第4話 謎の手紙

数日後、美咲のもとに一通の手紙が届いた。封筒には差出人の名前も住所も書かれていない。不審に思いながらも、彼女は封を開けた。


手紙には、まるでタイプライターで打たれたような均一な文字が並んでいた。


「山本沙織の死について真実を知りたければ、明日の午後3時に京都駅近くの喫茶店『青い鳥』に来い。真実を話す。」


美咲は手紙を握りしめ、動悸が早まるのを感じた。妹の死についての新たな手掛かりかもしれない。しかし、同時にこれは罠かもしれないという不安もあった。


次の日の午後、美咲は指定された時間に喫茶店『青い鳥』に向かった。古びた外観の店は、どこか懐かしさを感じさせる場所だった。店内に入ると、柔らかな照明とジャズが流れる静かな空間が広がっていた。


彼女は奥のテーブルに座り、緊張した面持ちで周囲を見回した。しばらくすると、一人の中年男性が彼女の前に座った。短髪で少し痩せた顔立ちの男は、深いしわが刻まれた顔で、鋭い目つきをしていた。


「あなたが美咲さんですね。私は森田と言います。」男は冷静な声で話し始めた。


「森田さん、手紙を送ってくれたのはあなたですか?」


「そうだ。山本沙織さんの死について、話さなければならないことがある。」


森田は低い声で話し始めた。「沙織さんは、保険金詐欺に関与していたわけではない。彼女は会社の不正を暴こうとしていた。だが、その過程で命を狙われることになった。」


「妹が不正を暴こうとしていたって…一体何を?」


「彼女が発見したのは、会社の幹部たちが関与する大規模な詐欺だった。沙織さんは、その証拠を掴んでいた。だが、それが彼女の命取りになった。」


美咲は驚きとともに、妹の勇気に胸を打たれた。「じゃあ、妹はそのために殺されたってことですか?」


森田は頷いた。「彼女は幹部たちにとって邪魔な存在だった。彼らは彼女を脅し、最後には殺すことを決意した。」


「でも、どうしてあなたがそのことを知っているんですか?」


「私はかつて、その保険会社で働いていた。沙織さんと同じように不正を暴こうとしたが、命の危険を感じて辞めたんだ。だが、彼女の死を知り、何かしなければと思った。」


美咲は森田の話を聞き、妹の無実を証明するための新たな手掛かりを得た。しかし、それは同時に彼女自身も危険な目に遭う可能性を意味していた。


「ありがとう、森田さん。私は妹のために真実を明らかにする。」


森田は深く頷き、「気をつけてください。彼らは何でもする。あなたも危険にさらされる可能性があります。」と警告した。


美咲は決意を新たにし、妹の無実を証明するための戦いを続けることを心に誓った。手紙によって得られた新たな情報を元に、彼女はさらに深く調査を進めることを決意した。妹の正義感と勇気を胸に、美咲は一歩ずつ真実に迫っていく。


美咲の目の前には、まだ多くの困難が待ち受けているだろう。しかし、彼女の心には妹の存在がいつも寄り添っている。そして、その絆が美咲を強くし、前へと進ませる力となるのだった。

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