第39話星喰い4

右翼、左翼の戦いが膠着状態になった時、中央、アステリオン軍本隊は沈黙を保っていた。


そんな中、星喰いが移動を開始したとの報告が総旗艦アマテラスにもたらされた。




「星喰い移動を開始しました!」


オペレーターの報告が艦橋に緊張を走らせる。




「動いたか…だろうな」


星喰い持つ要塞砲は協力な兵器だ。自分で動けるなら当然射程内に収めるために動く。


あれが意思を持つ兵器なのか?それともあの中に何者かがいて、星喰いを動かしているのかはわからない…


だったら直接行こうじゃないか。




「用意はできてるな?」


オレは…テンに確認を取る。




「はい準備できています」




「よし!」


俺は指揮官の椅子から立ち上がると、第三ハッチに向かう。




「ご武運を…」


テンに見送られながら村雲の元へ急いだ。




第三ハッチは村雲専用のドッグとなっている。


ここから単独で発進できるし、ここで整備を受ける。目的の場所に着くと、無重力となっているので整備員や作業をする者達は浮きながらせわしなく動ごいている。




オレの専用機村雲がこの場所の主のように立っていた。




「一真様」


整備主任としてニアが近づいてきた。




「ニア、ミタマの準備は?」




「出来てます。」


端末から、ホログラムが映し出され、ミタマが映し出される。




「いつでもいいわよー」




ミタマがいるのはアマテラスに特別に作り出された場所。ステージのような作りになっている。周りには全周囲モニターで戦場が映し出されていた。




「しくじるなよ。今回の作戦の要はお前なんだから」




「あんた、誰に言ってるのよ私が失敗するわけないでしょうがっ!天罰くらわすわよ」




オレはホログラムからぎゃーぎゃー文句言ってくるミタマを無視して、村雲に乗り込む。




操縦席に座ると、全周囲モニターが作動し、周囲の映像が見える。


作業員が周りからいなくなると射出シークエンスにかかる。


誘導員の指示に従い、カタパルトに向かい所定の位置につく、カタパルトクルーが、射出重量をパイロットとカタパルト・コントロール・ステーションに送り、モニターに示しオレに確認をとる。


カタパルト・オフィサーがフルパワーの手信号をパイロットに送り、オレは操縦桿を握り、村雲は発射体勢を取る。




「村雲、進路オールグリーン、発進どうぞ!」


オペーレーターの指示が出る。


「村雲、出るぞ!」


カタパルトが発射され、Gがかかり全身が操縦席に食い込む。




宇宙が広がり、星々がオレの眼前にあった。




目の前に巨大な球体が迫っているのを確認する。


村雲の背後には、総旗艦アマテラスを中心にアステリオン軍本隊が控えている。




星喰いに稲津が走り、中心へと収束されていく。




「一真様!要塞砲が来ます!」


「見えてる」


オペレーターからの報告にオレは冷静に答える。


そのオレの姿勢をモニターで見て、アマテラスの面々や全軍の兵士・騎士はさすがは一真様だと驚嘆した。


ダメそうだったら逃げるか…。


オレはそう思っていた。




星食いから巨大な光の束が放出された!星喰いを守るかのように展開していた敵艦隊すら消滅させ村雲に迫る!。


雷鳴が走り、全てを消滅させる光が我に敵なしを言わんばかりに進む!。


「八咫鏡!」


ミタマが叫ぶ。ミタマの周辺に魔法陣が幾重にも出現し凄まじい魔力が村雲の前に神器を召喚する。村雲の前に古代の装飾が施された鏡が現れ、要塞砲を全て吸収してしまった。




「返すわ」




鏡から吸収された光が放たれ星食いに襲い掛かる!


凄まじい額発が怒り星食いが止まった。


見ると中心に巨大な穴が開いていた。




「お…おぉ!」


「一真さまぁ!」


「さすが領主様だ!」


艦隊からの喝采があがる。…いやオレただつっ立ってただけなんだけど…。




「ちょっとぉ!私だから!私を誉めてよぉ!」


あっミタマが泣いてる。後で誉めてやろう。




これが星喰いの要塞砲の対策であった。


この作戦はオレ達が要塞砲の対抗手段に頭を悩ませていたあの会議から始まった。


帝国にも要塞級とそれから発射される要塞砲はあったが、魔王軍相手には使う事はあってもそれを攻略するとなると勝手が違った。魔王軍はどれだけ被害がでようとかまわず突っ込んでくる。それにより次に発射する時には要塞に魔王軍が侵入を許す結果にもなった。また味方も巻き込む乱戦となると、あのような巨大兵器は使いずらかった。




