第13話 プロローグ 第二章  惑星再建はじめます。

「すごいもんんだな」


オレは自分の領地の再開発地区に来ていた。


中央はオレの屋敷があり、それを取り囲む形で街はあった。…のだが街など名前だけのもので、


スラム街だらけになっていた。…それを再開発し、効率よくオフィス街、住宅街などのインフラ整備をしなければならなかった…治安の回復も急務となっている。






様々な作業ロボが作業をし。材料を運ぶトレーラーやドローン大型空中船がひっきりなしに通っていく。




「君、政治とかできる?」


あの日オレは天狐 通称テンにすがっていた。




「うわぁ…ロリにすがる勇者、見てられないんだけど…」


お菓子をぽりぽり食べながらまるでゴミを見る目で辛辣な言葉を言うミタマ。




この野郎…お前は食っちゃ寝してるだけだろうがっ!あとでしばくっ。




テンはこれでも一族の長、彼女でなくとも内務実務に強い人がいたら紹介してもうの!




ずぶの素人のオレがやるより得意な人に丸投げした方がよっぽどいい。とオレは判断した。


九尾の一族をオレの配下にすることを了承した事で優秀な人材を確保しなければオレの伯爵人生は終わる。




こほんっとテンは咳払いをして、当家の財政状況を見せていただけますか?と言うのでセバスに出してもらう。


テンは自分の周りにホログラムで周囲に展開させた資料を凄い速さで調べていった。




「先の大戦で5万のうち3万がいなくなりましたが、それでもまだ二万もの軍があります。これの維持費が無駄に多すぎます。軍縮をし、最低限の兵力二千ほどでいいでしょう。」




「おっお待ちください!当家は魔族領と国境を接しています!もしまた魔王軍が攻めてきたら…」




セバスが心配して言うが、テンはかまわず続ける。




「魔王軍は動きません。四人の魔王の一人、ドルゥガーは後先考えず行動する魔王でした。他の三人はそうではないと考えます。」




「なぜですか?」


セバスはテンの真意が図らずにいた。




「今までの魔王の行動…ドゥルガーのように支配欲が強いのであればドゥルガーが帝国領に侵攻した際、ドゥルガーの領土に侵攻するか帝国領に攻め込むと思います。しかしそうはならなかった…」




「恐らく他の三人の魔王は帝国領にさほど興味がないか…手が出せない状況なのではないでしょうか」




「互いが互いを牽制しあって動けない…か」


オレが顎に手を置き考える。


今まではドルゥガーという脳筋の相手をしているだけでよかったが、あいつはそれに飽き帝国に侵略した。他の魔王は奴が帝国と潰しあって傷ついてくれればそれで漁夫の利を得るって感じだろうか…だが奴はオレに敗北。


魔王は三人になり三国志状態になった事で、うかつに動けなくなった…。




「ドゥルガーの領地はぽっかり空いた状態です。三人の魔王はこれを見逃さないでしょう。しばらくは魔王領内で争いが起きるはず…それが何年…何十年かかるかはわかりませんが、当家にとっては一番欲しい時間が手に入ります。」




