんが花村萌と付き合っている以上、同盟を結ぶわけにはいかない。


確かに月城くんとの同盟は、魔術大戦において私にとっても有利に働くだろう。


でもそんなことよりも、叶わない想いを胸に抱きながら月城くんのそばにいることが私には耐えられなかった。


もし同盟関係を結び、月城くんの側にいることになれば、私は月城くんを諦めることができない。


きっと想いを募らせて、その果てに、さらに辛い気分を味わうことになるだろう。


だったら最初っから同盟なんて結ばないほうがいい。


私から持ちかけておいて悪いけれど、月城くんとの同盟関係は早いところ解消したほうがいいだろう。


そう思った私は、週明けの月曜日…つまるところ今日、早速月城くんに同盟関係の解消を持ちかけた。


月城くんは昨日の今日で同盟関係を解消するなんて言い出した私に驚いていたけれど、最後には受け入れてくれた。


私はほっと胸を撫で下ろした。


これで月城くんとの接点がなくなった。


これで月城くんのことを諦めることができる。


初恋のことを忘れて、また心機一転、魔術大戦に臨むことができる。


そう思っていたはずなのに…


「はぁ…」


重苦しいため息が溢れる。


月城くんとの同盟関係を解消した私に残ったのは、今までに感じたこともない喪失感だけだった。


何か、胸にぽっかりと大きな穴が空いたような気分だ。


月城くんのことを諦めて、これで魔術大戦に集中できると思ったのに、なんだか魔術大戦のことすらどうでもいい気分になってきた。


私は今までこの時のために魔術の鍛錬を重ねてきた。


魔術大戦で勝って魔術王になり、私こそが姫路家の後継にふさわしいのだと、内外に知らしめるために今日まで努力してきたのだ。


だから魔術大戦が始まった時にはこれ以上ない高揚を覚えたし、絶対に魔術王になるという決意は揺るぎないものだと思っていた。


でも、今ではなんだか全てが遠い過去のように思える。


今まで自分の中で大切にしていたものが、全て色褪せて思えた。


今まで積み上げてきたものが、音を立てて崩れていくようなそんな感覚に見舞われていた。


『俺はお前に死なれちゃ困るんだよ、姫路』


頭の中でもう何度繰り返したかわからない月城くんの声がリピートされる。


以前はその声を聞くたびにドキドキして胸を高鳴らせていたが、今はただ心をグサグサと痛めるだけだ。


「最初っからそんなこと言ってほしくなかった」


俺はお前に死なれちゃ困るんだよ、姫路。


「あなたがそんなことを言わなければ私は…」


俺はお前に死なれちゃ困るんだよ、姫路。


「あなたがもっと私に冷たければ私は…」


俺はお前に死なれちゃ困るんだよ、姫路。


「あなたがもっとひどい人だったら私は…」


俺はお前に死なれちゃ困るんだよ、姫路。


「あなたが私を助けなければ私は…」


頬を涙が伝う。


「こんなに辛い気持ちにならないで済んだのに…うぅ…」


とめどなく涙が頬を伝う。


往来の人々が何事かと私に視線を送ってくる。


私は恥ずかしくて顔を伏せるが、それでも涙はどんどん溢れてくる。


「ねぇねぇお姉さん、なんで泣いてんの?」


「わー、めっちゃ美人じゃん!!なんで泣いてんの?男に泣かされた?」


「俺らが慰めてあげよっか?」


耳障りな声が響いた。


いつの間にか私は三人の柄の悪そうな男に囲まれていた。


三人は泣いている私を見て下心丸出しの笑みを口元に浮かべている。


「なんで泣いてんの?可哀想。俺たちに話してみてよ」


「俺ら、女の相談事を聞くのが上手いからさ。男なんでしょ?男に泣かされちゃったんでしょ?」


「俺たちが慰めてあげるよ?君みたいな可愛い子を泣かせる男ってマジでゴミだよね。本当にそう思うよ。俺たちなら君みたいな子を泣かせるなんて絶対にないのにな」


なんだろう。


無性に怒りが湧いてきた。


どうしてこんな奴らに月城くんのことを悪く言われなくちゃいけないのだろうか。


私は湧き上がりそうになる殺意をなんとか抑えて、いった。


「今すぐそこを退きなさい」


「えー、強がらなくていいよ」


「悲しい時は誰かが側にいてあげないと」


「俺たちが話聞いてあげるからさ。誰かに話すと楽になるかもよ」


「退きなさいって言っているの」


「まぁまぁ」


「そう怒らないで」


「飲み物奢るからさ。ちょっとこっちにきてよ」


男たちが私の腕や肩を掴んで強引に連れて行こうとする。


