第7話 帝都

ー帝都ー 


人類が生息する国家で最大の版図を誇り、強大な軍事国家である。首都星となると


テクノロジーの粋を凝らし、気象すらも管理し、その星そのものが皇帝の城と言っても過言ではなかった。


数多の貴族たちが帝都に住みたがり、領地の支配は代官を派遣し、放置する貴族も珍しくない。


人口は数百億にも昇る。




アリスの領地から船に乗り、ワープを何度かしても帝都につくには一週間かかった。


宇宙港で簡単なチェックをし起動エレベーターで帝都に降り立ったオレは、その圧倒的に発展した街に圧巻された。


「すっげぇ…」


見渡す限りのビル。 人込み。言ってはいけないがアリスの所とは…


「あんたの所とは全然違うわねぇ」




「おい!正直すぎるだろ!」


ミタマの言葉にオレは突っ込まざるえなかった。 後ろでひきつきながら笑みを崩さないアリス。


「お嬢様 こちらでございます。」




黒服に身を包んだ男たちが車まで案内してきた。


アリスの家の人たちがすでに待機していたらしい。




勲章授与は明日、今日はアリスの帝都での屋敷で過ごす予定だ。




式典当日、オレはアリスから借りた衣装に身を包み、執事さんからチェックを受けた。




ミコトも普段の巫女装束ではなくドレスを着ていた。その姿に見とれてしまった。


「ねぇ~まだ始まらないの?飽きてきたんだけど 早く終わらせて帝都に遊びに行きましょうよ」


中身は変わらなかった。




てか昨日さんざん遊んだと思うんだが、屋敷抜け出して歓楽街へと赴いたんだが…もちろんアリスお嬢様のツケで。




屋敷を出る時刻になりオレ、ミタマ、アリスは宮殿へと向かう。今日乗る車はオープンカーなのね。先導する車と警護の車が付いてくる。随分と仰々しいな。




車が走ると風がきもちいい。


んっ?突如上空になにかが過ぎ去り光を遮り影を作った。


見ると…機動装甲騎だ ビームフラッグ。 背中から光の旗をたなびかせ六機で編隊を組み飛んでいる 旗は帝国の紋章だ。






あれ?道の両脇に群衆ができ、なぜかオレに手を振って黄色い歓声をあげている。


「勇者さまぁ!」


「こっち向いてぇ!」




ん~???


オレの顔をホログラムが映し出しあちこちに映像を流している。




「皆、一真さんを歓迎しているのですよ」


アリスがそう言った。


まじですか? 地竜討伐はそんなに凄い事なんだ。


後で自作の地竜討伐動画をTV会社に送ろうかな。




なんか気恥ずかしいが群衆に向けて、オレは手を振る。


きゃ~っと黄色い歓声が大きくなる。




「ねぇ 私の顔がないんだけど」


ホログラム映像に自分の顔がないのが不満らしい。


ミタマは文句を言ってくるが、 ぼんっぼんっと花火まで打ち上がってるので聞こえないふりをしよう。






式典会場


オレは遠くに見える皇帝陛下を見て一人立っていた。正直見えない。遠すぎる。 立体映像が映し出され長い挨拶を延々聞かされる。まずい、これ校長の長い話と同じだ。地球にいた頃から校長の話など聞いていなかったオレだ、皇帝陛下が豆粒のように遠くで話が入ってこない。勲章授与されたがなんと皇女殿下直々に胸につけてくれた。


やべっいい匂いがする…にこりと微笑む皇女。


最初に映像で見た感じと雰囲気が違うな…


「皆、今日という日を称えよ!勇者は我らと共にあり!この後、魔王討伐に赴く!我らに女神の祝福を!」




皇帝の声がひと際大きくなり、列席している貴族、民衆の歓声が轟いた。




ーんっ?まおうとうばつにおもむく…んっ?




その光景を式典会場が見渡せるビルで見ていた男がいる。


帝国宰相…彼はつぶやく。




「うまく戦意高揚に繋げたか…」


敗戦ムードは国の衰退に繋がる。勇者を使った効果は今だ健在か…


当然批判もあるが、群衆の中にサクラを忍ばせ群衆を誘導する。全て皇女の差し金だろうな。


そもそも今回の勲章授与事態、彼女の発案なのだ。急な事でスケジュールなどかなり無理やりにねじ込んだらしい。


皇帝の列席を叶えるなど陛下も娘には甘いようだ…。


宰相の中で皇女の評価が一つ上がる。




だがっどうするのだ?あの弱い勇者では魔王打倒できまい。




なにかしら策があるのだろうが…皇女のお手並み拝見といこうか。


宰相はそれきり考えるのを止め、執務に取り組んだ。


「ちょっと!どいう事だよ!聞いてないぞオレは!」


式典がいつの間にか終わり控室でオレはアリスに詰め寄っていた。


皇帝の話を聞いて放心状態だったらしい。




「今のオレで魔王と戦えなんて無理だろっ!死ねって言ってるようなもんじゃん!」


駄々をこねるように地面に倒れ伏して手足をじたばたする。だって無理じゃん!


