第2話 疑念と調査の始まり

妹の死から数日が過ぎたが、美咲の心の中にはまだショックと悲しみが渦巻いていた。沙織が自殺し、さらに保険金殺人に関与していたという報道は、彼女にとって到底信じがたいものであった。美咲は決意を新たに、妹の潔白を証明するために独自の調査を開始することにした。


警察署から戻った美咲は、自宅のリビングに広げた妹の遺品の中から手がかりを探し始めた。沙織のスマートフォン、日記、仕事の書類などを整理しながら、彼女の最後の日々を思い返す。美咲は、沙織の同僚や友人たちに話を聞きに行くことを決めた。彼らから妹の行動や言動についての情報を集めることで、真実に近づけると信じたのだ。


まず、美咲は沙織が働いていた保険会社を訪れた。受付で事情を話し、妹の同僚である田中祐介に会うことができた。


「田中さん、突然お時間をいただきありがとうございます。沙織の姉の美咲です。」


「いえ、美咲さん、お会いできて光栄です。沙織さんのこと、本当に残念でした。」田中は深い悲しみをたたえた目で答えた。


「妹が亡くなったこともショックでしたが、彼女が保険金殺人に関与していたという報道が信じられないんです。沙織がそんなことをするはずがありません。何かご存じのことがあれば教えていただけませんか?」


田中は一瞬躊躇し、深いため息をついた。「実は、沙織さんが最近、何かに悩んでいるようでした。何度か相談を受けたんですが、詳しいことは話してくれませんでした。」


美咲は心の中で痛みを感じたが、さらに踏み込んで質問を続けた。「彼女は誰かに脅されていたり、何かトラブルに巻き込まれていたようなことはありませんでしたか?」


田中は眉をひそめ、しばらく考え込んだ後に答えた。「正直、わかりません。ただ、沙織さんが頻繁に電話をかけていた相手がいることは気づきました。仕事の合間にも何度も話していました。その相手が誰なのかはわかりませんが、かなり切羽詰まった様子でした。」


美咲はその情報に驚きながらも感謝の意を伝え、さらに調査を進める決意を固めた。


次に、美咲は沙織の親友である佐藤奈々に連絡を取った。奈々とは何度か会ったことがあり、彼女が信頼できる人物であることを知っていた。カフェで待ち合わせをし、二人は向かい合って座った。


「奈々ちゃん、今日はありがとう。沙織のこと、少しでも多く知りたいの。」


奈々は深い悲しみをたたえた目で美咲を見つめ、頷いた。「美咲さん、私も沙織ちゃんの死が信じられない。彼女が自殺なんて、そんなことあるはずがない。」


「奈々ちゃん、沙織は最近何か悩んでいたことがあったの?誰かに脅されていたり、何かトラブルに巻き込まれていた様子はなかった?」


奈々はしばらく考え込み、やがて口を開いた。「実は、沙織ちゃんが最近、不安そうにしていたことが何度かあったわ。でも、具体的なことは何も話してくれなかった。ただ、何か大きな問題を抱えているような感じがした。」


「例えば、誰かと頻繁に連絡を取っていたとか、変わった行動をしていたとかは?」


「そうね…一度だけ、沙織ちゃんが電話で誰かと激しく口論しているのを見かけたわ。電話を切った後、すごく落ち込んでいた。」


美咲はその情報を聞き、さらに妹の行動を追う必要があると感じた。妹が電話で話していた相手が誰なのか、その人物が事件に関与している可能性がある。美咲は奈々に感謝を述べ、次なる手掛かりを求めて調査を続ける決意を固めた。


美咲は妹のスマートフォンを開き、通話履歴やメッセージを確認することにした。そこには、頻繁に連絡を取り合っていた不審な番号がいくつかあった。その番号を追跡することが、美咲にとって次なるステップとなった。


美咲は妹の潔白を証明するため、さらに深い調査に乗り出す。沙織のスマートフォンに残された通話履歴を手掛かりに、不審な番号の正体を突き止めるべく奔走する中で、新たな事実が次々と明らかになる。しかし、その過程で美咲自身も危険な目に遭うことに——。

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