第10話


  「私のー仕事はー」

 「諭記雄を育てー守ることー」

 「育てて育てて彼は死ぬー」

 

 縁起の悪い歌だ。


 「諭記雄が死んだら私も死んでー」

 「また育ててーまた死んでー」


 嫌な歌だ。

 気分が滅入る。

 もしかして、これ子守歌じゃないだろうな。

 貴方は死にますよなんて歌を赤ちゃんに聴かすな。


 それに、俺はもう死なない。


 「諭記雄がー死ねばー」

 「人類が悲しみました」

 「後に私も死んだのー」

 「誰も気にもとめなかったのーの」

 「のっのっのー♪」


 少女が歌いながら、自室であろう部屋に入る。

 ベッドに置かれる。

 

 死なないさ。

 お前もな。

 まぁ、なんとなく分かる。

 嘘でも妄想でもなく、彼女は本当に。

 俺を育て守るために生きてるのだろう。


 大義であった。

 赤ちゃんなので、口にはできないが、そう思った。


 彼女は、俺の方に跪き、涙を流した。

 彼女は泣いている。


 俺は、彼女を死なせたくないと思った。

 自害する事なく、彼女の人生の終わりを迎えさせてみたかった。

 俺は、彼女を自由にしてやりたいと思った。

 彼女の使命から。目的から。

 


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