第7話 失踪した友人

中島誠から得た情報を元に、田中祐介と藤井翔太の行動を追い始めた美咲は、次に沙織の親友である佐藤奈々に連絡を取ろうと決意した。奈々は沙織と特に親しかったため、何か重要な手掛かりを持っているかもしれない。


しかし、何度電話をかけても奈々は応答しなかった。メッセージも既読にならず、不安が募る中、美咲は奈々の家を訪ねることにした。


奈々の家に着くと、インターホンを押しても応答がなかった。周囲を見回すと、近所の住人が心配そうに美咲を見つめていた。美咲はそのうちの一人に声をかけた。


「すみません、佐藤奈々さんの友人です。彼女に連絡が取れなくて心配なんですが、何かご存じありませんか?」


住人は眉をひそめて答えた。「ああ、奈々さんですか?ここ数日、見かけていませんね。普段は毎日外に出ているのに、最近は全く姿を見せません。何かあったんでしょうか?」


美咲の不安はますます募った。何かが起こっているに違いない。彼女は奈々の家の周囲を調べることにした。すると、裏庭の窓が微かに開いているのを見つけた。


「奈々ちゃん、大丈夫?」と声をかけながら窓から中を覗くと、室内は散らかっており、急いで家を出たかのような様子だった。


美咲は思い切って窓から中に入り、奈々の部屋を調べ始めた。部屋の中は整理整頓されている部分もあれば、明らかに荒らされた痕跡もあった。美咲は慎重に手掛かりを探していった。


すると、机の上に置かれた一冊の手帳に目が留まった。手帳を開くと、そこには奈々が沙織について書いたメモが残されていた。


「沙織ちゃんが言っていた不正の件、私も調べてみた。でも、あまりにも危険すぎる。彼女が命を狙われる理由が分かる。私も同じ目に遭うかもしれない。」


美咲は手帳を読み進めながら、奈々が沙織と同じく不正を調べていたことに驚いた。さらに手帳には、奈々が沙織の死に関与する重要な証拠を持っていることが記されていた。


「沙織ちゃんが残した証拠を見つけた。でも、それを公開する前に、誰かに見つかってしまった。私の命も危険だ。誰も信じられない。」


美咲は震える手で手帳を閉じ、奈々が何者かに追われていることを確信した。奈々が失踪したのは、証拠を持っているために命を狙われたからに違いない。


美咲は手帳を大切に持ちながら、奈々の身を案じた。奈々が無事であることを祈りつつ、彼女が残した手掛かりを元に、真実を明らかにする決意を新たにした。


「奈々ちゃん、あなたも沙織と同じように勇敢だった。私が必ずあなたたちの真実を明らかにする。」


美咲は奈々の家を後にし、手帳に記された情報を元に調査を進めることを誓った。妹とその親友が命を懸けて守ろうとした真実を、美咲は決して諦めずに追求し続ける。彼女の心には、妹と奈々の強い絆が支えとなり、前へと進む力を与えてくれるのだった。


美咲は新たな決意を胸に、真実を追い求める旅を続けた。これからも多くの困難が待ち受けているだろうが、彼女は決して諦めない。妹と奈々のために、美咲は全力で戦うことを誓った。

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