ネット情報収集、そして大自然へ


俺は左手に先ほどの商品を入れたビニール袋をブラブラと揺らしながら、小一時間程、適当にコンビニの近くをうろうろしている。


そして現在、スマホを弄っていると、日本全国、そして世界中の状況は更に悪化し、中々大変なことになっていること。そして、皇居周辺がバケモノ達に狙われているのか、千代田区近辺が最重要危険区域に指定されていることに気付いた。


画像付きの資料を見ると、指定された理由が直ぐに分かる。


「ん?」

拡大すると、画像の端。そこには、王族のような衣装を身に纏った…人型か?


純白の髭。傭兵と聞いてまず思い浮かべるような厳つい顔立ちだ。

そしてもう一つ、この人型だけ、何故か孤立している。


こいつの周りに、一匹たりともバケモノが見当たらないのだ。少なくとも、ただの陰キャとかではなさそう。


もしかしたらこいつ、本当は人間なのかもしれない、なんて考えていたのだが……インターネットを見ると、その原因が直ぐに分かった。


拳を軽く振るえば、ボロアパートを一瞬で破壊。


抜刀すれば、一秒後、人々は夥しい量の血を流す。

       

左手の中からは獄炎が。


そう、その理由はこいつ単体の強さにあった。想定levelは45程度と、当然この国の自衛隊が敵う相手ではない。だから、千代田区近辺はこいつ一体だけで十分なのだろう。


LIVE映像が流れるが、戦車が人型一匹の攻撃によって一瞬でぶっ飛んでいく。

俺は頬杖をつき、苦笑していた。そして、もう片方の拳で台パンだ。


ライブカメラが破壊されたのか、映像は爆発音と共に途絶える。


俺はこの瞬間、助けが来るまで待機するのは愚策だなと確信した。

で、隠れる場所を探さないと。


できれば大自然の中が良いのだが、ここは新宿なんだよな……。


考えながら歩いて、歩いて、高層ビルの角を曲がると、少しばかり肌寒い風が、俺の髪を優しく撫でる。そして、響く鳥のさえずり。


泥の混じった土を踏みつけ、前へと進む脚に、小動物達が散っていく。


(どこなんだ、ここ…)

静かに心地よく流れる清流。大樹が陽光を遮り、隙間からは空が見えた。


俺は、全長20メートルほどの木によじ登り、太い枝から巨樹の森を見下ろす。


少し先には、湖。静かに揺らめく水面の音色が心地良い。

パタパタと飛び立つ小鳥に、俺は微笑んだ。

こう変わってしまう前の、地球本来の平和な姿に現実を忘れ。


「綺麗だなぁ。写真でも撮っとくか」

一番見晴らしの良い枝に立ち、出来る限り光が反射しないようにして見たままの光景を写真に収めた。


「よし。これでいつでも見れるな」

そう呟き、写真を色んな角度から見ていると、地面に何かが居ることに気付いた。

よく見ると、一匹だけ小さいバケモノが出現している。

これは、小動物でも、何の生き物でもない。小さいとはいえ、正真正銘のバケモンだった。

俺は画面から目を反らして下を見る。

一匹、二匹、三匹…時間が経つに比例して数は増加していった。


(これ下降りたら不味いやつだ)


これから何をするか結構考えたが、結局良いアイデアは出なかった。

取り敢えず寝るか。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る