1297 普段は天然な運命ちゃんを勧誘するのには……
誰もが目を疑う様な恐ろしい様な実力を持って、眞子にダンスを教える運命ちゃん。
そんな彼女の下に……
***
「うわ~~~、運命ちん、可愛い。ヤバイって」
「あっ……あぁ……」
伊藤さんが、満面の笑顔でコチラにやって来た……のは良いんだけど。
あらら、練習前に誤解が解けて和解したにも拘らず。
話し掛けて来た伊藤さんには、まだ、さっきの恐怖感が拭え切れてないみたいだね。
運命は、少し怯えた様な感じで、私の後ろに隠れちゃった。
大丈夫、怖くないから。
もぉ伊藤さんも、言葉で噛み付いて来ないと思うし。
「あぁ、大丈夫だよ。伊藤さんは噛み付かないから。なんなら繋いで置くし」
「眞子ちゃん。……開口一番、それは何気に酷くない?」
「本当、眞子?」
「ブッ!!本当じゃないから!!繋がれないからね!!」
「『ビクッ!!』……あぁ……」
こらこらダメだよ。
冗談でも、そんな大きな声を出して驚かしちゃダメだよ。
気が抜けてる運命は、本当にポヤ~~んっとした気が小さい子なんだから。
「えぇっと、この辺に、そう言うのを売ってる店って、何所に有ったっけ?」
「……本気で買って来るつもりなんだ」
「そうだよ。あぁ、因みになんだけど、伊藤さん」
「うん?」
「何色が良い?シルバー?銀色?その他にはメタル系なんかも有るよ?どれが好きなのを、この3色から選んでね」
「眞子ちゃん。それってさぁ……鎖のみって言わない?」
「ハード系のシルバーアクセサリー……かな?」
「モノは言い様だね」
「だね」
実は、こう言う子なんだけどね。
根本的に子供な部分があるから、感情が表に出易いし、口が悪いから誤解され易いんだけど。
普段の伊藤さんは、いつも、こんな感じで冗談を言い合える仲だったりするんですよね。
ってな感じでなので。
いつも通りのノリで話していたんだけど……
「眞子……眞子が、お金出すの良くない。私が出す。幾ら?幾ら出せば良い?」
「ブッ!!本気で買って来て貰うつもりなの!!」
「ごっ、ごめん。……プレゼントは、自分で買って来る」
「そこ!!」
二段ボケ、二段ツッコミ。
お2人さん、お疲れ様です。
でも、運命は、さっきの話を真に受けてたみたいだね。
眼が真剣だったし、本気で、財布から、お金を出そうとしてたしね。
変な子。
「あぁ……違うの?」
「うん。……もぉ良いよ。さっきの事は、もう一回謝るから、もぉ許して」
「……なにが?なにを許すの?」
ブッ!!本物だ。
私みたいな養殖物で、贋物の天然じゃなくて、この子はドイツ原産の本物の天然物だよ。
こりゃあ、相当、取り扱い注意の、おっかない子だ。
「眞子ちゃん。出来れば、助けて」
「……無理」
「うん?……なにが?」
……私も助けて。
***
……この後、5分程掛けて、今までの会話の内容を運命に英語で伝えてみたんだけどね。
この子、紛れもなく、本物の天然だよ。
なんて言ってもね。
さっきの会話の中で、途中から。
『伊藤さんを鎖に繋ぐ』
(↓)
『私が、運命と、伊藤さんとの仲を取り持つ為に、伊藤さんにシルバーアクセサリーをプレゼントする』
……っに、変更されたものだと思ったらしく。
私に金銭的な負担が掛かっちゃいけないと思い。
必至に、自分がお金を出す事をアピールしてたらしいのよ。
けど、伊藤さんが、そこで激しいツッコミをしてきたから、また勘違いした自分が伊藤さんに怒られてるものだと思い『違うの?』って質問したらしいのよね。
そしたら急に伊藤さんに謝られたもんだから……意味が解らなくなったそうです。
言葉の壁は、思った以上に厚いね。
「じゃあ、舞歌……怒ってない?」
「怒ってない、怒ってない」
「そぉ。良かった」
仲直りですね。
喧嘩すらして無い様な気もしますけど。
仲直りですね。
「まぁ、それは、それとして置いて置くとして」
「どこに?どこに、なにを置くの?」
「……助けて、眞子ちゃん」
「無理」
「だよね」
ですよ。
だから次期副リーダー頑張って下さい。
その様子から言って、運命を3B-GUILDに勧誘する気なんでしょ。
まぁでも、この子を勧誘するには、相当な根気が要りそうですよ。
「じゃあ、さっきの話は終わりって言う事で……どぉ?そう言う意味なんだけど」
「そぉ。そぉ言う事だったの」
「うん。そう言う事」
「ごめん。また勘違いした。日本語の比喩的表現、難しい」
比喩的表現って……そこは解るんだ。
「こっちこそ、ごめん。今度から、もっと解り易くストレートに言うよ」
「そぉ。お願い」
あぁ……ちょっと、今、気付いたんだけど。
運命は『うん』って言葉を、全て『そぉ』って言葉で片付くと思ってるみたいだね。
だから、自然に『そぉ』が多いんだね。
「じゃあ、今度はストレートに言うね」
「そぉ」
ほらね。
「仁科さん。率直に言うけど、3B-GUILDに入ってよ。眞子ちゃんに教えていた、あの綺麗なダンスを、3Bのファンのみんなにも披露してよ」
「率直って、なに?」
「あぁ、ストレートって事」
「そぉ。……でも、ごめん。気持ちは嬉しい。けど私、人前では踊れない」
えっ?えっ?えっ?なんで?
