妹は本当に殺人犯だったのか?真実を追う姉が直面する衝撃の真相とは——。過去と現在が交錯する心理サスペンス。

湊 町(みなと まち)

第1話 妹の死

8月の蒸し暑い午後、美咲は窓の外を眺めながら、仕事の合間にコーヒーをすする。暑さにうんざりしながらも、仕事に集中しようとする彼女のスマートフォンが突然震え、着信音が鳴り響いた。見慣れない番号に一瞬戸惑いながらも、好奇心と一抹の不安が交錯し、通話ボタンを押した。


「もしもし、山本美咲さんですか?」

「はい、そうですが…」

「こちら、京都市警察署です。お話ししたいことがありますので、至急署に来ていただけますか?」


その言葉に心臓が跳ね上がり、不安と恐怖が胸を締め付けた。彼女はすぐに準備を整え、警察署へ向かった。


警察署に到着すると、無機質な空間がさらに緊張感を増幅させた。待合室で待つ間、頭の中ではあらゆる不安が渦巻いていた。やがて、深刻な表情の刑事が現れ、美咲を個室へと案内した。


「山本さん、妹さんの山本沙織さんが…」

「沙織がどうしたんですか?」美咲は声を震わせて問い返した。

「残念ですが、今朝、沙織さんの遺体が発見されました。自殺と見られていますが、現在、詳しい状況を調査中です。」


美咲の頭は真っ白になった。彼女は何度も「自殺」という言葉を繰り返し、心の中で否定し続けた。沙織が自殺なんて、そんなことがあるはずがない。彼女はいつも明るく前向きだった。


「妹はそんなことをするはずがないんです。何かの間違いです。」

「現在、詳しい状況を調査中です。ですが、今朝のニュースでも報じられていますが、沙織さんが保険金殺人に関与していた可能性があります。」


その言葉に美咲は更なる衝撃を受け、足元が崩れ落ちるような感覚に襲われた。妹が保険金殺人に関与?そんな馬鹿なことがあるはずがない。混乱と絶望の中で、美咲はただ呆然と立ち尽くした。


帰宅した美咲は、無意識のうちに妹の部屋に足を運んだ。部屋にはまだ妹の香りが残り、彼女の笑顔が目に浮かぶ。涙がこぼれ落ち、美咲は声をあげて泣き崩れた。


「沙織…どうして…」


彼女は妹の遺品を手に取り、その一つ一つに触れるたびに、妹がそこにいるような気がしてならなかった。そして、心に決めた。妹の潔白を証明するため、真実を突き止めると。


美咲の決意は、まだ見ぬ真実と向き合うための第一歩だった。

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