第38話星喰い3
星をも喰らう星喰いに艦隊が迫る。
星喰いから、人型の生物とも機動装甲騎とも魔装騎兵とも思えない兵器が星喰いから出撃し、艦隊に襲いかかる。
艦隊からも機動装甲騎が出撃し、これに対抗する。だが、瞬く間に次々と撃墜されていく機動装甲騎部隊。
制宇権を失い、駆逐艦の砲撃で敵の人型を撃墜する形となった。
だが、星喰いの中心部分から光が収束し、それが光の柱を作り艦隊を飲み込んだ。
「以上が無人機による星喰いの戦闘データーです」
アステリオン軍総旗艦、アマテラスの会議室の中で、ホログラム映像が映し出され、無人による艦隊の星喰いの戦闘が詳細に解析された。
幕僚の説明に会議室に集まった一同は重い空気になった。
第二艦隊提督アーシェラ。第三艦隊提督ティア。第四艦隊提督オットー・ミゲル提督。
第五艦隊提督アルムガルト・フォン・リートベルク提督
機動装甲騎隊長の紫藤純佳中佐。そして連合よりライオネス陛下やフィオーネ伯爵が参加している。
ちなみにオットーもアルムガルトも帝国騎士の称号を持ち他家に仕えていたが、魔王軍との戦いで功績を上げすぎて周りに疎まれ暗殺されかかった所をうちの暗部がスカウトしてきた。
そしてなぜかミタマもシルフィを伴って、紅茶をすすってオレの隣に鎮座していた。
「まさか要塞砲のようなレーザー兵器まで搭載してるとは…」
第二艦隊提督のアーシェが星喰いの砲撃を見て、驚愕した。
帝国にも星喰いのような要塞級と呼ばれる移動基地があり、まともに食らえば一万もの艦隊が消滅する要塞砲がある。
「推定であの星喰いのレーザー兵器は約9億1500万メガワットの出力となります」
まともにやりあえば艦隊がこの宇宙から消えるな…皆がそう思った。
「それにあの人型…生物とも機械ともわからないあの兵器は厄介だな。機動力もさながら死すらいとわない攻撃のように見える。」
ティアがあの兵器について感想を言う。
死兵、死ぬことすらかまわない兵は恐ろしい。
「あの人型…通称ヒルコと呼称します」
テンがあの人型、ヒルコの解析説明をした。
無人の艦隊の攻撃により無力化し鹵獲できたヒルコの解析したのだ。
ヒルコは機動装甲騎や魔装騎兵のパーツが使われていた。それを生体部品ともいえる人工筋肉に装備させていた。
この人工筋肉の技術は帝国も使っている。
もっとも機動装甲騎には使われてはいない。地上制圧部隊の装甲兵やパワードスーツなどに使われているものだが…。
それと、ヒルコのコックピットを開けて見ると、帝国の兵や魔族の兵の死体が入っていた。
それら全てがミイラ化していて無人機との戦闘での死亡ではなかった。
ヒルコの解析はラボにて現在も続けられている。さらなる発見があるかもしれない。
「あのヒルコは私達機動装甲騎部隊が抑えるわ」
純佳が発言する。
「儂も久々に暴れるか」
ライオス陛下が楽しそうに拳を握り自身の左手で受け止め、笑みを浮かべる。
陛下も機動装甲騎乗りとして勇名をはせた人だからなぁ。
気合の入った顔が怖いんだよね。ライオン顔に睨まれる感じで。
「ダメです」
陛下の側近にして娘さんのロスヴァイセさんがきっぱりと言うと陛下の耳が垂れ下がりしゅんとしてしまう。
猫が怒られたようでなんかかわいいぞ。
しっかり者のロスヴァイセさんはライオネル陛下の一人娘。騎士の称号を持ち。姫騎士としても有名だ。
亜人ではあるが、父親とは違い獅子の特徴は頭についている耳と燃えるような赤毛。長い髪を後ろで束ねポニーテールにしている。、少し切り目が性格を現している美人さんだ。
「しっしかしだなぁ ロスヴァイセ。たまには前線に出ないと腕が鈍ってしまうではないか」
「王が前線に出るなどありえません。私達にお任せください。」
「っ!」
なんだ?俺たちが見てるからか恥ずかしくなってロスヴァイセさんが真っ赤になってうつむいたぞ。まぁ親子喧嘩してるの見られたら恥ずかしいか。
「ふっはっはっはっ 一真殿に見つめられて耳まで真っ赤になっておるわ。我が娘にも乙女な所があるのだな。」
無言で剣を引き抜こうとするロスヴァイセさん。こわっ
「まっまて!冗談だ!」
獅子王とも呼ばれる陛下がまじで焦ってるよ。
「まったく…母親そっくりだわい。一真殿こんなじゃじゃ馬をもらってくれんか?儂としてもそろそろ孫の顔の顔が見たいんだがの」
