進化


化物に襲われて、拠点へとすごすごと帰ってきた俺は、奴について考察していた。


恐らくだが、奴が俺を追わなくなったのは、あの途中でぶつかった猿を俺だと思って、喰って満足していたからのだと思う。


じゃないと、あの執念深さで諦めるとか無いだろ。


『絶対に喰ってやる』という意志を感じた。



あの化物が居るとするなら、森で地道に強くなるというプランにかなりヒビが入ってしまう。


…倒すか…?


いやー…でも、謎鹿の俺には無理じゃないか…?

あの化物は。


相手のステータスが分からないが、明らかにレベルとかステータスがボロ負けしているだろう。

気が滅入る…。


やることも無く、手持ち無沙汰なので、とりあえずステータスを開いてみる。



____________________________________

種族:ストーンディア【変異種:晶】 ▼


状態:無


Lv:15/15 進化可能


HP:28/33

MP:26/29


STR:28

DEF:77

INT:35

AGI:76


ユニークスキル

「水晶の輝き」


スキル

「敵感知Lv7」 「疾走Lv4」 「頭突Lv4」

称号

大いなる迷い子

特殊変異種

脱兎

ヘッドスラム

______________________________________



…?あっ!?

いつの間にかレベルアップし……あの猿か!


逃走中に、目の間に現れたあの猿だが、吹き飛ばした拍子に仕留めていたらしい。


レベルアップのアナウンス、全然聞こえなかったな…。

それだけ、切羽詰まっていたんだな…。


それと気になるのは…。

己を主張するかのように明滅している『進化可能』の文字。



懸念事項として、レベルの上限に到達した時に打ち止めになるのか、それとも何かしらの物があるのかと考えていたが、進化とはな…。

確か、《大いなる迷い子》の効果に『進化』という記述があった、恐らくこのレベル上限に達した時に起こる物を指す言葉だったのだろう。


少しワクワクしながら、明滅している『進化可能』を押す。


すると、選択肢の様な画面が目の前に現れた。


___________________________________


【進化可能一覧】


種族:アイアンディア ▼


種族:マッドホース ▼


種族:魔眼鹿 ▼


____________________________________



お…!これは…自分で選べるのか!


進化先は3つあるようで、パッと見て気になる物しか無いので、手早く詳細を見てみようと思う。



_______________________________________


種族:アイアンディア ▼

【詳細】

魔獣系

好戦的なストーンディアが、戦いの果てに身体を鉄に進化させた姿。

獰猛さが増大し、動く物を見つけ次第襲い掛かる。


______________________________________


これは、正当進化っぽいな。

かなり強そうだが、特殊個体の俺が進化した場合は更にガッチガチになるのだろうか…。

うーん、防御力は奴を相手にすると考えたら、あまり意味が有るとは思えない、全部溶かされてしまいそうだ。



よし、次は


______________________________________


種族:マッドホース ▼

【詳細】

魔獣系

泥の様な粘膜を纏った馬。気性は穏やか。

粘度の高い泥で、襲いかかる外敵を絡めとる。

マッドホースが居る土地は、良い土壌だとされる。

______________________________________


馬…馬!?

俺、馬になれるのか?!


正直、結構良い様な気もする、鹿よりはパワーが有りそうな感じもある。

泥だらけなのは、ちょっとアレだけど、説明文にも人間に積極的に襲われている感じはしない。


正直、かなり惹かれている。


とりあえず、一番気になる次を見ておこう。


______________________________________


種族:魔眼鹿 ▼

【詳細】

魔獣系

額に魔眼を持つ鹿。非常に臆病な性格。

その魔眼は相手を見抜き、清き心を持つ者の前にしか現れないと、とある地方で伝承になっている。


______________________________________


正直、魔眼鹿が一番気になっている。


額に目が増えるのは、グロテスクに見えるかもしれないけど、戦闘を思えば利点も多いだろう。


後は…普通に魔眼が気になる。


説明を見る限り、あまり攻撃的な魔眼では無いさそう…か?


いや、人になるって意味では、魔法的な種族に近づくのは全然有りだ。


それと、もし人に出会う事があれば、友好的な種族である方が良い。


そういう意味では、マッドホースも有りだとは思うが…。


……いや、


心のうちでは、もう決まっている。


長く悩めば良いというワケでもないだろうし。


息を吐いて、「敵感知」を付ける。

進化がどのように行われるか、全く分からない。

気を付けるに越したことはない。



俺は、『魔眼鹿』を押した。



《『魔眼鹿』に進化しますか?》


YES/NO



再確認があると悩んでしまう所だが一息にYESを押す。



《進化終了まで、意識の喪失が行われます。》

《『魔眼鹿』に進化を開始します。》


え、マジ?

気絶するのは聞いてない…。


幸い意識はまだ有るので、出来るだけ壁際に寄った所で、



アッ、頭痛っ!痛たたたた!!

ふざけ…!!おい!全部!事前に!起こる事!書いとけ――よ―――……



強烈な頭痛の中、俺の意識は闇の中に消えていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る