第12話 エピローグ

俺は一か月かけ、自分の領地に来た。


領主として!


帝都から船を利用しての旅は快適だった。


にしても帝都からかなりの距離があったなぁ…旅するだけで一苦労だったわ。




旅する間オレの領土について調べてみた。




旧ヴィリアーズ領 ヴィリアーズ領伯爵が治めていた領地。


伯爵は先の魔族との戦争で命を落としている


伯爵には嫡子がいなく親戚も領地の相続を拒否しているためヴィリアーズ家は断絶。




そこに褒美としてオレが領主となった。


この星は緑豊かな土地で、人口約60万人。 


地表の表面の役70%が海に覆われている。その星を映像で見た時、地球に似ていた。




また資料には旧魔法王国の遺跡も多数存在しており、手つかずの土地も多数あった。


これら全てがオレのものになったんだ。


領主になってなにをやるか?


決まってる 美女を集めてハーレム作るのさ!


美味いもん食って酒飲んで! あとついでに地球解放するか。




ぐふふ、地球も解放したら、地球もオレのものになるのかなぁ?


「なに気持ち悪い顔してるの?酔ったの?吐くの?トイレ行きなさいよね」


ミタマがシャンパンを飲みながらからんでくる。酒臭い。


当然のようにミタマもついてきた。




宇宙港からチェックを受けるが…さんざん待たされた。係のおっさんはめんどくさく対応してくるし、やる気がない…オレここの領主だぞ。というか宇宙港事態がなんか汚い 行き届いてないというか活気がない。




帝都の宇宙港とは大違いだ。




オレが新しい領主だとわかるとすんなりと通してくれた。へこへこ頭を下げて。


「うむ、苦しゅうない」




宇宙港から軌道エレベーターから地表に降りる。外の様子が見れて、緑豊かな星だとわかる。




自分の領地に降り立った瞬間、オレは少ない荷物を落として唖然とした。


なんもない…街はさびれ、あちこちに落書きがされている。活気もなく領民は酒を飲むか…あきらかにやばい薬をやって半狂乱に騒いでる住民もいる。それを取り締まる警察の姿なく、街並みは昔TVでみた西部劇に出てきそうな街だった。




「なんじゃこりゃぁああああ!?」




「八神一真様でいらっしゃいますか?」


声がした方を振り向くと リムジンの前で老紳士がオレを見ていた。


「私、ヴィリアーズ家に仕えていた執事のセバスと申します。帝国より、八神様にお仕えするよう仰せつかまつり、お屋敷までご案内に参上いたしました。


どうか私めの事はセバスとお呼びください」




そう言うとセバスと名乗った老紳士は頭を垂れた。


セバスの用意した車に乗ると、街並みを見ながらオレは屋敷に向かった。


「ひっどいあり様ねぇ 私、贅沢できると思って来たんですけど」


ミタマは思った事を言った。


「申し訳ありません ヴィリアーズ伯爵様は領地経営にあまり興味をお示しになりませんでした。」


セバスの説明では前領主は領民から絞るだけ税を絞り、贅沢三昧だったらしい。




遊び惚けていたらしいが 魔族との戦争は義務なので渋々参戦していたらしいが運悪く戦死。


こんな荒れ果てた領土、誰も受け継がずほっとかれたそうだ。


しかも借金だらけで借金取りが度々この星に来るらしい。


ちきしょう!そんな土地をよこしやがった!




大きな屋敷が見えてきた。見栄だけは立派でこれも全て領民から絞った税金の塊なんだろうな…。


すでに借金取りにめぼしい財産、調度品など持っていかれてるらしく、でかいわりにメイドも一人しかおらず皆辞めていったそうだ。




他にも別荘も複数あるが、どれもこれも放置されているようだ。




豪華な扉を抜けると車は止まり。オレは車から出るとその屋敷の大きさに圧倒された。


「これアリスの家よりでかいんじゃ」


オレがぽつりと言う。




すると一人のメイドが近づいてきて…


「旦那様、お帰りなさいませ」


とカーテシーでオレたちを出迎える。


眼鏡をかけ黒髪をポニーテールでまとめた十代後半から二十代前半の女性。


「シルフィと申します。当家に残ってくれたメイドです。」


とセバスに紹介された。




旦那様…旦那様…旦那様…シルフィの声がオレの中でエコーとなって何度も再生される。


…いい。




屋敷内に入ると掃除も行き届いていた、 こんなに広いのに彼女一人が掃除してるんだろうか?


