第8話 真相への糸口
奈々の手帳から得た情報を元に、美咲は再び妹の職場へと向かった。手帳には、具体的な証拠の在り処についてのヒントが書かれていた。美咲は、沙織が最後に訪れたオフィスビルの地下倉庫に重要な証拠が隠されている可能性を信じ、行動を起こした。
オフィスビルに到着した美咲は、警備員に見つからないように慎重に地下へと降りていった。地下倉庫は暗く、ひんやりとした空気が漂っていた。美咲は懐中電灯を片手に、手帳に記された具体的な場所を探し始めた。
「沙織、ここに証拠があるのね…」心の中で妹に語りかけながら、美咲は手がかりを探していた。ふと、一つの古びたキャビネットが目に留まった。手帳にはこのキャビネットが記されていた。
美咲はキャビネットを開け、中を探っていった。ファイルや書類が無造作に詰め込まれており、その中から一冊の厚いファイルを見つけた。ファイルには「極秘」とスタンプが押されており、美咲の手は震えた。
「これが沙織が命を懸けて守ろうとした証拠…」
ファイルを開くと、中には保険金詐欺に関与する幹部たちの詳細なリストと、不正行為の証拠がびっしりと詰まっていた。美咲はその内容を読み進め、妹が何を暴こうとしていたのかを理解した。
「田中祐介、藤井翔太…やはり彼らが関わっていたのね。」
美咲はファイルをしっかりと抱え、早急にこの証拠を警察に届ける決意を固めた。しかし、そんな彼女の背後で物音がした。振り返ると、暗闇の中から一人の男が現れた。
男は藤井翔太だった。彼の冷酷な目が美咲を睨みつけていた。
「ここまで来るとは思わなかったな、山本美咲。」
美咲は震えながらも、強い意志で藤井を見据えた。「あなたが妹を脅していたのね。なぜこんなことをするの?」
藤井は冷笑を浮かべながら答えた。「沙織は邪魔だった。彼女が不正を暴こうとしたことで、俺たちの計画が崩れるところだったんだ。だから、始末するしかなかった。」
「あなたたちの罪を明らかにするために、私はこの証拠を警察に届ける。」
藤井は一歩前に進み、美咲に迫った。「それは無理だ。ここで終わりにしてやる。」
美咲は決意を込めて、後ろに一歩下がりながらファイルを握りしめた。「沙織のために、私は負けない。彼女が守ろうとした正義を、必ず明らかにする。」
その瞬間、倉庫の入口からもう一人の人物が駆け込んできた。森田だった。彼は藤井に向かって叫んだ。「止めろ、藤井!これ以上罪を重ねるな!」
藤井は驚き、森田に視線を移した。その隙に、美咲は素早く行動を起こし、倉庫の外へと逃げ出した。森田も後を追い、二人は暗い地下倉庫を駆け抜けた。
無事に地上に出た美咲は、森田に感謝の言葉を伝えた。「ありがとう、森田さん。あなたがいなかったら、どうなっていたか…」
森田は深く息をつき、「あなたの勇気があったからこそ、沙織さんの無実を証明することができる。これを警察に届けて、全てを明らかにしよう。」
美咲は強く頷き、妹が命を懸けて守ろうとした証拠を握りしめた。彼女の心には、妹の微笑みが常に寄り添っている。そして、その微笑みが美咲を前へと進ませる力となるのだった。
「沙織、あなたのために、私は戦う。真実を明らかにして、あなたの名誉を守るために。」
美咲は新たな決意を胸に、真実を追い求める旅を続けた。これからも多くの困難が待ち受けているだろうが、彼女は決して諦めない。妹のために、美咲は全力で戦うことを誓った。
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