私は自分の堪忍袋の尾が切れる音を聞いた気がした。


「ぐああああああああ!?」


男の悲鳴が響き渡る。


私は魔術によって強化した己の力を持って、私の腕を掴んでいた男の腕を逆に掴み返し、強引に捻っていた。


男は悲鳴と共に地面に膝をつく。


「な、何するんだこのアマ!?」


「こいつ!!舐めんじゃねぇよ!!」


他の二人の男が気色ばむ。


私は捻っていた男の腕を離すと、体の回転を乗せた回し蹴りを、一人の腹へと容赦無く放った。


「ごふっ!?」


男が腹を抑えて地面に膝をつく。


「てめぇえええ」


殴りかかってきた最後の一人の拳をキャッチして捻りあげる。


「ぐあああ!!」


身動きの封じられた男の股間に、私は容赦なく蹴りをお見舞いした。


「ぎゃっ!?」


情けない悲鳴をあげて、男が股間を押さえて地面に這いつくばる。


私は腕や腹や股間を押さえて動けなくなっている男たちを放っておいてその場を後にした。


「おぉ」


「すげぇなあの姉ちゃん」


「今の柔道?空手かな?」


「すげー強いな」


一部始終を見ていた周りからはまばらな拍手が起こっていた。






「はぁ…」


程度の低い男たちに付き纏われ、気分を害したまま、私は屋敷へと帰ってきた。


「お嬢様!?今までどこに行ってたんですか!?」


靴を脱いだ私がヨロヨロと自室へ向かっていると、すぐに柊が私の元へ駆け寄ってきた。


「心配したんですよ!?またどこかで魔術師と戦ってるんじゃないかって」


「ごめんなさい、柊。ちょっとその辺をぶらついていただけよ」


「あのお嬢様が夜遊び!?」


「遊んでなんかいないわ。あなたの心配するようなことは何も起こってないから安心して」


「そ、そうですか…」


ほっと胸を撫で下ろす柊。


心配させて申し訳ないと思いつつも、今の私には柊を気遣う余裕すらなかった。


すぐにでも部屋に行き、ベッドで眠りたい気分だった。


すでに準備ができている夕食を断り、自室へ向かおうとした私に柊がいった。


「待ってくださいお嬢様。大切な話があるんです」


「何よ」


「月城様とお嬢様のことに関してです」


「…っ」


月城という名前が出て、また心の痛みがぶり返してくる。


今はその名前を聞きたい気分ではなかった。


「ごめんなさい、柊。なんの話かはわからないけれど後でにしてもらえると」


「花村様と月城真琴様はお付き合いされていないということでした」


「…え?」


私は足を止めた。


ゆっくりと柊を振り返る。


柊が真剣な目で私を見つめていた。


「今なんて?」


「今日の放課後、お嬢様に内緒で私の独断により、月城真琴様と接触しました。そして月城真琴様と花村萌様はお付き合いをされているわけではないという言質を取りました」


「…それは本当なの?」


私は自分の言葉に期待が滲んでいるのを嫌でも自覚した。


「はい、本当です。月城様は二日前のショッピングモールでのことは、ただ、買い物に付き合っただけだと…」


「…」


自分の中で喜びが膨れ上がるのを感じた。


柊の言葉を心底信じたいと思った。


でも、柊の言葉をそっくりそのまま信じるにはあまりにも疑問が数多くあるような気がした。


「だから…お嬢様が月城様を諦める必要は全然」


「待ちなさい柊、待って。少し待ってちょうだい。ぬか喜びはしたくないわ…色々はっきりさせましょう」


「はい、なんでしょうか」


「まず…あなたが今言ったことは本当なの?」


「はい、本当です」


柊は私に、つい数時間前に、月城くんと一人で接触してきたと語った。


月城くんが部活を終えるのを待ち、月城くんに接触し、花村萌との関係について問いただしたと。


その結果月城真琴本人の口から花村萌と付き合っているわけではないこと、そして今でも私のとの同盟関係の復活を望んでいることなどを聞き出したと。


「一体どうしてそんなことを…?」


「お、お嬢様のためを思って…」


「そう…」


勝手にそういうことをされるとは思っていなかったけれど、今それで柊を責める気にはなれなかった。


彼女は常に私のことを考えてくれている。


今回の行動も純粋に私のためを思ってしてくれたことなのだろう。


「今はあなたが勝手に行動したことは不問にするわ。それよりも…月城くんは本

当にそう言ったの?」


「はい。花村様と月城様の交際関係は存在しないと確かに言いました」


