第3話 異世界転生してまで夫婦別姓問題ですか


  「ここで質問しようか」

 

 え。何を。

 この父親らしき人物。

 俺に向かって言ってるよね。

 生まれてきたばかりの我が子に質問する事ってあるかな。

 ないよね。絶対ない。あってたまるかちくしょう。


 「お前は私の子供か」


 俺は、今は泣く事しかできない。

 だって俺産まれたばかりの赤ちゃんですよ。

 喋れるわけがない。

 誰か助けて下さい。

 とにかく今俺は全力で泣いてます。


 「ふむ。そうか」

 

 ふむもそうかも俺は喋れませんが。

 自分の子供だとわかってくれたんだろうか。

 

 「お前は福沢諭記雄か」


 答えはウィだ。

 言葉に出来ないが。


 「そうか」

 

 何がそうかなんだろうか。

 この人、誰と会話してるんだろう。

 

 「お前は、ガイウス・ユリウス・カエサルを殺したいか」


 殺したい。


 「よし」


 何かがよいようだ。

 

 「お前は、私達の子供だ」

 「福沢諭記雄」

 「異世界転生おめでとう」

 

 なんとか、この異世界での両親に子供として認められたようだ。

 そして、俺はこの異世界でも福沢諭記雄だ。

 ようだじゃない。

 俺は福沢諭記雄なんだ。


 「祝福しましょう」

 「我が子橘川諭記雄よ」


 ん?

 祝福してもらうのはありがたいが。

 俺は福沢諭記雄だ。


 「満里子」

 「何を言ってるんだ」

 「その子は福沢諭記雄だ」


 夫婦別姓問題というやつか。

 異世界転生してまで、この問題に巻き込まれる事になるとは。


 「あらあらあら」

 「これ以上は言葉を重ねても無駄ね」


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