スキル的な墨


それから小一時間、頭上に何かが落下して目が覚める。下を見ると、そこには鳥の死体があった。


羽に銃弾が打ち込まれた跡があり、夥しい量の血を流している。

気持ち悪いな……。


だが、これで一つだけ分かったことがある。この大自然に俺以外の人間がいるということだ。

銃を持ってるってことは、その人は警察なのか…。

もし警察が居たとしたら交番勤務だから巡査、巡査長、巡査部長までだろう。

そんな人達が鳥を撃ち殺すような真似をするのか。


そして、こんな大自然に警察が居るとも考え難い。

そもそも、この場所は一般的に知られているのだろうか。


ということはやはり、人型の仕業なのか。


俺は鳥の死体を遠目で眺め、色々な事を連想させていた…その時だった。


「グシャッムシャッムシャッ」


バケモンは夥しい量の赤い液体が滴る斧を大樹の根元部分に掛け、鳥の脚に齧りつく。


「ん?死ね」

外見はさっきの小さい奴が巨大化したみたいな感じで、何故か満面の笑みを浮かべていた。


どうやらこいつからは気付かれていないみたいで、ただ食べる事に必死だ。


バケモノは一瞬で鳥を食べ切り、その瞬間俺の方、上を見上げる。

「ゲッゲグ!ゲアルッガァアッ」

翻訳、まだお腹が空くな…お、美味そうな人間だ。

これ、本気でに殺しにくるぞ。黒く染まったバケモンの瞳には、殺気が感じられた。


バケモンは立ち上がり、巨大斧を手に握る。


「ギェエエエエエエッ!」

悲鳴のような声を放った途端、地を蹴り、大樹の頂上に上り詰めた。そう、俺の直ぐ隣だ。

「っ?……ッ!」

反射的に殴り飛ばす。丁度顔面に直撃。

悲鳴、悲鳴、叫び声。


バケモンは必死に木から落ちない様にするが、顔面は赤の絵の具で染まっていた。


その瞬間、俺の拳から何かを感じ取ることが出来た…タコ?吸盤が手の平に張り付くような感覚。

「何だ、こ…!?」


その途端、バケモンは斧を振りかざす。

その攻撃を間一髪で交わし、バケモンに拳を向ける…その時だった。



         パンッ



発砲音が辺りに鳴り響く。

漆黒に染まった『それ』は、俺の手の平から一直線に飛び散った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る