「し、信じられないわ…だって二人は…あんなことを…」


二日前のショッピングモールでの出来事が頭をよぎる。


あの日見た月城くんと花村さんはどちらもとても楽しそうに見えた。


月城くんが花村さんを人形使いから守った。


そして花村さんはそんな月城くんにキスをした。


二人の行動は、どう見ても交際関係にある男女のそれに見えてしまう。


いくら柊にそう言われても、私は月城くんと花村萌が付き合っていないということを簡単に信じることができなかった。


「そ、それはおそらく…花村様が一方的に月城様にしたことなのではないでしょうか?」


「え…」


「あの日の二人のショッピングモールでの買い物…誘ったのは花村様かららしいです。もしかしたら花村様はお嬢様動揺月城様のことを思っているのかもしれません。そう考えれば色々と辻褄が合う気がします」


「花村さんが…月城くんのことを…」


二人きりの買い物に誘ったのも、キスをしたのも、花村萌がしたこと。


月城くんが花村さんを好きだということにはならない。


そう考えれば、確かに柊の言う通り辻褄が合うような気がする。


花村萌が月城くんを好きになる理由には思い当たる節がある。


花村萌は月城くんに命を救われている。


魂喰いに廃人にされそうになっていた花村萌を月城真琴が助けたあの事件だ。


あの事件をきっかけにして花村萌が、月城くんのことを好きになっていたとしてもおかしくはない。


だがそれによって月城くんが花村さんのことを同じように好きかどうかはわからない。


確かに思い返してみれば、ショッピングモールでのキスも、月城くんからと言うよりは花村さんからしていたような気がしないでもない。


「お嬢様。諦めるのはまだ早いです。花村様が月城様のことを好きでも、月城様が同じように花村様を好きだとは限らないのです。お嬢様にもチャンスがあります」


「私にも…チャンスが…」


「お嬢様。ここで花村様に申し訳ないから、なんて言って引き下がっていてはダメですよ。恋は戦争なんです。月城様が花村様と付き合っていないことがわかった以上、お嬢様はガンガン攻めなければなりません!!攻めて攻めて攻めまくるのです!!」


「せ、攻める…?」


「はい!」


柊が私の両手を握って訴えかけてくる。


「正直に言います。お嬢様の初恋のお相手は、めちゃくちゃ魅力的です!きっと競争率が高いです。だからいくら以上様といえど、うかうかしてたら他の女に取られますよ。それでいいのですか!!」


「それは…」


「いいのですか!他の女と月城様がくっついても!月城様がお嬢様以外の女を好きになってもいいと言うのですか」


「い、嫌…そんなの絶対に嫌…」


私はつい反射的にそう答えてしまう。


柊が待ってましたと言わんばかりの顔になった。


「ちゃんと言えるじゃないですか、お嬢様。自分の気持ちを!だったら、やることは一つです!それすなわち、同盟関係の復活です!!再び月城様に近づく口実を得るのです!!」


「口実って…あなた、もう色々取り繕わなくなってきたわね」


「今更取り繕ってどうするんですか!!気持ちを全面に押し出していかないと!!とにかく、お嬢様。明日学校へ行ったら、速攻で月城様に同盟の復活を申し入れてください!!」


「明日!?」


「そうです明日です!!ぐずぐずしている時間はありません!!」


「で、でも流石にそれは早すぎるんじゃ…」


最初に同盟を持ちかけたのは私なのに、三日とたたないうちに解消して。


そしてその翌日に再び同盟の復活を申し入れる。


さすがにそこまで身勝手な行動をとってもいいものだろうか。


私に振り回されっぱなしの月城くんは、身勝手すぎる私に愛想を尽かしたりしな

いだろうか。


「あ、お嬢様!今月城様に嫌われたりしないかって、そんなこと考えましたね!」


「…っ!?」


「わかりますよ。いったい何年一緒にいると思っているんですか。お嬢様の考えていることなんて手に取るようにわかります」


「で、でも…仕方ないじゃない…だって昨日の今日で同盟関係の解消とか復活とか…あまりに自分ん勝手で…」


「女の子はそれぐらいでいいんです!!」


「…っ!?」


「男の子は女の子に振り回されたいと思う生き物です!!月城様だって例外じゃないはず!!そもそもお嬢様は贔屓目に見ても客観的に見ても、ものすごく魅力的です!!そんなお嬢様が多少身勝手な要求をしたところで嫌われるとは思えません!!」


