第2話 知覚

「えっ、じゃあ私達みんな…」

「そんなのいやだよぉ」

細身の映像の男は手のひらを2人に向けた。

『まだ手遅れじゃない、今なら鍋から逃げる事だって、みんなで火を消すことだってできるんだ。でも…』

「「でも…?」」

『暖かい鍋から逃げた先は寒いかもしれない、とか、火を消したら水が冷たくなるから火をけしちゃダメだ!と言うかえるがいるんだ』

2人は首を捻った。

「なんで?このままじゃ危ないのに…」

「早く火を消そうよ!」

細身の映像の男は首を横に振り続けた。

『話は少し変わるけど、2人の学校は児童は何人いるの?』

「10人だよ」

『君たちは同級生だね?」

「そうだよ、お母さんにあんた達はラッキーだったねって言われるー」

細身の映像の男は節目がちに続けた

『掃除当番は週に何回ある?』

「週1回、太郎とペアでやってるよ」

『もし児童が5人になったら?』

「そしたら1人でやらなきゃだねー」

『もし児童が3人になったら?』

「週によって2回やらなきゃダメ?しかも1人で…」

「うわー、イヤだなー」

細身の映像の男は少し間を空けて話した。


『これが日本のとても大きな問題、すなわち【少子化】だよ』



「当番が増えるのやだなぁ…。あっ、でも僕たちはまだ大丈夫だよね?」

細身の映像の男は首を横に振った。

『太郎君、当番の話だけじゃないんだよ。今僕たちがいる川の橋、これを作ったり直したりするのに、君たちのお父さんお母さんが働いて払っている税金っていうお金が使われている。今ならまだ人が多いから例えばひとり1000円を集めれば修理が出来るけど、君たちが大人になるころにはひとり2000円、もっとかかるかも知れないんだ。』

2人は驚いた。

「この橋って僕らのお父さんお母さんのお金で作ってたの?!」

『橋だけじゃない。君たちの行ってる小学校、図書館や博物館、道路やその道路の草を刈るのにだって税金が使われているんだ。』

「つまり私達が大人になったら、その税金ってお金を今よりいっぱい払わないとダメって事?お父さん最近税金が高くなったって、ため息ついてたのに…」

細身の映像の男は悲しそうに頷いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る