第17話 凱旋
惑星上空を艦隊が悠々とその雄姿を見せる。機動装甲騎が6機編隊を組み上空を通過する度、民衆は歓声を上げた。
街頭にTVモニターが数多く映り、ニュースキャスターが今回の戦いの概要を興奮気味に伝える。
オレが乗る旗艦が上空を通過するとひと際大きな歓声が上がった。
「一真様ーっ!」
「領主様ー!」
屋敷に戻ると、テンが被害状況をまとめた。
「851隻もやられたか…」
「2万5千もの敵を相手に少ない方でしょう。」
機動装甲騎は2千機の内500機が大破した。戦死者は1万人を超える。負傷者はその倍。
「はぁ…せっかくここまで精鋭を集めたのになぁ」
その時、ばんっと扉を開けてニアが飛び出して来た。
「一真様っ!大勝利おめでとうございます!」
オレに飛びつこうとした所をテンがオレの前に出てそれを遮る。
「要度いいタイミングで出てきましたね」
じとぉ~っとした目でニアを見るテン。
「そっそんな事ないですよぉ あっ所で一真様 新しい戦艦とか新型の機動装甲騎があるんですが…」
「お前が来るって事はそうだと思ったよ。まぁ買うけどさ」
やったぁ!と指をパチンと鳴らすニア。
「幸いな事に今回、惑星事態に被害はありません。最小限の出費で済むでしょう。」
テンがニアに警戒しながら言う。
「功績のある者に恩賞と昇進もとらせなければなりませんね。」
テンがホログラムに出して、功績著しい者をデーターで出す。
やはり、アーシェとティアが突出して戦果が著しいな。
「我が軍の新たな英雄として大々的に宣伝しましょう。戦意高揚に繋がります。」
富国強兵の政策を提案するテン。これは前々から官僚などから提案のあった案でもあったしオレも別に不満もない。
「ねぇねぇ戦勝祝いはいつやるの?私まだ歌い足りないんですけど、」
ミタマがアニソンメドレーをまた歌うつもりでいた。
セバスチャンがすでに大々的にパーティの準備を進めているので皆疲れていないのか?と思いながら盛大にパーティを行った。
一か月も経てば領内も平安を取り戻し、いつもの日常が帰ってきた。
「帝国がオレに勲章を?」
執務室でテンがオレに帝国から勲章の授与と褒章金をとらせると勅使をオレの惑星に送るとの事だった。
今回の魔王軍残党の殲滅の功績を評価されての事だとか。
「勅使を迎え入れる準備をしなければなりませんね」
メンドクセ。
どうせなら勲章と恩賞金だけ送ってくれればいいのに。
到着は一か月後との事だから準備する時間はあるな。まぁ全部部下に任せちゃうけどね。
「もう一つ、魔王軍残党が海賊を軒並み排除してくれたおかげで周辺航路の安全が確保されました。
これにより他の惑星との交流が盛んになります。」
交易が盛んになるのはいい事だ。
また単独での魔王軍を殲滅した事でオレの名声が広がったらしい。次々と他の惑星の領主から挨拶がくるようになった。
益々持ってオレは忙しくなった。くそぉ大人のお店にいけないじゃないか!。
陳情を処理するのもオレの仕事だが、その中で変なものを見つけた。
「麗しくも美しい美の女神ミタマ様の歌声を皆に…ナニコレ?」
「あー…ミタマさんの歌に魅了された…一部の信者?がミタマさんをアイドルに…と」
「却下」
だがこれに激怒した一部の領民がデモ行進を行うというわけのわからない出来事が起こる、なんでこんなのを鎮圧するのに制圧部隊ださなきゃならないのよ。
もちろん血は流さなかったけどね。アホらしい。
惑星からほどなく近い宙域で二つの軍が対峙していた。
再編された一真の宇宙軍、その演習が行われていた。
指揮官は先の戦での功績により准将に昇進したアーシェラ・ウィル・アスターとティアベル・フォン・ヴェルナーであった。
破格の昇進ではあったが、なにより優秀な提督が欲しい一真の抜擢であった。
「各艦隊陣形を整えました」
副官の言葉にうなずくアーシェ。
「演習とはいえ実戦形式で行います。後れを取るような者は我が艦隊に必要ありません。」
「はっ!」
当然、レーザー砲もレールガン、ミサイルも模擬弾であり死者が出ない用配慮されてるもので、機動装甲騎もそう配慮されている。
ティアの艦隊も陣形を整えていた。
