第3話 朝

眠い目を擦りながら体を起こす、結局昨日は、部屋に戻ってすぐに眠りについた、時計を見てみると針は8時を指していた。

「約束の時間はたしか9時だったっけな、、、」

ベットから起き上がり窓を開ける。外は雲ひとつない晴天だ、ちょっと買い物に行くには暑すぎるくらいだろうか、、、洗面所へ向かい、顔を洗う。シャロンと出かけるのだから、いつもよりも念入りに身嗜みを整えなければ、、、髪を濡らし乾かしワックスをつけ終え部屋に戻る。

「何着てくか、、、、」

服選びは重要だ、季節感を取り入れつつ目的にあった服装をする、相手によって変えるのもポイントだ、シャロンのような姫様と買い物に行く場合は堅苦しすぎないがラフすぎるわけでもない絶妙なラインを選ばねばならない、シャロンの隣を歩くのだ、ダサい格好ではいけない。

「と、なるとこれかな、、、」

無難に白のスラックスに水色の半袖のワイシャツを選んだ。困ったら色付きのYシャツに柄物のネクタイをしとけば何とかなる。そうこう考えているうちに支度を終え時計を見てみるとすでに8時45分になっていた。今出るとちょっと早い気がするが、早すぎて困ることはない。と、思い部屋を出る。朝ごはんを食べていないが、街の方で食べたいから食べてこないでね、とシャロンから言われている。しかし、今から街へ向かうのだから、朝食を食べるのは10時くらいになるだろう。それでは少し遅すぎて昼食が食べれないんじゃないかと思っていると、シャロンの部屋が見えてきたのだが、メイドさんたちが何やら集まっている。

「どうしたんですか?」

「おや、ルカさん、、、おはようございます。お早いですね。」

「おはようございます」

メイド数名を分けて出てきたのは、メイド長のアリサさんだった。アリサさんはこの城の中で一番長くいるメイドらしく、数百人のメイドを束ねるエリートメイドさんらしい。見た目は40代くらいにみえるが、すでに70近い年齢だそうだ。しかし、噂によると、そこらへんの近衛兵などよりも強いらしく、もともと暗殺者として働いてたという真偽不明の噂が流れている。

「どうしたんですか、朝から?」

「いえ、別に大したことありませんよ。姫様が今日のお出かけに着ていく服を選ぶために、メイド数名と議論をなされているのですよ。」

「服選びに大袈裟ですね、、、」

「そんなことありません。年頃の乙女とは、服を選ぶのにも一苦労するものですよ、、、、ましてそれが意中のあいてならば、、、ね、、、」

アリサさんが後半何を言っていたのかは、聞こえなかったが。女性の服選びがとても大変なことだというのはわかった。

「ばあや!きまりましたわ!」

メイドさんたちをかき分けシャロンが自信満々な顔をしながら出てくる。

「おやおや、とてもお似合いですよ、、、ねっ、ルカさん?」

アリサさんが何か言ってやれと言わんばかりに話を振ってくる。

「そうですね、とても似合っていてかわいいですよ。」

ここはとりあえず褒めなくては、と思い、見たものを思ったままに話すとシャロンは俺がいることに気付いていなかったらしく変な声をあげながら顔を真っ赤にしていた。

「ル、ルカ、、、い、いつからいたの!?、、、」

「シャロンがメイドさんたちと服を選んでるところあたりから?」

「い、いるなら、いるっていいなさいよ!」

「そんなこと言われても、、、」

「まあまあ姫様、ルカさんも可愛いとおしゃってくれてますし、、、」

「そ、そうだけど、、、サプライズで見せたかったのに、、、」

またもや何を言っているかは、聞こえなかったが、機嫌を戻してくれたようなのでよかった。

「姫様、あまりゆっくりしていらすとお昼になってしまいますよ。」

「え〜、まだ9時になったばかりでしょう。」

「そうですが、むこうで御朝食を取られるのでは?」

「たしかに、、そうですわね、、、ルカ急ぎますわよ!」

「えっ?、、」

なにかを思い出したかのようにシャロンは急ぎだし俺の手を引っ張っていった。

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