会議の中 皆が頭を悩ませていると、ミタマが一言発言した。


「私が反射すればいいんじゃないの?」




「はっ?」


オレが思わず発した一言だが、皆同じ感想だったと思う。




「あのなミタマ、要塞砲ってのはな直撃すれば艦隊に穴を開けて消滅させるとんでも兵器なんだぞ。オレの言葉理解できるか?」




ミタマの額に手をやり熱がないか確認する。 平熱だ。




俺の手を振りほどいてミタマは機嫌悪く怒る。




「あんたこそ私の言葉の意味理解してますかー?反射するっていってるでしょうがっ!」




両手を組み合わせて力比べするオレ達。コイツ、力強いな!。




「あ…あの」


政庁の一部門 魔法省の閣僚が手を上げる。


「ミタマ様の魔力は尋常ではありません。以前魔力を測定させて頂いたのですが測定不能となりました。これはどの魔力量は異常です。そのミタマ様の防御魔術ならあるいは…」




「とはいえ一個人に頼るというのはあまりにも不確定要素がありすぎないか?」


官僚からの異議が出る、当然だな。




「では、ミタマ様の魔力を補助する装置で更に魔力を増幅させるというのは?」




ニアがここで発言する。




「できるのか?」


オレの言葉にニアが眼鏡をくいっと上げ自信満々にうなづく。




「暇つぶしに作っておきました。」




こんな事もあろうかと!と言わんばかりにどや顔するニア。鼻息荒いぞ。




「そんなのいらないのに…」


ミタマが小さく文句を言う。


これには当然異議も出たが結局他に案も出なかったので、この策が実行されることになった。




結果はミタマの言う通りだった。




星喰いにダメージを与えた光景は全軍に伝わり、それを見逃さなかった右翼・左翼両軍は一転攻勢に転じた。




「全艦突撃!」




「殲滅しろ!」


ティアとアーシェがほぼ同時に命令を下す。




村雲は刀を抜き、それを天へと掲げる。


「全軍突撃!我に続け!」


中央本隊も突撃体制へと移行する。




「一真様!お供します!」


オレの第一艦隊から機動装甲騎隊が集結する。




「総大将が突撃しないでよ…まったく」


純佳が呆れながら専用機の白銀に乗り、機動装甲騎隊をまとめていた。




傷ついた星喰いを守るように 右翼左翼に展開していた敵艦隊が中央に集結しつつあった。


もはや陣形などなく恐れているようにも見えた。




「邪魔だよ」


村雲は肩、腕、脚部の装甲が展開し、マルチロックシステムにより周囲の敵を捕らえる。


刹那の内にレーザーが発射され敵撃墜していく。




オレは操縦桿を握るとスラスターが火を噴き、加速していく。


背中の刀を二本抜き、目前にいたヒルコを切り裂く。


魔力帯びた刀で斬られたヒルコは再生する暇などなく消滅していった。




村雲はツインアイを光らせながら疾走すると光を置いていく。その速さにヒルコは対応できずに進路上にいる敵は全て斬り伏せるかレーザーや重火器によってハチの巣になっていった。




魔力を帯びた刀が振り下ろされればその出力によって光の斬撃が敵艦を真一文字にしていく。


魔力の残留が稲妻になり周囲にいるヒルコを巻き込み爆散させる。




「すごっ…」


純佳と共に編成に加わっていたアリシア・ザレム少尉が一言もらした。




「あっあぁ やっぱ領主様はすげぇや」


レノ少尉も同様にうなづく。




「お前達!呆けてる暇はないぞ!」


純佳がヒルコを同時に二機撃破する。




「りょっ了解!」


レノは純佳の叱責に我に帰った。




「あの武器欲しいなぁ」


ヒルコを持っていた槍で刺し貫きながらアリシアは村雲の武器を羨ましそうに見ていた。




村雲は背に装備された二丁の高出力レーザーキャノンを展開させる。


オレの魔力を込めて射出する使用で込める魔力に寄り威力を調節できる。


前方の敵戦艦に標準を定め、トリガーを引く。収束された魔力が臨界を迎えると村雲の前方に魔法陣が幾重にも出現するとキャノン砲から光の粒子が魔法陣を貫き更に威力を増し放出された。村雲から放出された光は周囲の敵を飲み込み数千にも及ぶ戦艦を爆散させた。




