第12話 俺はお前を殺害するぜぇ!この異世界での父親よぉ。


  「学校で待ってる」


 眠ってる間、夢なのだろうか。

 そんな言葉が聴こえてきた。


 学校か。

 前世の俺は。前世までの俺は。

 学校って行ってたんだっけ。

 行ってなかった気がするな。

 不登校のヒッキーだったような気もする。


  しかし、いくら赤ちゃんの身とはいえ。

 よく眠った。満足に眠った。


 メイド達が、始めに会ったメイド少女以外が部屋からいなくなってる。

 このメイド少女はまだ眠っている。


  「ここにいたか諭記雄」

 「いや、福沢諭記雄」

 

 父親が、部屋に入ってくる。


 「もう分かっただろう」

 「正式に告げよう」

 「お前は福沢諭記雄だ」


  そうか。

 俺は正式に福沢諭記雄になったようだ。

 俺のこの異世界での母親はどうなった。

 考えたくない。


 「メイドよ」

 「福沢家当主が」

 「福沢家次期当主が」

 「起きているのだ」

 「起きなさい」


 父親が、杖を眠っている少女メイドの背中に振り下ろす。

 俺には、どうする事もできなかった。

 振り下ろされた杖は、メイド少女の背中に止まる事なく落下した。


  俺は、怒りを感じた。

 殺意を感じた。

 そうだ。

 この父親は、殺さなければいけないんだ。


 英雄なんてのはろくな奴等がいない。

 だから、ろくでもない英雄なんてのは殺さなければいけない。

 俺は、この父親を殺す事に決めた。

 決まっていたんだ。


 認めたくなくても。

 認めなければならない。

 この目で見たわけではないが。

 俺のこの異世界での母親は、俺の父親に殺された。


 そんな感じがする。

 

 父親が、俺の前に現れたのだから。

 そういう事だろう。


 この異世界で、会ったばかりの母親。

 殺されたら。

 やはり、湧きあがるもんだよなぁ。

 殺意がよぉ。


 俺を育てて守るためだけに生きては死んでを繰り返してきた弱者を

傷つけられると、怒りが殺意が確かなものにもなるもんだよなぁ。


 赤ちゃんだから、口にする事はできないが。

 俺はお前を殺害するぜぇ!

 この異世界での父親よぉ。


 赤ちゃんだから口にはできないが、そう思った。

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