「なるほどなぁ…」魔王たちは帝国、人間の領地にかまけてる暇がない…か


オレはうなずく セバスもこれには納得せざる得なかった。


ちなみに帝国も魔族も延命治療が進んでいて、ものすごい長生きになっている。10年20年なんてあっという間の出来事らしい。




「じゃあ 軍縮でいこう」


こうして、領地の再建が始まった。


無駄に膨れ上がった私設軍は解体、無駄飯ぐらいの旧式の戦艦は売り払い、軍人は再教育。再編を行い精鋭として育てていく。


財政が健全化すればその規模に応じて軍拡をしていく方針になった。




また、軍を辞めた者も職業訓練を行い、領内のインフラ整備や治安維持のため警察にもまわす。


これらの人事やお役職仕事は九尾たちが有能揃いで、各部署に配属し、効率よく仕事をしてくれた。




改革が進むと必ず、それに反発する者も出てくる。




「領主様、急な改革は当家にとって、良いものではありません。」


大きく腹の出た中年の男、官僚がオレの屋敷に来てそう言った。


オレはシルフィの入れてくれたお茶をずずっと飲みながら話を聞いた。


執務室にはテンも控えていた。ミタマはソファーで寝ている。


「当家の財政は逼迫しており、急激な改革には耐えられません、せめてもう少し、時間をかけて…」




「ふぅん…横領してる金で随分贅沢してるようだけど…」




「お前らがネコババしてる金を元に戻せば少しは財政がよくなるんじゃないのかな?」


オレは横領の証拠をまとめた資料を官僚に見せる。




テンが横領してる官僚のリストをまとめてくれたので、処分が楽にできる。




この官僚は、横領だけでなく領民を奴隷として売り払っていた、しかも自分の好みの女がいたら、妾にし、好き放題していたようだ。




「こっこれは何かの間違いで…」


「連れていけ」


黒服が官僚の両脇を抱えて連行していく。


あっ昔のオレだ…。


ちょっと同情してしまった。




「テン、始めてくれ」




「はい」


テンは秘書兼オレの副官として側にいてくれる事になった。




そのテンの提言通り、横領や凶悪犯罪を行う官僚、軍人などを一気に処罰し、領内の引き締めを行った。




これで領内の犯罪率が一気に下がった。




「一真ちょっと変わった?」




ミタマが執務室のソファーに寄り掛かりながら言う。


「人を殺すのに躊躇ないのね」




「それは違うなぁ…オレは地球にいた頃、一つのパンをめぐって平気で殺し合いなんてしてたよ…」


思い出したくもない過去…時折夢で出てくる。






「こんなオレは勇者にふさわしくないか?




「いいえ…手にかけた命の倍その何十倍の命を助けなさいな…」」


さらりと女神らしい事いう。 寝転がりながらポテチを食べなければもっとよかったんだけどね!


ソファーが汚れるでしょ!




こうしてオレの領地は改革が進んでいった。




「この区画はオフィス街となります。作業は順調です。」


工事担当者の報告をうけながら、オレは進捗状況を見ていた。


その時、端末から連絡があった。屋敷にいて雑務をしているテンからの連絡だ。




「一真様、帝都からラグーン工廠の方々がお着きになりました。」




ラグーン工廠、帝国には様々な軍事工場があり。ラグーン工廠はそのうちの一つで、再編成する軍部の陳情により、帝国から中古の戦艦を買う事になった。


今の財力。軍事力では新型なんて買えないしね。


セシリア・ジャージ皇女殿下のおすすめで紹介してもらった。




屋敷の執務室で工廠のセールスマンと対面する。


ドワーフの女性で、十代前半にしか見えない。スーツに身を包み、丸眼鏡 髪を両脇に結び、紫色の瞳、黒髪 あまり化粧はせず、セールスマンレディといった感じ。…小さいから無理やり大人びた子供のように見えた。