後に残るのは自己修復もできずに残骸となった敵であった。




星喰いまでの邪魔な敵はあらかた蹴散らしたか…。


オレはそのまま星喰いへと向かう。


中に何者かがいるのか…いなくとも中から破壊してやる。






「ご領主様が星喰いに向かわれました!」


オペレーターからの報告にティアは焦った。




「おっお待ちください!一真様!私もお供します!」


副官があわてて止めに入るもティアはそれを振りほどく。




「提督!艦隊の指揮はどうするですか!?」




「ライオネス殿に委ねる!」


「そんなぁ…」




「第二艦隊、星喰いに突撃!」




「あの女ぁ!」


アーシェも同様な事を考えているのを即座に理解し、ティアは自身の専用機に乗り込むべく急いだ。






「急ぎなさい!邪魔する者は敵だろうか味方だろうが粉砕するのよ」


第二艦隊提督のアーシェも焦っていた。




戦局は大いにこちらに優位に傾いているが、相手は未知の存在だ。星喰い内部からの破壊は作戦通りだがそれは機動装甲騎がやるもので全軍の総指揮を執る一真がやるものではない。そのための精鋭も編成されているのにその中に一真は入ってしまっているのだ。




『もし…一真様がなにかの拍子で亡くなってしまったら…』


そう考えるとアーシェは底がない穴に落ちてしまう絶望を感じてしまった。




『私は…もう生きてはいけない』


アーシェは絶望に顔が真っ青になった。




ミタマが開けた星喰いの大きな穴から内部に入ると重力と空気があった。


星喰いの中心部に大きなエネルギー反応があったので恐らくそこがエネルギー炉だろう。ここら辺は帝国の要塞級でも同じだ。そこを破壊されれば星喰いは破壊できる。


中心部に行くには機動装甲騎では大きすぎて行けない…か。会議で予測された通りになったな。




オレは村雲から降りると続いて付いてきた者達も降りる。白銀からも純佳が降りて来た。


それぞれに武装をしている。


機動装甲騎と共に強襲揚陸艦も着艦し陸戦部隊も多数降りて来た。彼らは星喰い内部の破壊を主な任務としている。




村雲の足元から魔法陣が現れそこからミタマが姿を現した。


「げっ!なんで来るんだよ てかなんでこれるんだよ!」




オレの言葉にミタマは呆れた顔で「はあ?」と言った。




「この子の来た場所だったらこれるようにゲート繋げといたからに決まってるでしょ」


いつの間に…。


「なんかこっちの方が楽しそうだったから来ちゃった 迷ったのよねぇ。こっちに来るかあのままあのステージで私の歌を熱唱するかで」


まじかよ…なんつーくだらねー理由だよ。よし、危なくなったらコイツを盾にしよう。


オレは密かにそう思った。


どうせここまで来たらどうやっても付いてくるだろうし。




機動装甲騎の一部を残しこの場の防衛を任せた。




全員が整列し敬礼をする。オレも敬礼を返すと一言「行くぞ」と発すると「「「はっ!」」」と続き星喰い内部へと赴く。




不思議なことに内部は人が通れるように作られている、しかもこの構造は帝国の戦艦や要塞級にも似たような造りだった。あちこちにドアがあり、兵が慎重に調べ入るとまるで人が住んでいるような机にベッド 個室に風呂まで備え付けてあった。しかも掃除が行き届いている。




「やはり…これは人の手によって造られた物ですね」


どういう事か、オレ達は妨害がなく進む。侵入者用の罠も防御魔法もなにもなかった。


侵入者を想定していないのか?それと…中には誰もいない…人が住む施設は確認すれど、それが使用された形跡はなかった。




それがかえって不気味に思えた。






小型のドローンを多数先行させ。星喰い内部の捜索を行っていた兵が、エネルギー動力炉を見つけた。やはり中心部分にあった。それと指令室と思わしき場所も発見した。




ドローンによる調査によって明らかになった事実だがこの星喰いの中には生命反応がまったくなかった。


つまりこいつは自動で動いている…という事になる。




「指令室に行くのが吉よ。 私の女神としてのご神託よ。」




「なるほど」


兵達がうなずく。


いや、なるほどじゃねーよ。どうなってるんだ、うちの兵達は…。


動力炉に向かい爆破作業を行うチームと指令室に向かうチームに分かれる事になった。オレは指令室に向かう。




やはり妨害する者も装置もなくオレ達は指令室にたどり着いた。


自動ドアが開かれると、そこは玉座の間ともいえる場所であった。


装飾が施された椅子に美術品が置かれている。その玉座に座るのは一人の男性であった。


歳の頃は60台であろうか黒髪に中肉中背…どこか懐かしさを思わせる顔つきだった。








だがオレ達はその男が生きていない事は知っていた…なぜなら生命反応がないとわかっていたからだ。


「ホログラムか…」


よく見ると男はうっすらと透けていた。




「こった所にふとが来だのは初めでだよ よぐ来だね」


男はオレ達を見ると微笑みを浮かべた。


 


……なんだって?

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