1310 素直ちゃんは被害者であって加害者であってはならない
完全に和解出来た訳ではないが。
由佳ちゃんや伊藤さんのお陰で、なんとか卒業を認めて貰える状態には成ったのだが。
そんなみんなの態度に感銘を受けた素直ちゃんが、本当の脱退理由を話そうとするので……
***
「良いよ、素直ちゃん!!言いたく無い事なんて、誰にだって有るんだから!!無理してまで言う必要なんてないよ!!」
「うぅん。言わなくて良くても、言わなきゃイケナイ事もある。僕は、これがそれだと思う。だから、眞子ちゃんは黙ってて」
「……素直ちゃん。ダメだよ。それだけは言っちゃダメだよ」
「良いんだよ、眞子ちゃん。こんなにも、みんなが心配してくれてるのに。僕は、ただ、真琴君が作った『3B-GUILDに居るのが辛い』ってだけの理由で辞めたい卑怯な人間だから。本当の理由は、それだけなの……ごめんなさい」
マズイなぁ。
コレは本格的に、マズイ展開だよ。
素直ちゃん、本音で話すのは良いけど。
その言葉選びが、あまりにも杜撰すぎて、寧ろ、伝えるべき事がなにも伝わってないよ……
「そんな理由?……そんな理由で、3B-GUILDを捨てるって言うの?私達を見捨てるって言うの」
「ごめん……なさい」
「ふざけないでよ!!そりゃあ、素直が、3B-GUILDを此処まで引っ張って来てくれた恩が有るから『やりたい事が有るから辞める』んだったら、私も納得は出来る!!けど、なに、その理由?好きだった男が作ったユニットだから辞めたい?ふざけるのも大概にしなよ!!私達の事を、なんだと思ってるのよ!!」
そりゃあ、そうなるよね。
そう思われても当然だよね。
伊藤さんが激怒する気持ちも、よく解るよ。
私も面と向かって、そう言われたら、きっと、そう思わざるを得ないと思うし。
話の内容を、ある程度理解している由佳ちゃんでさえ、この素直ちゃんの発言には茫然としてしまっているからね。
でも、それが解っているなら、なんとか良い言葉を紡いで素直ちゃんのフォローを上手くしなくちゃ。
これは元を正せば、真琴ちゃんだった時の私がハッキリしなかったのが原因。
だからこれだけは、今の真琴ちゃんには責任は無く、私だけの責任だから。
「待って!!」
「待たない!!絶対に待たない!!こんな理由、誰がなんと言っても許さない!!」
「でも、待って!!これは、私が仕出かした下手打ち!!責任は素直ちゃんには無いから!!黙ってる訳にはイカナイ!!」
「はぁ?こんなの、どう考えても、素直の自分勝手な我儘じゃない。眞子ちゃんは関係ないでしょ!!」
「有る。……有るんだよ、それが。素直ちゃんが、こうなってしまったのには、全部、私に責任があるんだよ」
「舞歌。ちょっと待った。取り敢えずは眞子ちゃんの話を聞こ。このまま怒った所で、なにも解決しないし。こんな状態で、観客の前に立つ訳にはイカナイからさ」
「嫌よ!!納得出来無いモノは、なにを聞かされても納得出来無い!!そんなんじゃ収まりが付く訳ないでしょ」
「舞歌。お願いだから、眞子ちゃんの話を聞いてあげてよ」
由佳ちゃんがフォローをしてくれてる。
そうしてくれるのは、多分、納得出来ない也にも、前以て素直ちゃんと話し合ってくれたからだろう。
ありがとう。
「あぁ……ッ!!もぉ良いわよ。由佳が、そこまで言うなら眞子ちゃんの話は聞いてあげるわよ。但し、それが納得出来無い様なショボイ内容だったら、今日のステージには、素直を絶対に上がらせないからね。絶対に!!」
「……舞歌」
「良いよ。その点については、素直ちゃんに罪がなく、私だけが悪いって事をキッチリと証明してあげる。それで納得出来たら、私を煮るなり焼くなり好きにすれば良い。これは私だけの責任なんだから」
「違ッ!!眞子ちゃんは、なにも関係……」
「黙って。当事者のフリなんてされて、同情されるのは真っ平ゴメンだわ。素直ちゃんが、私を庇う必要なんて無いの。自分の不始末ぐらい、自分で責任を取るから」
これで少しは、怒りの矛先が素直ちゃんから、私の方に向いた筈だ。
後は、この問題を、どう処理するかだけの問題だね。
「ちょっと眞子ちゃん。それって、どう言う……」
「私がね。私が、素直ちゃんの『やりたい事』を奪ったんだよ」
「えっ?奪った?ちょっと、それって、本当にどういう事なの?」
「簡単な事だよ。素直ちゃんは、真琴ちゃんとバンドを組もうと思って、3B-GUILDの卒業を言い出したんだけど、それを私が、素直ちゃんの、真琴ちゃんへの恋心を潰して、そのやりたい事を奪った。その結果が、こうなっただけ。だから、素直ちゃんは被害者であって、加害者ではないって事。全部、私の責任なのよ」
なんとか思考速度を上げて、素直ちゃんを正当化してみたけど。
どぉかな?
