第22話 温泉回!2

「魔族の侵入を許しただと?」


青筋立てて怒っているのはティアとアーシェ。




オレの部屋で、主だった面々が事の次第を聞いていた。


無名を始め、蠢く者たち五名が土下座している。この五名は暗部の中でも手練れで、蠢くく者たちの組織の中でも上位の存在らしい。




「この命をもってお詫びいたしまする。」




無名たちがナイフを取り出し、躊躇することなく首に押し当てる。




「やめろ」


「一真様」




「一度の失敗は一度の功で補えばいい。」


いちいちそんな事で死なれては目覚めも悪いし、有能な暗部は貴重だよ。ましてやこの施設は出来たばかりだが、当然防犯設備にも力を入れてる。何十もの結界に監視装置、警護のドローンも常備24時間体制で機動している…それでもあの魔族はかいくぐってきた。




「あれは魔王の一人だもの…無理ないわね」


ミタマが米から作ったなんちゃって日本酒を飲んでそう答えた。




「魔王!?」


一同が驚愕の声を上げる。




「なるほど…魔王ですか」


テンが考え込む。




「なぜ魔王が…しかも単独で?」




「様子見…でしょうか」


テンが答える。




「サキュバスの魔王だから一真を魅了しに来たんじゃない?」




「「「「!?」」」」


またしても一同が先ほどよりも驚愕する。




「次出たら必ずぶっ殺してやる!」


「戦艦の主砲に括り付けて砲撃してやろうかしら」




ティアとアーシェが物騒な事言ってる。




「サキュバスは男性・女性関係なくを魅了し思うように操ると聞いていますが…一真様はよく抗えましたね?」




テンがそう言うとミタマがくいっと酒を飲んで言う。




「正直かなり危なかったわよねぇ 念話で やばいやばい助けてーっはじめてが魔族のお姉さんになるーっ!て」




おいバラすなよ!内心焦ってたし心の中で悲鳴だしたせいか念話が使えるようになってた。






「また魔王が出てきたのかよ 次会ったら勝てないなぁ アレは」


ドゥルガーとは違う力を感じたよ。




「ナイトメア使えば楽勝じゃない」


ミタマが余裕余裕と言うが。




「あれ多分もう使えない」


「なんで!?」




「ドゥルガーと戦った時、あの宙域にいた者皆に見せたろ?お前、他の魔王も見てないと思ってる?」


「えっ?」




「ドゥルガーが…あの魔王が攻めて来てるんだ。他の魔王が偵察艦か魔法で見てるかはわからないけど、オレのナイトメアも見てると考えた方がいい」


見てると考えると、防ぐ方法も考えてるだろうしな。




「魔王リリス…対策はしておいた方がいいでしょうね。表立っての侵攻はないでしょうが、あのような行動をとるとは予想外でした。」




結局、警備体制の再構築と今後の事が話し合われた。あぁ、せっかくの温泉が…台無しだよ。








魔王リリスの単独での襲来?から一か月が経った。警備体制の強化などますますオレは多忙になっていった。


オレは驚愕の報告を聞いた。




「第二皇女が温泉に浸かりに来る?」




テンがお忍びで皇女が来るとの帝都から連絡を受けたそうだ。


「なんでも無類のお風呂好きなんだそうですよ」




星丸ごと温泉施設にした惑星、温泉惑星は好評で、民衆からお貴族様や領主まで来るようになっていた。


当然連合の人達も招待してくつろいでもらった。ライオネス陛下も楽しんでたし、新たに領主になったフィオーネさんはいくつ温泉を回れるか、どの温泉に入るかで悩んでいたな。


