夏暁。

水瀬 凪

夏暁。

午前4時。

太陽がうっすらと顔を覗かせ始める。チュンチュンと、どこかで雀が鳴いている。動物と私しかいないような、世界がまだ始まっていないような、そんな夜更けの朝が大好きだ。雲ひとつなく、真っ青なキャンバスにオレンジが射し込む。どんどんと色づいていく。数分前は真っ暗な闇であったはずなのに、太陽が存在するだけで世界はこんなにも色づいている。


階段を下りる。扉を開ける。

深く息を吸う。アスファルトの香りが鼻をくすぐる。夜中に雨でも降ったのだろうか。少し地面が湿っている。葉が水を弾いている。キラキラと自分はここにいる、と存在をアピールしているようだ。


窓から見る景色と実際に見る景色。動物たちの声が鮮明に聞こえてくる。眼前のキャンバスをはみ出して色は続いている。お爺さんと犬が仲良く散歩している。野良猫はゆったりとした足どりで遠ざかる。世界がゆっくりと進んでいく。昼間の喧騒が嘘であるかのように、静かに和やかに進んでいく。ずっとこのままであったらいいのに、時間が進まなくていいのに、なんて叶いもしないことを願ってしまう。無情にも時は進む。


お寺の鐘が鳴る。また鳴る。何度も時間を空けて朝の目覚めを告げる。


スマホを見る。もう時間だ。


午前5時。

太陽が元気を取り戻した。茹だるような暑さも、汗ばむ陽気も一緒にやってくる。今日も一日が始まった。

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夏暁。 水瀬 凪 @nagi_mizuse

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