第二章

第17話 龍鎮祭

「龍鎮祭ぃ?」

「そうですわ。昨日のお姉様の偉業を国を挙げて讃える祭りを行うことが決定されましたの。そしてどうせならお姉様が現在所属しているキャメロットでやろうじゃないか……ということらしく。学園祭に乗っかる形でやるそうですわ。」


 とりあえず教室に行ってみると、話合いがあるとのことでエレインに無理矢理登壇させられたのだが、その理由というのがこれだ。

 三日ぶりに登校したと言うのに、Cクラスの面々の表情は初日より更に暗くなっていた。まだcクラスに落ちた現実を受け止めきれてないのかと思っていたが、この学園祭が原因らしい。


「学園祭にはクラス別の対抗戦がありますの。どの学年のCクラスも体育祭が始まって以降一勝たりともしたことないそうですわ。」

 

 曰く今回の学園祭は今までとは大きく趣向を変えるそうな。

 今までは学園の行事は基本的に閉鎖的で、一般開放もされていなかったそう。

 だが、今回は龍鎮祭ということで規模を拡大させ、大々的な祭りになるという。

 普通なら喜ばしいことだが、Cクラスからしてみれば公開処刑の観客が増えただけだろう。


「まあ気持ちはわかりますわ。」

「でも別にCクラスに入った時点でボコられるのは確定してるようなもんなんだから、今更観客が増えたくらいで変わるか?」


 どっちにしろ一般人にとってはこの学園に入学した時点で雲の上の存在なんだから、その中で負けてても何もないっしょ。


「一般の観客というより、両親だと思いますわ。キャメロットでは本来外部と連絡できませんから、自分がCクラスだと把握されませんの。」

「あー、それがバレちゃうのか。」


 ついでに政で常に争っているような他の貴族たちにも。


「しかも今年はお姉様勝ち確定の出来レースですので……1%の勝ち筋もなければ盛り上がらないでしょう。」


 せっかくの学園イベントなのに、そんなんじゃつまんねーよな。


「よーし、やっちゃうぞー!」

「何を?」


 エレインとの話をやめ、教壇の上に立って周りを見渡す。

 どいつもこいつも俯いてんなぁ、やる気出せよやる気。こちとら三日前に死にかけてるのにお前らの百倍は元気やぞ。

 息を大きく吸い、腹から出せるだけの大きな声でこう叫ぶ。

 

「晩年最下位のお前らぁ!それでいいのか!悔しくないのか?観客にいいとこ見せてやりたくねぇのか!!」


 しーん……。


「俺はここに宣言してやる!今年はこの1ーCがAクラスの王女様もろとも全部倒して……優勝する!俺がさせてやる!


 しーん……。

 …………パチパチパチッ。


 フレアの拍手音しかしねぇな。

 ……またこのパターンかよ。



  ◇



「ということで対抗戦の為の練習会を開くことにしたんですが……参加者は誰一人来ませんでしたぁ……。」

「いるよ普通に。」


 ということで今回の参加者一覧です。

 エレイン、トリス、フレアと取り巻き1.2……見覚えしかないメンツですね。これ以外のCクラスの奴なんて誰一人として知らないけど。


「実質0人でしょ。君達なにかやる必要ないでしょうに。」


 エレインは成長してもう並みの神器使いとは一線を画したし、フレアと取り巻き共は元々Aクラスレベルの実力を持ってるし。

 トリスは……うん。


「じゃあトリスは……俺と特別メニューやるとして。他は適当にやっておいて。サボっててもいいよ。」

「露骨にやる気無くしたっすね。」

「そりゃ無くすでしょ。」


 知り合い以外誰も来ないんだぜ。


「エレイン……人望無いからって落ち込むなよ!いいことあるって。」

「エレイン王女ならもう帰りましたよ。」


 そうか、そんなに落ち込まなくても……。


「まあ王女なのに信頼ないのは悲しいよな。」

「トリス君も一緒について行っていませんよ。」


 ツッコミいないのかぁ。


「僕がするよ、ランス。」

「フレア…‥お前しか頼りにならないぜ。」

「いやいやいや、多分フレアさんはボケ側だと思います……はっ!」


 いま女の声がしたぞ!


「探せ!他のそこまで追い回せヤロウども!」

「ひっ、ひぃいいいい!」


 居たぞ!運動場の入り口の方!ドアから盗み聞きしてたな!

 …………。

 

「普通に捕まったな。」

「ゆ、許してくださいぃ。」


 別に怒ってないよ。ただちょっと参加者候補は拘束してでも確保するってだけ。


「えーと、Bクラスの委員長のトーハさんだね。」

「知ってるのかフレア。」


 きもいぞ。

 同じ委員の俺が知らないのに。


「ていうかBクラスかい。なんの用?偵察なんだったら記憶消しとくか。」

「そこまでのこと話してないっすよね。」


 こちらの和気あいあい?と話してるのに少し安心したのか、ビビり散らかしていたトーハは、震えている唇のまま口を開く。


「わ、私は同盟を結びにきっきき来ましたっ。」

「同盟?」


 こちらが話を聞く姿勢を見せたからか、今度はもっとはっきりとこう言った。


「はい、私達Bクラスがあなた達Cクラスと同盟を結ぼうと持ちかけているんです。Aクラスを倒す為の同盟を。」

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