第5話 隠された日記

森田から話を聞いた翌日、美咲は再び妹の部屋を訪れた。森田の告白により、妹が大規模な詐欺を暴こうとしていたことを知った美咲は、さらに詳細な手掛かりを求めていた。妹の部屋に入ると、まだ彼女の温もりが感じられるような気がして、美咲の胸は締め付けられた。


美咲は、妹の部屋の隅々まで調べることにした。引き出しを開け、クローゼットを探り、ベッドの下まで確認したが、特に目立ったものは見つからなかった。しかし、美咲は諦めずに続けた。彼女は妹が重要な情報を隠しているはずだと信じていた。


ふと、書棚の一番下にある古い箱に目が留まった。埃をかぶった箱を取り出し、中を開けると、そこには古びた日記帳が入っていた。美咲の手は震えた。日記帳は妹が大学生の頃から書き続けていたものであり、その最後のページには最近の出来事が記されているはずだった。


美咲は日記を開き、妹の筆跡が残されたページをめくっていった。妹の思いや悩み、日々の出来事が詳細に書かれていた。彼女は大学時代の楽しい思い出や、社会人になってからの苦労も綴っていた。しかし、最後の数ページに差し掛かると、日記の内容は急に暗いものに変わっていった。


「最近、会社で大きな不正を発見してしまった。幹部たちが保険金詐欺を行っている証拠を掴んだ。でも、誰にも言えない。私の命が危険に晒されるかもしれないから。」


美咲は驚きと共にページをめくり続けた。妹は不正の詳細や関係者の名前も記していた。幹部の一人として田中祐介の名前があがっていたことに、彼女はショックを受けた。


「田中さんがそんなことを…」


しかし、日記にはさらなる驚くべきことが書かれていた。


「最近、藤井翔太という人物から脅迫されるようになった。彼は私が持っている証拠を知っているようだ。どうして彼が関わっているのか分からないけれど、私の命を狙っている。」


藤井翔太、かつて父親を殺した少年犯の名前がここで再び登場したことに、美咲は驚きを隠せなかった。妹の死と藤井翔太がどう繋がっているのか、さらに深く掘り下げる必要があった。


美咲は日記を読み終えた後、妹の苦悩と勇気に胸を打たれた。彼女は自分が手に入れた証拠を守りながら、真実を暴こうとしていたのだ。美咲は妹の意志を継ぎ、真実を明らかにするための決意を新たにした。


「沙織、あなたが守ろうとした真実を私が必ず明らかにする。あなたの名誉を回復するために。」


美咲は日記を大切に抱え、さらに調査を進めることを誓った。彼女はこれからも多くの困難に直面するだろうが、妹の強い意志と絆が美咲を支える力となっていた。真実を追求する道のりは険しいが、美咲は決して諦めない。


美咲は日記を片手に、妹が最後に残したメッセージを心に刻み、次なる手掛かりを求めて動き出した。彼女の心には、妹の微笑みが常に寄り添っている。そして、その微笑みが美咲を前へと進ませる力となるのだった。

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