「わ、私が魅力的…?」


「え、流石にその容姿で自分の可愛さに気づいていないのは無理がありますよお嬢様」


「か、かわいい…?私が…?」


「はぁ…あのですね、お嬢様」


柊が呆れたようにため息をついた。


「お嬢様、今まで数々の異性から告白を受けてますよね?」


「こ、告白?」


「屋上に呼び出されて好きだ!ってやつです」


「ああ、あれ」


確かに、今までにたくさんの男からそんなことをされた気がする。


「それらの男性はどうしてお嬢様にそんなことをしたと思います?」


「さ、さあ…?嫌がらせか何かじゃないのかしら」


「違いますよこの魔術バカ!!」


「魔術バカ!?」


柊の暴言に私は驚いてしまう。


「ちょっとあなた、この気に乗じて私に言いたい放題言っているでしょう!?」


「そりゃあ言いたくもなりますよ!!いいですかお嬢様!今までお嬢様に告白をしてきた男性は…お嬢様が可愛いから、美しいから、魅力的だからそうしたのですよ!」


「わ、私が…魅力的…」


「魔術ばかりにかまけてきたお嬢様はそっち方面に全然興味がなかったから自覚がないのかもしれませんが…お嬢様の容姿は誰が見たって整っているんです。めちゃくちゃ可愛いんです。いろんな男性が告白をしたくなるぐらいに魅力的なんです」


「ちょ、あんまりそう言うことを大声で言うのは…」


「そしてもちろん、月城様もお嬢様のことを魅力的だと感じているはずです」


「そ、そんなことは流石にないんじゃないかしら…」


「いいえ、私は確信しています。こうなる前のことを思い出してくださいお嬢様」


「こうなる前のこと?」


「月城様は毎日のようにお嬢様に言い寄っていたでしょう?魔術にしか興味のないお嬢様はそんな月城様を無碍にあしらっていたようですが」


「そ、そういえば確かに…」


最近はすっかりそう言うことは無くなったので忘れていたが、月城くんは元々私の顔を見るたびに、付き纏っていていた過去があった。


その時の私は月城くんのことを鬱陶しいとしか思っていなかったけれど…今考えたら私になんの魅力も感じていないのならば月城くんはそもそもそんなことをしてこなかったのではないだろうか。


「ようやくお気づきになられましたか、お嬢様」


「…た、確かに…月城くんは私に以前はよく話しかけてきていたわ。でも最近は…」


「お嬢様が嫌がっているのに気がついたからやめたのでしょう。興味がなくなったんじゃなくてお嬢様を気遣うようになったと考えるべきです」


「私を気遣って…」


「ええ。月城様はお嬢様に嫌われたくないと、そう思っていると思います。だから

何の心配も入りません」


「ほ、本当かしら。月城くんが私のことをそんなふうに…」


「だからお嬢様。明日、必ず月城様に同盟の復活を申し込むのです。月城様からはすでに、今でも同盟の復活を望んでいるとの言葉をお聞きしています。きっとお嬢様が同盟の復活を申し入れれば、快く受け入れられるはずです」


「そ、そうかしら」


「ええ、そうです。私が保証します」


柊が自信を持って頷いた。


私は、なんだか気弱になっている自分が情けなくなってきた。


柊が私のためにここまでしてくれたのだ。


ここで引き下がっていては流石に主人としての面目が立たない。


「わ、わかったわ」


私は決意を込めて柊にいった。


「あなたの言うように…明日、月城くんに同盟関係を再度持ちかけてみる。ちゃんと謝って…もう一度挑戦してみる。私…もう少しだけ諦めずに頑張ってみる

わ」


「はい。応援していますよお嬢様」


私の言葉を聞いた柊が、にっこりと笑った。



〜あとがき〜


近況ノートにて3話先行で公開中です。

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