「敵艦隊、動きます。」
副官が指揮官のティアの命を待つ。ティアが司令官の椅子から立ち上がる。
「誰が一真様の一番の将か皆に知らしめるいい機会よ。全艦隊前進せよ!」
「でっ模擬戦に勝ったのはアーシェ率いる艦隊か」
「はい、ティア提督は相当悔しがっていました。」
模擬戦の結果をテンから執務室で聞いた。
なるほど…艦隊の指揮はアーシェに軍配が挙げるのか。
「領主様、資源惑星への移民政策なのですが」
担当する官僚が報告に来た。
二つの資源惑星に移民を募り、本格的に開発を行う事になった。
本星からも募るが、他の惑星にも広く募集することになった。人口は多いほどいいからな。
ただ当然治安の心配もあるので、そちらの方も配慮しなければならない。
まぁそんなのは部下に任せるに限る。
九尾の一族はここでも有能で、効率よく資源惑星の開発は進んでいった。
とある酒場、客も多く、出す料理もうまいと大評判であった。
あちらこちらで乾杯の声が上がり、領民の顔も明るい。給仕をしている女の子のお尻を触って盛大にぶっ飛ばされる酔っ払いに大笑いする客。
「かーっ!一仕事終えた酒はうまい!」
一人の男が疲れた体にエネルギーを注入すうように酒を煽る。
「最近景気がよさそうじゃないか」
店の店主が話しかける。
「そりゃちょっと前まで仕事なんざなくて、ここらも売ってる酒なんざ混ざりものが当たり前 あぶねー薬売ってる売人がたむろして、売春婦がそこらで立っていたろ?」
その頃に比べたら今は天国だぜ。
治安の回復は新しい領主によって即座に行われた。
「領主様様だぜ」
まったくだとうなずく店主。
「夜、女が一人で歩けるなんて昔だったらありえねーぜ」
「おらぁ 子供が学校に行けるのがうれしくてたまらねーのよ。まっとうな暮らしができてガキが飢えず腹いっぱい食える。こんなの夢にも思わなったぜ」
「しかも今の領主様は戦にもお強いんだぜ?見たろ魔王軍を倒しちまったんだ さすが勇者様だよ」
「もしかしてオレたちはとんでもねぇ領主様の所に住んでるんじゃねーか?」
「かもしれねぇな。あのお方は次はなにをなさるのかねぇ」
「今も領主様はオレたち領民のために色々考えてるんだろうなぁ」
領主様にかんぱーい!と話を聞いていた男たちが領主を称えた。
「あの…言われた物を作ってみたんですが…これで大丈夫でしょうか?」
シルフィが作ってくれたものをオレは口に運ぶ。
「うまい!」
それは揚げたトンカツを汁と卵で閉じ、暖かいご飯の上に入れた丼。かつ丼である
一番上に三つ葉を乗せてるし。 嬉しい。これがないとかつ丼とは言えない…。
これこれこの味が欲しかったんですよ。
「やっぱりシルフィの料理はうまいなぁ」
「ありがとうございます」
頬を赤らめるシルフィ。
「ほんとよね この私に美味しいと言わせるなんていいお嫁さんになるわよ」
ミタマ、お前はなに食べても美味いというと思うぞ。
「これ…ほんとに美味しいですね」
テンもふぅふぅ言いながら食べてる。
「これおかわりもらってもいいですか?」
アーシェがおかわりをもらう。
「私も!」
ティアも。
たまにはみんなで一緒にご飯もいいだろうと誘ったのだが、こった料理ではなくかつ丼が食べたくなったのだが、よく作ってくれたよ、シルフィ。えらい。
もちろん、うちには専門のコック…料理長もいるのだが口頭で説明してもうまく再現できなかった。シルフィはやってくれたけどね。料理長は呆然としてたなぁ。
ちなみにアーシェもティアもこの屋敷に住んでる。
騎士に叙勲した当時、住居を用意する間、一時的に屋敷に部屋を貸していた。部屋なら有り余っていたからね。
一軍の将になったからにはそれにふさわしい住居を与えるのでその屋敷ができるまでの間、屋敷にいる事になった…んだが、なんかこのまま住み着いてしまそうな感じがする。テンも住んでるしな。
ミタマの部屋はお酒のコレクションが並んでいる。
オレは行った事がないがテンやミタマが遊びに行ってるようで、話によるとアーシェの部屋はぬいぐるみに囲まれていて乙女な感じがするらしい、ティアの部屋は機動装甲騎の模型とか戦艦のプラモとかが並んでいるとか…なにそれオレも欲しい!