そんなオレを優しく抱きしめ、頭をなで慰めるミタマ。


「大丈夫よ一真ならできるわ。ほら名言にもあるじゃない 当たって砕けろって」


「砕けてんじゃん!」




「今回皇女殿下自ら、艦隊を率いて出陣されます。戦うわけではなく、戦場で戦う兵たち騎士たちを鼓舞するためです。きっと一真さんも戦意高揚のために一緒に行こうという事だと思います。」


アリスはそう言うが…


「ほんとに?」


「あー…はい」


眼をそらした。






「いやだぁああああああああああああああああああ!」


数日後、オレは皇女殿下が率いる一万の艦隊 旗艦の中にいた。


出陣式は盛大に行われ、皇女殿下は軍服に身を包みマントをなびかせ、さっそうと戦艦に乗り込んでいった。


黒服に両脇を抱えられ放心状態のオレを伴って。


ちきしょう 逃げようとしても黒服が見張ってるし、脱走してもすぐ捕まる。




今はオレにあてがわれた部屋にいる。監視付きで。


「ロン!」


「二倍約万! 大三元字一色!」


雀卓を囲んでミタマが叫ぶ。


「サンマだからってそんな手あるぅ!?」


「殿下!もっとお上品に!」


アリスとなぜか皇女様まで麻雀してるし…


「もう一回よもう一回!」


「九連宝燈」


「うそ…」




「お前ら少しはオレの心配しろよ!」


「してるしてるー だから一緒にいるんじゃん」


麻雀しながら言うな てか監視だろうが。




「くそっ皇女まで猫かぶってキャラ作っていたとは…」


「結構、姫やるのもめどくさいのよねぇ 立場ってものがあるから」


「あーわかります。 お嬢様って一々礼儀作法とか色々ありますし」


「みんな外見に騙されるのよねぇ 女の子に夢見すぎ」




セシリアはここ数日 一真たちと過ごし、いつも付けている皇女としての仮面を脱いでる自分に気づいた。居心地がよかったのだ。


立場や権力闘争の中で生きてきて、隙を作れば付け込まれる世界が当たり前の後宮、そんな世界しか知らないセシリアにとって感情丸出しの一真たちの生き方は新鮮だった。




「大丈夫よー、一真殿 今回の遠征は皆を鼓舞するためのもの。私が行けば皆悦びますから ちょろいですね」


こわっこの子怖いわっ!




「それに戦う事になっても…」


そこまで言うとセシリアは会話を変えた。


「そうだ!一真殿専用の機動装甲騎を用意しましたよ」




「まじで”!?見に行く!」




戦艦内にある機動装甲騎専用のドッグに来た。整備士がずらりと並んだ機動装甲騎を整備している。まさにそこは巨人の住まう場所。その奥にオレ専用機はあった。


「…ていうかボロいね」


ミタマがぽつりと言う。




「クラシックと言うのでは…」


アリスがフォローするが…フォローになってないよ!




見た目に整備されてないというのがわかる。装甲はつぎはぎ防御力は高いように見えるが…これでかいな


…全長は25メートルぐらいあるのか?全身黒づくめ…というかカラーリングすらしてないのか




「帝国よりも前の時代 魔法王国全盛期に作られた物だそうです。」


皇女殿下がメイドと共に遅れてドックに現れると整備士たちや騎士たち兵士も手を止め騎士礼・敬礼する。


手を上げ仕事を再開するよう命じると皆作業に戻る。




魔法王国 テクノロジーよりも魔法に重きを置いた国で帝国よりも前に存在した国。そこで作られたゴーレムが機動装甲騎の基本となったらしい。失われた技術で作られたゴーレムや魔法王国の秘宝は今のテクノロジーすら凌駕すると言われているらしい。




「名前すらない倉庫に置いてあったものですが、動きますよ」


ほっといても動くのが凄いと皇女様は言う。




普段のオレならこんなボロいの嫌だ!と駄々をこねるのだが…なぜだろう?こいつに惹かれるものがある。


「乗ってみていいか?」


うなづく皇女。


コックピットハッチが開きオレは中に入る 暗かったコックピット内が明るくなり、


操縦桿を握ると同時に全周囲のモニターが開き外の様子を映像で見せてくれる。


外の見た目とは違い、中回りは整備されてるようだ。


ツインアイが光り、 脈打つように縮退炉が機動する、


「…いいね!気に入った!」




「班長…この機体ってこんなにエネルギーゲインありましたっけ?」


整備員が端末を使い機体の状況を調べ整備班長に報告している。


「通常の…五倍だと…計器の故障じゃないのか?」




「古代魔法王国の遺物にはまだ解明されていない部分も多いってことかしら」


皇女がつぶやいた。




艦内時間で夜となって人もいなくなったドッグにミタマはいた。


先ほどの一真専用になった機動装甲騎の前にいる。


「…そう お前もあの子を気にいったの…うれしいわ」


一人そう語る。


「お前に女神の祝福を…」


桜色の光を纏ったミタマは名もなき機動装甲騎に祝福を与えた。


「あら?…」


ミタマはある違和感に気づいた。


「あの皇女様 随分酷い事を考えるわね。」




オレは一人部屋のベッドに寝転んで自分のステータスを確認する。


レベル25


地竜討伐でレベルは上がったが、魔王を倒せるとは思えない…、


(はぁ ため息をつく 皇女は戦う事はないだろうと言っていたが戦場でなにが起こるかわからないしなぁ


んっ?新しいスキルを覚えてる…オレはどんな効果か確認した。










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