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先が見えている。
それは、もう間もなく自分の歩みが止まる事を、直感していた。
一度倒れたら、もう動けなくなる事も。
何故って、動く理由が無いからだ。
産んでくれた者は、少し前まで樹の上から糧を投げ落としてくれた。
けれどいつの間にか、いなくなってしまった。
力を使い果たし、樹上に登って食べ物を手に入れる当てもなく、
ならば、苦難に喘ぎながら無理矢理身を起こしても、何の意味も無いのだ。
ああそれでも、まだ分からない。
もしかしたらそうなる前に、絶好の餌食を見つけた捕食者が、ほぼ無抵抗なそれを貪り食うのかもしれないから。
けれど、同じだ。
先が見えていると言っていいくらい、同じ話なのだ。
足裏の感覚が、ようやく気にならなくなってきた。
ただし、力が入らなくなった。
もう一瞬でも自重を持ち上げ浮かせる事なんて、出来そうになかった。
視界が霞み、狭まっていく。
地には何も落ちていない。
ただ成れ果て達が、柔らかに積もっているだけだった。
何も、
そう、何も無かった。
何故ならば、目ぼしい物は食い尽くされたのだから。
役を終えたと思われた餌場に、「目ぼしい物」が向こうから歩いて来た。
目か、鼻か、耳か。
何かで勘付いた者達が、舌なめずりをしながら、足を忍ばせ寄りつつあった。
その様を、
徐々に囲まれているその状況を俯瞰すれば、
既に
先が見えている。
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