第18話:死返玉(まかるがえしのたま)

「遊月の許嫁、世戸よこちん、世戸御雷よこみかづち のせいで、遊星は

あの世に行ってしまった。


遊月から


「もう、あんたとは絶縁・・・婚約破棄、とっとと神の国に帰って!!」

「この世から消しちゃうよ」


って三行半を食らった「世戸御雷よこみかづち」は這う這うの体ほうほうのていで神の国に帰ってしまった。


遊月は、あの世の入り口黄泉の国まで遊星を連れ戻しに行くため、異次元を超える

ことができるって言う異界神獣鏡を借りるため神羅の屋敷に阿加流姫を訪ねた。


「え?遊星くん、死んじゃったって?、彼もしかして自殺した?」


「私って彼女がいるのにそんなことするはずないでしょ」


で、遊星が死んだ、原因そのくだりを遊月は阿加流姫に話して聞かせた。


「ああ、遊月の許嫁がやっちゃったんだ」


「だからね、遊星を救い出しに黄泉の国まで行きたいの」


「なるほどね・・・で、異界神獣鏡が必要なわけね」


「アカル・・・貸してあげたらいいんじゃないか、知らない人じゃないんだから」


横でふたりの話を聞いていた神羅が言った。


「うん、分かった、ありがとう神羅」

「でもさ、異界神獣鏡使って黄泉まで言っても、生き返らせないと魂だけ現世に

持って帰って来てもダメだよ」

「黄泉でもって遊星を生き返らせないと・・・」


「そうだった・・・魂だけ持って帰って来ても意味ないんだよね、どうしたらいい?アカルちゃん」


「あのね、神の国にね、死返玉まかるがえしのたまって言って死者を

甦らせる力を持つ神器の勾玉があるんだ」


「それってあんたのお師匠さんの家に代々伝わる神宝だって聞いてるけど・・・」

「あんた、聞いてない?」


「知らない・・・」


「だったら一度神の国に帰って天宇受売命あめのうずめ」様に聞いて

みればいいよ」


「その死返玉まかるがえしのたまがないと遊星くんは生き返らないと

思うからね」

「早くしないと遊星くんの魂は三途の河を越えちゃうよ」


「ありがとうアカルちゃん」


遊月はアカルから異界神獣鏡を借りると急いで神の国に帰って行った。


「遊月ちゃんも命をかけられる彼氏に巡り会えたみたいね」


「どうせならアカルも付いて行ってあげたら?」

「武器も持たない遊月ちゃんだけじゃ心もとないでしょ」

「久しぶりに、三日月丸の出番じゃないの?」


「神羅、ナイスアイデア」


三日月丸とは神羅とともに傀魔かいまと戦った阿加流姫の神器のひとつ

アカルだけが持つ薙刀なぎなたで名を「降妖宝三日月丸・巴こうようほうみかずきまる・ともえ」と言う。


「そうだね・・・遊星くんを助けても、黄泉の国にいる魑魅魍魎や鬼が追って

くるだろうからね 」

「じゃ〜可愛い妹のために私も行くか」


その頃、遊月は天宇受売命あめのうずめ」の屋敷にいた。


「なんじゃ、私に報告もなしに人間界に勝手に行きおって・・・」

「あげくに人間になどうつつを抜かしておるとは・・・すべて世戸御雷よこみかづちから委細は聞いておる 」


「あの人のせいで、こんなことになったんです・・・だから婚約破棄して

やりました」


「許嫁より、そんなにその男のことが大事なのか?」


「はい、私の彼氏だし、翠宝の勾玉を渡した大事な人ですから・・・」


「で、その男を生き返らせるために死返玉まかるがえしのたまを貸せと、

そういうことか?」


「お願いします・・・私の命と引き換えにしてもかまいません」


「私の可愛い姫巫女のたっての頼みとあらば無下にもできまい」

死返玉まかるがえしのたまは貸してやる。

「お前の愛しい男を救い出してこい」


「ありがとうございます、お師匠様」


天宇受売命あめのうずめ」は奥に引っ込むとしばらくして、なにかを手に

持って現れた。


死返玉まかるがえしのたまじゃ、持っていけ」

「遊月、その男を救い出したあとは、どうするつもりだ?」


「私は、遊星とともに地上界に残ります」

「私がいないと、その人世を儚んでまた死んじゃうかもしれません」

「めっちゃヘタレなんです」


「そのような頼りない男がいいのか?」

「そう言う人だから、私がそばにいてあげないと・・・手間のかかるヘタレな

人なんです 」


「そうか・・・手間がかかる男ほど可愛いと申すからな・・・」

「そうと決まれば善は急げ、黄泉にはここから旅立てばよかろう」


「はい、行ってきます」


「ちょ〜っと待った・・・遊月、私も一緒に行くから」


「アカルちゃん・・・」


天宇受売命様あめのうずめ」お久しぶりです」


「おお アカルか、久しぶりだの・・・遊月と遊月の男を助けに行くのか?」


「はい、傀魔と戦うより楽ですから・・・」


「そうか・・・世話をかけるのう」


「お気になさらずに・・・可愛い妹のこと、放っておけません」


「遊月、アカルが一緒なら心強かろう・・・ふたりとも気をつけての」


「遊月、いい?・・・遊星くんをた助けだしに黄泉比良坂よもつひらさかまで行くよ」


「はい、お願いします、アカルちゃん」


遊月と加加流姫は、さっそく異界神獣鏡を使って黄泉比良坂に旅立っていった。


つづく。

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