温泉…接待につかえるな。




だが、皇族が来るとなると、はいよっと受け入れるわけにはいかない。お忍びであっても、警護やそれ相応の対応をしなけれなならない。


当然領主のオレも迎い入れなければならないわけだ。




第二皇女…咲夜皇女だったか…。オレと同じ地球の日本出身の母を持つ皇族か…。






「到着は二カ月後…とのことです」




「第二皇女が来る事は機密事項に。警護の人選はテンに任せる」




はいっと返事をして執務室を出ていく。施設は出来てるが、失礼のないよう今から事を進めなくてはならない、二カ月は時間があるように見えてあっという間だからな。




こういう事は自分ではなんもわからないので部下に頼むに限る。




皇族の接待など知りもしないオレが口出ししてもろくな事にならないだろうしな。






政務を早々に切り上げ、昼に軽い昼食をとった後オレは、屋敷の広い庭でティアやアーシェなどと模擬訓練を行っていた。木刀を持っての実戦形式の訓練だ。




普段二人はネタキャラになりつつあるが普通に優秀にして有能なんだよな。


剣をとらせてもウチでも一,二を争う。


オレ自身も鍛えるため、体造りと剣の腕を磨くためにやっている。




天羽々斬を自在に操れるぐらいになりたい…アレを使ってオレの体がもたないのは主たるオレのレベルが足りないって事だからな…できれば使いたくないけどね!。




今はティアと木刀で打ち合っているが手も足もでない。今も木刀を落とされ、腹に一撃食らった。




「くっ」その場で片膝を落としうずくまる。




「もっ申し訳ありません!」




「貴様っ!一真様になにかあったらどうするんだ!」




アーシェが激怒するがオレが止める。


「手加減するなって言ったのはオレだ…」


シルフィが見ていたのだが、すかさずオレに駆けより手をかざす回復魔法を使う シルフィが回復魔法が使えるとは知らなかった。




ミタマがその才能を見抜き教えたらしい。 そのミタマは庭にシートを引いてシルフィお手製のクッキーをぼりぼり食べながらオレたちの訓練を寝っ転がえりながらて見ていた…のだが…寝てやがる。




しかし…アーシェもティアも手加減してるのわかるんだよなぁ。主に本気で打ち込むなどできないという事か…




「せめて自分自身守れるぐらいの強さが欲しいなぁ」




「じゃーこれ飲めば?」


さっきまで鼻提灯だして寝ていたミタマが眠気眼に錠剤を出して来た。




「なにこれ?」


「魔力を底上げする薬」




「…副作用は?」




「ものすごく苦い」




「……」




「……返す」




「なんでよぉ!」




「絶対それだけじゃないだろ!」




「ほんとだってば!」




ほんとに大丈夫だろうなぁ?


ミタマかた渡された薬を見て、まぁ 苦ければ吐き出せばいいかと思い一息に飲み込む。




……別になんとも…んっ?