その割にスカートの丈が短いな…


「お初にお目にかかります。伯爵、私はニア・ニーイ・ニージルズと申します。以後お見知りおきを」




握手をして座るよう促す、






ニアはさっそく端末を使い映像で戦艦の画像と性能、価格を表示する。




戦艦、巡航艦、駆逐艦、宇宙母艦、砲艦、ミサイル艦など様々な艦種があり、オレにはどれがいいのかさっぱりだった。


現在の八神家の戦艦は二世代前のものが主流で、老朽艦ばかりだった。軍部が泣きついてくるのもわかるが…




側で控えていたテンがそれらを見て、


「随分と値が張りますね。」




「性能は折り紙付きですよ 中古といえど最新の兵器を搭載してますから、また搭載できる起動兵器の数も倍に増えてます、こちらの巡洋艦は従来のスペックを伸ばして…」




ニアの演説は続く。




「他の工廠でも同様の性能を見受けられますね…しかも価格が大分安く設定されてます。」




「そっそれは税抜きだからですよ。」




「他の領主や帝国もそちらの大手の工廠から戦艦などを購入してますね。」




今はどの惑星や帝国も軍の再編にかかっていて、どの工廠も繁盛期なのに…


「もしかして在庫余ってる?」


オレの一言に泣きそうになるニア。




「どうやら評価試験で落ちたようですね」


テンが資料を見ながら続ける。




「性能は劣っていないんです!うちは整備やアフターフォローもいいんですよ!みんな大手ばっか買うし!うちは在庫余っちゃうし!」




性能同じなら大手の方を買うのはどこも同じか…。


「伯爵!うちを助けると思って二百…いえ百隻でもいいから買ってくださいませんか!もちろんローンでもいいんです!」




とうとう泣いちゃったよ。


資料を見ながらオレはふとあるものに目が行く。


「あんたん所、起動兵器も扱ってるのか?」


もちろん他の工廠も機動装甲騎は扱ってるが戦艦の方に重きを置いてるようで性能、兵装 どこも似たり寄ったりだった。だがここはより充実している、




「はい!起動兵器はうちの看板商品の一つなんですよ!」


社長の趣味の所が大きいという。


「テン、戦艦買えるか?」


「百隻なら問題ありません。もちろんローンとなりますが…」




「よし、買おう」


「ありがとうございますぅ 伯爵だいすきぃ♡」


歓喜のあまり抱き着くニア。小さい身体に似合わないたわわな弾力がオレの顔に覆いかぶさる。


「はっ離れなさい!」


テンが一所懸命に引きはがそうとする。




「買うかわりに、見てもらいたいものがあるんだ」








「これは…」


屋敷内の倉庫に横たわるように置いてあるのはオレ専用の機動装甲騎、


あの戦いの後、回収されこの倉庫で保管していた。


名前がないのは困るので、村雲と名前を付けた。




「こいつをカスタマイズしたいんだが…できるか?」


ノアは村雲を見て回る。


「すごい…これって古代魔法王国のフレームですよね?…外装はボロボロだけど…内部フレームは綺麗に残ってる…よく調べてみないとわかりませんが…」




「戦艦買うからこいつのカスタマイズは安くしてくれない?」


「…そうきますか…でもこんな貴重な機動装甲騎いじらるなんてめったにないし…」


うーんとうなるニア。


ちょっと待ってくださいねっ!と後ろを向き、端末を操作し上司と連絡する。


事の次第を報告すると。


「なにっ!うちの機動装甲騎用の最高のものをだと!?」


「戦艦百隻に比べれば安いものですよ!」


「それに在庫抱えたままじゃ破産ですよ! うちの商品で伯爵が大活躍してくれればこんないい宣伝ありませんって! なんだったら装甲にうちの名前いれますから」




きこえてるぞー ダメだぞー。


「よし!上客なら仕方ない!ニア、枕営業でもなんでもやって専属契約とれよ!」


「了解っす!そのまま寿退社まで視野にいれます!」


全部聞こえてるんだが…。








二週間後、オレは宇宙港に来ていた。港の倉庫に村雲を運んでいる。無重力化での作業の方が効率がいいとの事で、ニアを始め、25名のスタッフが来て、作業に取り掛かっていた。


ニアはスーツ姿ではなく、作業服で楽な格好だった。




「班長ーっこの装甲全部引っぺがしていいんだろ?」


作業員の言葉にニアが指示を出していく。




「邪魔な装甲は全部はがしていいわー。内部フレームだけにして」




慣れた手つきでどんどんオレの村雲の装甲が外されていく。




人間の骨組みのような形だけ残された。


装甲を外していく過程で、作業員が不可思議なものを見つけた。装甲の奥深くに爆弾が設置さていた。


だが、その爆弾は中の装置が破壊され作動しなくなっていたのだという…


危ねぇ。もしオレが乗っていた時に爆発したらと思うと…背筋が寒くなった。




「やっぱり何度見てもすごいですねぇ…内部フレームは傷一つないですよ」


ニアが関心している。なんか目がハートになってる。


「あぁ 何百年もフレームが劣化もせず、こんなに綺麗に残ってるなんて…調べたいなぁ 一体どういう仕組みで?素材もわからないし どんな魔法も使ったんだろう?」




じゅるりと涎を拭くニア。


あっやばい人だ。




村雲…大丈夫かなぁ?不安になった。


その後二遊間たらずで村雲の改修は終わり、試運転が始まった。


カラーリングは黒のままにした。黒が好きだしね。


宇宙空間に出ると今までの鈍足な加速が嘘のように俊敏な動きを見せた。まるで自分の手足を動かすように村雲は自由に動く。


加速してもまったくGがかからない。








試運転も終わり、満足して俺は宇宙港に帰還した。


ニアが端末を操り様々なデーターをとっている。




「なかなかいいデーターがとれましたよ。伯爵は操縦がうまいですね。」




「男の子の夢だからな」


「はっ?」




「こっちの話」


ロボに乗り自由に操る。たまらないね。


「でー、伯爵 この子の性能から見るにまだまだ余裕があります。どうでしょうもう少し予算を上げてもらえば…」


しなっと腰をくねらせておねだりしてくるニア。


貴重な鉱石 ミスリルやアダマントなどを使えばもっと性能が向上するらしい。ファンタジーに出てくる鉱石はこの宇宙で存在するんだよなぁ…




ミスリルはドラゴン討伐の時に拾ったけど、足りないし、アダマントなんてないしなぁ。




「ダメです!」


テンがずいっと間に入ってきた。


「一真様!まだまだ当家には余裕がありません。そこの所どうかご理解ください!」




「…はい」


くそぉ いつか金に糸目をつけず改良してやるからなぁ 村雲。


「ケチ」


ニアがぽつりと言う。


「なんですって!」


二人がぎゃーぎゃー喧嘩を始める。


整備員や宇宙港の職員たちがどちらが勝つか賭けを始めた。




うちのロリ枠は元気があるなぁ…。












  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る