上手く行ったかな?
「意味は解るけど。なんで眞子ちゃんが、そんな真似をする必要が有ったのよ?」
「解んないかなぁ?奈緒ネェと、真琴ちゃんの為だよ」
「向井さんと、倉津君の為?」
「そぉ。私は、奈緒ネェと真琴ちゃんの関係を脅かす人間は、誰であっても許さない。だから、その幸せを崩そうとしている素直ちゃんが邪魔だから、素直ちゃんの恋心を潰させて貰っただけ。それだけの事だけど」
これで良い。
現実的に見れば、こう言う捉え方もあるんだから、強ち間違っては居ないと思う。
寧ろ、都合の良い方向に捉えるより、こう言った方が、誰が悪いのか解るからハッキリするとも思われる。
現に私は……あの時の素直ちゃんの『辞める覚悟』知っていて、そうしたんだから、言い訳をする必要なんてなにもないしね。
だから、これが正解だと思う。
「それは違うよ。眞子ちゃんは……」
「違わない。素直ちゃん。私に幻想を抱くのは結構だけどね。私は、そう言う人間じゃないの。本当の事を言えば、崇秀さんと、奈緒ネェと、真琴ちゃん以外は、どうだって良いとすら思ってるの。勘違いしないでね」
そんな風に私がハッキリと言い切ったもんだから、周囲がザワついてるね。
まぁ、これは当然の結果だね。
ふぅ……それにしても、自分が巻いた種とは言え、恐ろしい様なシッペ返しが返って来たもんだね。
これじゃあ、好感度も糞もあったもんじゃない。
けどまぁ、これは、これで良い勉強に成ったよ。
『何事に対しても、もっとバランスを取って行動しなきゃいけない』……ってね。
なんて言っても、もっと早くに、この事態に気付き。
それを収束させて置けば、此処まで傷口は広くならなかった筈だからね。
これは、事後処理を怠った愚か者の末路って処だね。
「違う。……違うよ、みんな。眞子ちゃんは、そう言う人じゃないよ。僕を庇ってるだけだよ。お願い誤解しないで……」
フォローしてくれて、ありがとう。
でもね。
本当は、そんな事もしなくても良いんだよ。
現実の話だからね。
この話に至っては、素直ちゃんがフォローする必要はない。
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【後書き】
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>
素直ちゃんを庇う為に、眞子が無理矢理その罪を被った様なのですが。
見解自体は、そこまで間違っていないのかもしれませんね。
現実的な話、この後のライブの事を考えれば。
メインメンバーである素直ちゃんが抜けるより、まだゲストとして発表すらされていない眞子では、どちらが抜けるべきなのかは明白ですしね。
……っとは言え。
流石にこんな話を聞かされたんじゃ、3B-GUILDの面々も、眞子に対する疑念が沸いてしまうかもしれませんがね。
さてさて、そんな中。
3B-GUILDの面々は、こんな眞子に対して、どの様な反応を見せるのか?
次回は、その辺を書いて行こうと思いますので。
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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