「父上!」
なんだろーなーこの空気。大変な時なんだけどなー。
「こほん!話を続けますね」
テンを始めアーシェやティア、女性陣が不機嫌だわ。
「このまま進めば星喰いはリスガテットまで2週間ほどで到達します」
フィオーネさんの領地惑星だ。人口40万人程の亜人が住む星だ。
「避難はどうなっとる?」
ライオス陛下がフィオーネさんに尋ねる。
「避難は始まっていますが、遅れが出ています」
40万にもの住民を一時的にとはいえ避難させるんだ、受け入れる星や移動するための船の手配などやることは多い。もちろん、うちからも受け入れや商船や軍船、高速連絡船など用いた避難協力体制を敷いた。
商船の手配や協力にはうちの御用商人のネル・シアールに頼んだ。
「やはりまだ足りんか…儂の方からも船と受け入れ態勢を整えよう」
できるな?とロスヴァイセさんに確認をとる。
うなづくロスヴァイセさんにフィオーネさんは二人に頭を下げる。
すると次から次へと他の領主達も協力の手をあげる。
「感謝いたします」
フィオーネさんの目には涙がこぼれる。
「なんとか避難は間に合いそうですね…では星喰いへの有効な攻略なのですが…」
テンがホログラムで星食いの詳細なデーターを表示させる。
無人の艦隊のおかげで色々な事がわかった。もちろんまだ不明な部分も多い。だが全てを把握できるわけもないし、その時間もない。会議に参加した者から様々な意見が述べられ、対抗策が講じられていった。
惑星リスガテット。砂漠の惑星で資源が多く採掘出来ることから、貴重な資源惑星として繁栄してきた惑星であり、航路の中継点としても栄えてきた。
そんな星では星喰いの予測進路となっており、領民にはすでに政庁から知らせがあり他惑星への避難が進められていた。
宇宙港には多くの領民がひっきりなしにやってくる船に搭乗し、それでも間に合わないので地上に船を降ろし領民を収容していた。
「じいちゃん早く早く!船でちゃうよ!」
孫娘にせかされ、老人は身支度も早々に整え出ようとする。
「わかっとる!この石像は儂のじいさんが守り神として祀ってた大事なもんで…」
「名もなき女神様の像でしょ!何度も聞いたからわかってるって!」
そう言うと孫娘はそそくさとバッグに小さな石像を頬り込んだ。
「早く搭乗してください!もう出ますよ!」
兵が村の住民を乗せ船は一路星を後にする。
窓から外を眺める住民の顔には不安の顔が広がっていた。
「女神様…名もなき女神様…どうか私達をお守りください…」
バッグから女神像を取り出し祈る娘…。いつの間にか名もなき女神像を中心に村人が集まり祈りを捧げていた。
「閣下、領民の避難45%完了しました」
「うむ」
代官の小太りの頭の薄くなった中年の男は非難状況が思う様にいかないのを苛立ちながらも打開策を講じていた。
領主の命を受け、この星の統治する者を代官とし政務を任されている。
「先ほど、他の領主や八神様からも協力のため船をよこすとの連絡がありました。」
秘書からの報告に代官はほっと胸を撫でおろす。
「そうか…それならばなんとか間に合いそうだな。」
「はい…閣下も次の船に搭乗されては?」
だが代官は首を振った。
「私は最後でいい…それが代官というものだ」
「それと持っていく物は必要最低限でいい、データーなどは機密に属する物は最優先だ」
「承知しております…それと…奥様と愛人が乗る船が一緒になっていたので別々にしておきました」
「…っ!ありとう」
有能な部下で助かった。後で年代物のワインでもやろう。
心から感謝する代官であった。
星喰いが惑星リスガテットに向かう途中、眼下に無数の艦隊が集結した。十万を超える艦隊は陣形を整え、星喰いの行く手を阻むように展開している。星喰いはそれを敵と視認した。
今まで何度も己を破壊しようとする存在をそれは消滅し喰らって来た。今度も同じだ。それはそう思った。
「星喰い現れました!」
総旗艦アマテラスの艦橋の中でオペレーターの報告を受けて、オレはモニターに映し出された星喰いを見た。
奴の進路を計算し、すでに全艦隊は布陣を終えている。後は射程に入り次第攻撃を開始するだけである。
「警戒すべきは要塞砲です」
テンがまじかに迫る星喰いを見ながら言った。