なんかどんどん私物が増えてるらしい。
それと、メイドや使用人も増えた。さすがにセバスとシルフィの二人だけでは無理だからな。
メイドは領内でも美女を集めた。領主の特権だな!。
シルフィをメイド長に抜擢し、メイドの教育も任せた。本人は私にはとても無理です。と言っていたがそこはセバスのフォローもあってなかなかうまくやっているみたいだ。
とある日。
セバス…セバスチャンは領内の発展に驚きを隠せないでいた。
自分が仕えていた先代時代は領民から絞るだけ税を絞る領主だった。
領民は自分に奉仕するための存在としか見ていなかった。
それを正そうと諫め、諫言する騎士や家臣もいたが、その全てが追放または無残な死刑に処された。そんな主を見限り、出て行った者たちも多かった。
不忠かもしてないが、戦争で命を落とし、一真が領主になってくれた事を名もなき女神に感謝したい。
領土の景気がよくなり、人々が明るく生活し主君を名君と称えるようになる。噂が噂を呼び、どんどん他の惑星から領民が増えそれが原動力となり景気がさらによくなる。
このような光景を目にするとは…。
ある日にメイドを増やすため募集をかけた所、あっという間に定員を超え、審査するのが大変だったぐらいだ。
もちろん能力は言うまでもなく、本人の性格や容姿も選考基準に含まれ、メイドからの質問に、
「あの…ご領主様の夜伽も含まれますか?」
他のメイドがきゃーっと黄色い声を出す。
「もちろん 主が望まれたら…の話ですが、しかしあなたが拒否する権利もありますよ」
他の領主がメイドに手を出そうとし、拒否などしたものなら、そのメイドは解雇されるか、もしくはひどい目にあうだろうが、一真はそんな事はしないとセバスには思われた。
「絶対拒否しません!むしろいつでもOKです!」
中には、絶対孕むわ!とか どうしよう私、初めてなのに…優しくしてくれるかしら?。など…中には領主様はどのようなプレイをお好みでしょうか?など聞いてくる娘もいた。
これにはセバスは頭を抱える。
自分の持ってる性への理解が今の子と違いすぎるのか…いやこれは玉の輿を狙っての事だろう。
一真はまだまだ若い、望むなら万単位でのハーレムも作る事も可能だ。領主の仕事には後継者を作る事も含まれているからだ。
それも一人二人では心もとない。何十…何百とだ。今は平時ではなく魔王軍との戦時下なのだから、
いつ、どこで一真が命を落とすかわからない、今一真に倒れられたら、考えるだけでぞっとする。
今は多忙を極め、誰にも手を出していないようだが、本人にその気はある。セバスに大人のお店のおすすめを聞いてくるが、セバスにはそんな店に行くよりはミタマさんやティファさん、アーシェさんらに手を出してもらいたい。天狐さんは…まだ早いな…見た感じ皆、一真に好意を抱いているように感じる。
メイドの中には九尾の一族や猫耳を持つ者など亜人も多く含まれていた。亜人を差別する領主も多いが一真は気にしない…というかむしろ大歓迎といった感じだった。本人の趣味なだけなのだが、亜人を差別しない領主様としてより名君としての名を上げたのだった。
新しく入ったメイドの資料をホログラムで出しながら、えへへとにやにやする一真…いいなぁ…狐耳にもふもふ尻尾にメイド服、こっちの猫耳のメイドもいいし犬のたれ耳の娘もいいなぁ…
「…気持ち悪いわよ」とミタマに突っ込まれるが気にしない。
領主の特権として仕事中のメイドのスカートをめくったりお風呂を覗いたりできないかなぁ…そんな特権ないか…セクハラって訴えられたら大変だ。
実は当然、夜伽も含まれる人事なので有りと言えば有りなのだが、むしろ彼女たちはそれを待ってる感じなのだが、地球育ちの一真にはそんな事をすれば痴漢でおまわりさん呼ばれると思ってるのである。
そして冤罪であっても牢屋行き!…のイメージが一真にはあった。
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