「あっ」


「一真様っ!」


泡拭いて倒れるオレ。ティアとアーシェが駆け寄り、シルフィがすぐ回復魔法をかける。




「いっ医者を 早く!」


「足が…ひくひくして痙攣してる…一真様しっかり!」


ティアが医者を呼ぼうとし、アーシェが今にも泣き出しそうになった。


「大げさねぇ」


ミタマが呆れて言う。




「大げさじゃねぇーよ!気絶するほど苦いなんて初めてだわ!」




「ひっ…」




「か…一真様…それは」




がくがくと震えるアーシェとティア。見ると視覚化するほどの魔力がオレの周りに燃え盛るように纏っていた。






後になってわかったが新たなスキルもこの時覚醒していた。






魔王リリスが支配する領地。リリスが領地に帰ってくると、部下から他の魔王の情勢が報告された。




ドゥルガーの支配地をめぐって小規模ではあるが戦闘を繰り返していた。


だが自身の軍を動かさずドゥルガーの元配下がいずれかの勢力に組し、争っている形となっていた。


互いにけん制し合い、いつ軍を導入するか…それぞれタイミングを狙っていたのだ。






「いかがでしたか?勇者は?」


サキュバスの部下がリリスに聞いてきた。




「欲しいわ…私の魅了にかからない子だもの…寝屋を共にしたいほどに…」


三国を統一し、全ての魔族の頂点に君臨しようとするならもっともっと強力な軍が必要だ。


あの子が…私のものになったらおもしろいわね…。


でも…もっと強くなってもらわないとね…。




「純佳を読んでちょうだい」


はっ!と言い部下は退室する。




「紫藤純佳しどうすみか、参りました」




佳純と呼ばれた女は肩まである黒髪に意思の強い瞳。女子高生のセーラ服を着てリリスの前に現れ、魔王リリスの前に膝をつく。




リリスは玉座から立ち上げり、佳純の前に来て、佳純の顎を右手ふで触れ上げさせる。


頬を赤らめ瞳をとろんとさせながら佳純はリリスを見つめる。恋する乙女のように…




「いい子ね佳純…あなたにお願いがあるの…」




「はい…なんなりと」




「勇者八神一真を連れてきなさい どうしても逆らうようなら殺してもかまわないわ」


リリスは一真の映像を出し、佳純に一真の情報を与えた。


「はい」




「プレゼントもあるの…あなた専用の魔装騎兵も用意したわ…」




「ありがとうございます」


佳純は退室していった。


「ふふ…楽しみだわ…同じ勇者の称号を持つ者同士が戦ったらどうなるのかしら?」




「佳純はやりすぎてしまうかもしれません。お気に入りの勇者が死ぬことになりますが?」




「それならそれだけの男だったって事よ…あと佳純も私のお気に入りよ…」


食らい合って強くなって欲しいわ…できれば二人とも…。








第二皇女が温泉惑星に来る日が来た。


お忍びという事で大々的に迎える迎えるわけではないので。領主のオレは一番手の込んでいる旅館で待つ事になった。




女将の紺さんには第二皇女の事は伝えているがそれ以外の従業員には知らせないでいた。普段通りでいいし特別扱いするのはお忍びという性質上違うと思ったからだ。




「第二皇女咲夜様、宇宙港に着かれました。」


テンから端末経由で連絡があった。




「わかった」




当然警備はつけるし皇女のお供や帝国からの私服を着ている騎士なども付いてきてるはずだ。




監視カメラから皇女の姿が見える。観光客を装うために、ワンピースを着て大きな帽子をかぶっている。サングラスなんかつけてるけど…昔の芸能人かな?


ふーん自分でキャリーケースまで持ってるんだな。




宇宙港に着いたのならすぐにここに来るだろう。








宇宙港にようやくついた。第二皇女たる私がこんな辺境に来てるなんて周りの誰も思わないでしょうね


ここまで来るのにワープゲートを使っても一か月もかかってしまった。


我儘を言って皆を困らせてしまったのだろうけど、お父様にも温泉というものに浸かりにいきたいですと言ったら呆れた顔をされてしまった。


でもお風呂のためなら!と思うわ!。






お姉様はなぜか、とても羨ましそうな目で私を見送ってくれたわ。ああいう時のお姉様はとても怖いのよね。あとでお土産買っていこう。




宇宙港から軌道エレベーターで地上に降りたつとそこは異世界だった。見たことのない建築物、独特の匂い…これが硫黄の匂いといいのかしら?ここに来るまで温泉の事を勉強したからなんとなくわかるわ。


でもなぜかしら…とても懐かしく思うのは。


お供の人達は嗅ぎなれない匂いなので変な顔をしてる。なんとなく笑ってしまいそうになる。




あれは…YUKATAね!こういう場所ではああいう服を着るのよね!あちこちの観光客の服装すら私には新鮮に映る。あれはなにかしら?蒸気が出てる…なにやら甘い匂いがするわ。




「いらっしゃい!当店名物の温泉饅頭はいかが?」






「温泉饅頭! 温泉の蒸気で作るお菓子ですね!」


「はい とっても美味しいですよ」




思わず買ってしまった。この星の事を調べてたらぜひ食べてみたいと思っていたから、一口食べてみると暖かく中のあんことかいうものが程よい甘みが口に広がる。


美味しい…お茶を進められ飲んでみると紅茶とは違う風味で饅頭ととても合うと思った。


他にも色々面白いものがあって興味がわいた。




「お嬢ちゃんはこの温泉街は初めてかい?」


ふと老人に話しかけられた。




「はい…温泉というの入りたくて…」




「そりゃーええのぉ ここの温泉は色々あってなぁ 様々な効能があるんじゃよ」




老人から温泉の事を教えてもらった、


温泉の効能・効果は端末で調べて知っていたが本当にそんな効果があるのか疑っていたのだが、


「わしのリュウマチにも効いてきてのぉ」


どうやら本当らしい。






こほんっとお供の人が咳払いする。


そうだった。お忍びで着てるとはいえ自由になんでもできるわけではない。この後領主の八神一真殿との面会があったのだ。




後ろ髪惹かれつつ私は車に乗り旅館という場所に向かった。






この星で一番大きな旅館に着くと、KIMONOを着た女将さん?というこの旅館を統率する人が挨拶に来てくれた。


とても美人だ、亜人の人が一番偉いなんて帝都ではあまりない事だろうなぁと思いつつ、部屋に案内された。




「お久しぶりですね…咲夜皇女殿下」




「帝都以来ですね」


一真殿もYUKATAを来てリラックスしながら挨拶をしてくれた。






それから、一真殿の家来の方々も紹介してくれて…。


「ようこそいらっしゃいました 咲夜皇女殿下!それでは私おすすめのお酒でも飲みながら…」




「待ってくださいミタマさん 皇女様酔わせて何する気ですか?」




「離しなさいテン こういう時は緊張をほぐしてあげるのが一番なの、 それにはお酒が一番よ!飲みにケーションて奴よ!」




「パワハラです!一番嫌がられる奴です!」




「すいません! こいつ頭がアレなんでほんとスイマセン!」


平謝りする一真殿…。




「はぁ!?女神たる私を捕まえて頭がアレとか何言ってるの?一真の頭にウジが沸いてるんじゃないの!」




「それはお前だろうがっ!」




「だっ…大丈夫ですから」


一真殿の周りにはとても賑やかな人達がいるんですね・


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