第2話
俺の目の前で何が起きているのだろうか。
全く状況を処理できない……いや、なんとなくだが、人生の危機が訪れていることだけは分かった。
俺は取り敢えず、一番危険だと思われる場所から距離を置く。
誰も見たことがない光景。周りの建物は、世界の終わりのような雰囲気を漂わせていた。
ここ、東京都新宿区は過去最高とも言える混乱に満ちていた。大量の人間が押し寄せる。
後ろを振り返ると、子供の首元から赤黒い液体が辺りに飛び散っていく。
そう、血が噴き出したのだ。
逃げるか?普通なら、恐怖のあまり逃げ出してしまうだろう。だが、ここは躊躇わず、冷静になるべき。どうせ結果は、バケモノ達に美味しく食べられてしまうだけだ。
今見える景色は、人間を襲う敵の姿。
俺は走った。とにかく、一番の危険地帯だと思われる場所から距離を置く。
横断歩道を飛び降りようとした途端、そこには居た。
「……いち、に、さん」
何の抵抗も許さないまま獲物を殴り、刃物で突き刺し、そして血の海の上を、首をグラつかせながら進んでいく、三体のバケモノが。
二足歩行だ。
半径二メートル以内まで近寄ってきた。
(……不味いな)
目が合ってしまった。そっと視線をそらす……そして、後退しようとした時、背後に、バケモノが現れる。
何かを力強く振り下ろされ、死んだかと思った瞬間、攻撃が止まった。
服がはち切れる程の筋肉を持った男が、一匹の顔面を殴り掛かったのだ。
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