確かにあれをまともに食らうわけにはいかない。無人艦隊で射程距離を測ったので、問題ないのだが…また要塞砲は連発できない。一度撃ってしまえば次に撃つまでチャージする必要がある。
「星喰いから高熱現反応多数出現!」
その時、オペレーターから報告があった。
モニターに映し出されるのは星喰いから出てくる…艦隊であった。
「戦艦まで出てくるとは…」
艦橋に動揺が走る。
見ればそれは帝国の戦艦であり、魔王軍の戦艦も混じっていたからである。
そのいずれも傷が目立ち、まるで幽霊船のような異様さを見せていた。
「鹵獲したのを使っているのか知らないが敵であることには変わらないんだ…やるぞテン」
テンはうなずく。
「やる事は変わりません。お任せください一真様」
右翼を任せているアーシェがモニター通信で笑みを浮かべる。
「一番槍は私がもらいます!」
左翼指揮のティアも続く。
「要塞砲の射程だけは気を付けてください。みなさん」
テンが念押しする。
「敵、急速に接近!」第二艦隊旗艦ツクヨミ
アーシェ率いる第二艦隊を中心に右翼艦隊は星喰らいから出た混成艦隊の砲撃から戦闘は開始された。
しかし敵の攻撃は統制のとれたものではなく、無秩序に攻撃を仕掛けてくるものであった。
「遠いわね…射程もわからないのかしら?」
「なにを仕掛けてくるか…わからない敵ですね」
副官の感想にうなずくアーシェ。
「距離二千まで入ってきたら攻撃開始しなさい」
まるで混乱しながら突撃してくる敵に正確に射程距離まで来た時 アーシェの命令が下された。
一斉に芸術的ともいえる砲撃に敵艦隊はその数を減らしていった。
「もろすぎる…」
アーシェは警戒を強めた。
敵艦隊の陣形が崩れれば、一気に勝負をつけるため突撃をするのが定石であったが、アーシェは突撃をせず、様子を見るため一時、後退した。
「こっこれは…!?」
オペレーターが言葉に詰まる。
「どうした?報告せよ」
副官の発言にオペーレーターは驚きつつ状況を報告した。
「てっ敵艦が修復していきます」
モニターに映し出されたのは砲撃によって爆散した敵戦艦がみるみる内に修復され、また攻撃をしかけてくる映像であった。
「魔術か?」
アーシェは驚愕したが、それは一瞬の事ですぐに対処方法を模索した。
学習しているのか撃破しても先ほどよりもより装甲が厚く、また攻撃も過激になってきていた。
徐々にではあるが押され始めていた。
左翼、ティア率いる艦隊はすでに敵艦隊から人型、通称ヒルコが現れ、機動装甲騎と制宇権をかけての戦いに突入していた。
「気味が悪い」
それがブラトーの敵に対する感想であった。
最初は簡単に倒せる相手だったがすぐに損傷個所が修復し、手強くなっていく。今まで戦ったことがない相手であった。
ブラトーの愛機クラーケンはニアの手によって大幅に強化されていた。ヒルコが三体攻撃を仕掛けてくるが素早く操縦桿を握りクラーケンは上昇し追ってくる敵機を引き離す。ライフルを構えるとスコープに敵を捕らえる。ヒルコが腹部に被弾すると上半身と下半身が吹き飛ぶ。二体が向かってくるが両肩に乗せたミサイルポッドからミサイルが発射されヒルコ二体を爆散させる。
「ここまで破壊すれば…」
だがヒルコはバラバラになった体を繋ぎ合わせ、より強大によりいびつな姿に変化していく。
「おいおい…冗談だろ」
第三艦隊旗艦 カグツチ 艦橋の中でティアは戦況を見て苛立っていた。
「倒しても意味がない敵っていうのは初めてね」
「このままでは機動装甲騎隊の損傷が増していきます。ここは一旦駆逐艦の弾幕で敵を蹴散らし、部隊の再編をするべきでは?」
副官の言葉にティアは全軍の中央、総旗艦アマテラスを見る。
「もう少しかかるか…」
「よし!駆逐艦・ミサイル艦を前に出せ!集中砲火によって敵を押し返せ!機動装甲騎隊は一時後退!」
ヒルコと戦闘している全機動装甲騎隊に通信が入る
「全機動装甲騎は下がれ!これより駆逐艦、ミサイル艦による砲撃が行われる!攻撃にまきこまれるなよ!」
「おっと…これはまずい!」
ブラトーを始め機動装甲騎は旗艦から発せられた射線軸から後退した。
ティアの命令で駆逐艦、そしてミサイル艦の砲撃がヒルコおよび敵艦隊に浴びせらた。一時的にではあるが敵を後退させる事に成功した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます