第2話


「ぐあぁアァッ」


俺の目の前で何が起きているのだろうか。

全く状況を処理できない……いや、なんとなくだが、人生の危機が訪れていることだけは分かった。


俺は取り敢えず、一番危険だと思われる場所から距離を置く。


誰も見たことがない光景。周りの建物は、世界の終わりのような雰囲気を漂わせていた。

ここ、東京都新宿区は過去最高とも言える混乱に満ちていた。大量の人間が押し寄せる。


後ろを振り返ると、子供の首元から赤黒い液体が辺りに飛び散っていく。

そう、血が噴き出したのだ。

おいおい、嘘だろ。


逃げるか?普通なら、恐怖のあまり逃げ出してしまうだろう。だが、ここは躊躇わず、冷静になるべき。どうせ結果は、バケモノ達に美味しく食べられてしまうだけだ。


今見える景色は、人間を襲う敵の姿。

正直言って、ガチでヤバい。油断をすると死ぬ。


取り敢えず、一番危険地帯だと思われる場所からは少しだけ距離を置いた。

戦えそうな物といえば、昨日百均で買ったビニール傘くらいで、全くあいつらには勝てる気がしない。


さて、どこに隠れようか。

ミサイルなどが発射された時は地下施設か頑丈な建物。地震が発生した時は机の下。そして……。

「――ッ!?」

俺は、生臭い血の匂いで、一瞬で脳内の世界から現実世界へと目が覚めた。

周囲を見渡すと、そこには居た。


「……いち、に、さん」


何の抵抗も許さないまま獲物を殴り、刃物で突き刺し、そして血の海の上を、首をグラつかせながら進んでいく、三体の鳥型が。

二足歩行だ。

半径二メートル以内まで近寄ってきた。


(……不味いな)


目が合ってしまった。そっと視線をそらす……そして、後退しようとした時、背後に、拳を構えたバケモノが現れる。


拳を力強く振り下ろされ、死んだかと思った瞬間、攻撃が止まった。

服がはち切れる程のバキバキとした筋肉を持った男が、一匹の顔面を殴り掛かったのだ。

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