聞いてみると掃除ロボがいるので、と返された。


まぁ そりゃそうか。




「シルフィさんはなんでこの屋敷に残ってくれたの?」


なにげに聞いてみた。


シルフィとお呼びください旦那様と彼女は言った。


「私は孤児で行くところもありません。」




おっと場が重くなったぞ。そのままオレたちは無言で進んだ。


屋敷内には庭もあり、綺麗な花と噴水があったり、無駄に広い廊下だったり、こういう所に領民の税金が使われてるのかなぁ?




オレたちは執務室に案内された。セバスが紅茶とお茶菓子を用意してくれたのでお茶を飲んで一息つく。




「申し訳ございません、ご当主様にこのような茶葉しかご用意できず」


セバスは謝ってくる。


「十分美味しいけど」




「お菓子もおいしいわよ」


ぼりぼりとお茶菓子を食べるミタマ。


「お菓子はシルフィのお手製でして…」


まじですか!美少女の手作りのお菓子!貴重じゃないか!


「おい よこせオレにも食べさせろ」


「あっちょっと! 一つぐらい分けてあげるわよ!」


「全部食うなよ!」


ぎゃーぎゃーわめくオレたちを見て苦笑するセバスとくすっと笑うシルフィ。




「一真様 申し上げにくい事なのですが…」


セバスが今の財政状況を説明した。なんとも事前に調べてはいたが、それ以上に最悪だった。


見栄のための軍拡。地方領主なのに五万もの私設軍隊を有し、そのすべてが中古の戦艦、クルーに至ってはそこら辺から集めてきたごろつき紛いの奴ら、しかもそいつらは地上に降りてきて悪さする始末。




取り締まろうにもその警察事態が腐敗し、軍人たちと結託して悪さをするという。


官僚も横領が蔓延している。膨大な軍事費はすべて民衆からの重税。


インフラ整備など進んでいなく、学校や病院などもほとんどなく行政サービスも滞っている。




唯一救いがあるとすれば、先の大戦で領主と共に戦場に赴いた三万もの軍が消滅したことか 領主が死んだ事で逃げたのが大半だという。




「ですがそのほとんどが今や宇宙海賊になり当家領土を荒らしまくっています」


どれもこれも頭の痛い話ばかりだ…領地経営などしたことないオレにどうしろと?




おまけに借金まみれ。


譜代の家臣や騎士もいない…ミタマは…リスのようにお菓子を食べている。




「まずは信頼のおける家臣を見つける事です。」


帝都にいた時にアリスとアリスパパに言われた事だった。


魔王討伐をなした勇者のオレに向こうの方から家来にしてくれという者たちが集まるだろうと…




しかしオレの名声に集まるのはいい事だがその名声のおこぼれに預かろうとする者がほとんどなのだから誰もかれもと家臣にしてはいけないと言っていたな…人を見る目を養わないと…とか。 そんなんどうすればいいのよ






うん こりゃ無理だ。


トントンとドアをノックする音が聞こえ、シルフィがドアを開ける。


そこには狐耳に尻尾を持った小さな金髪の女の子がいた。


和服を思わせる服装に可愛らしい幼い顔つき。


「君は…」




「お久しぶりです。勇者様」


魔王ドゥルガーの戦艦に奴隷としていた子。名を天狐と言ったか。


九尾の一族。身体的に強くはないが、魔力は絶大、美男美女の一族で魔族の中には九尾を食らえば魔力が上がるとして乱獲にあっていたという。


一族は隠里に身を隠していたが、ドゥルガーに見つかり、長である彼女の母は目の前で食われたという。


食らっても魔力は上がらないので奴隷として観賞用としてまた拷問をして楽しむため飼われていた…




オレが助けた時、酷いあり様だったが、帝国に身柄を預けていたのだが…今帝国も捕虜やら復興で忙しく、また本人たちも望んだ事でオレの領土に来ていたそうだ。移民として…


今、一族の新しい長として彼女 玉藻は領主であるオレに会いに来たらしい。




「八神一真様、どうか我ら一族を配下にお加えください。天地神明に誓って忠誠を尽くします。」


天狐はその場で膝まづいた。




この子はこんなに小さいのに一族を背負っているのか…。


おれは彼女の肩に手をおき…


「もちろんだよ」そして




「君…政治とかできる?」




泣きながらオレはロリに救いを求めた。


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