あれ程の飛び抜けた実力を兼ね揃えているにも拘らず、なんで人前で踊れないの?
過去に、なにか、そうなる原因でも有ったの?
「嘘?……どうして?」
「言えない」
「でも、でもさぁ。あれだけ上手いのに、なんで人前で踊ろうと思わないの?意味が解らないよ」
「ごめん。教えられない」
うん、これはダメだね。
伊藤さんは必死になって勧誘してくれてるみたいだけど。
一旦、この勧誘は、早急に切り上げた方が良さそうな雰囲気だ。
運命自身が頑なにまでダンスを踊れない理由を『言えない』って言ってる以上。
これ以上、無理に追求しても困るだけだろうしね。
けど、一応、確認の為にだけ英語で聞いてみよう。
これでもしダメなら。
私は、伊藤さんに勧誘をやめて貰う様に言わなきゃいけないからね。
『過去になんか有った?』
「英語?」
『うん。事情が有って、詳しい内容までは言えないけど。昔に色々と……』
『そうなんだ。だったら、もぉ追求しない。でも、それって『表舞台には立ちたくない』って意味に取って間違いないのかな?』
『うん。絶対に表舞台には立たない。でも、3-Bのみんなの為に、なにかはしたい』
そう言う意識は有るんだね。
でも、なんでだろう?
今までの経緯からして、運命が3B-GUILDに肩入れする理由は、あまり無い様に思えるんだけどなぁ。
どういう心境の変化なんだろう?
『そっかぁ。でも、なんで、そう言う気持ちに成ったの?』
『眞子の必至な姿を見て、そう思った。私にも、なにか出来る事が有るんじゃないか?って』
はい?
そんな日常的な事で、そんな風に思って貰えたんですかね?
必死なのは、私が、力の抜けない馬鹿なだけなんですけど。
人によって、色々な見方があるもんだね。
『そっ、そうなんだ。じゃあ、表舞台には立たないけど、3-Bのみんなには、なにかをしてあげようって気持ちは有る訳だね』
『そぉ。私にも、眞子みたいに、なにか出来るかなぁ?』
『勿論、出来るとは思うよ。けど、まずは、その辺を伊藤さんに聞いてみるよ。私は、3-Bの生徒じゃないからね』
『あぁ、そうかぁ。眞子は3-Bじゃないんだね。……でも、此処は、お願いする。私が聞いたんじゃ、また勘違いするかも知れないから』
『うん。OKOK』
ふむ。
どうやらこの様子から言って、なにやら運命の心の中では。
自分を受け入れてくれた3-Bのみんなに対しての仲間意識みたいなものが、密かに芽生え始めてるみたいだね。
なら、上手く言葉を使えば、違う意味での3B-GUILDへの勧誘は可能かも知れない。
けど、問題は。
そこに伊藤さんや、他のメンバーが気付くかどうかが勝負ポイントだね。
まぁ此処まで3B-GUILDに関与しておいて、今更、こう言う投げっ放しな言い方をするのは、自分でも無責任だとは思うんだけどね。
私は、そこまで、この件について干渉する気はない。
勿論、此処で『目一杯お節介する』って言う選択肢も一応は有るんだけど。
今後の3B-GUILDの為にも、その辺は、他人の手を借りず、自分達の手で解決すべきだと思うからね。
だから、まずは頑張ってみて。
……そんな風に自己抑制を掛けながら、伊藤さんと2人で、運命とは、少し離れた場所に行き。
また5分程掛けて、今、運命が自分の口で話した内容を、伊藤さんに伝えてみた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【後書き】
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>
ダンスの実力はブチ抜けているのに、人前で踊る事を頑なに拒否する運命ちゃん。
勿論、彼女がこうなっているのには理由があるのですが。
今はそこを問い質しても、彼女が困るだけと判断した眞子は、伊藤さんの勧誘を優先させる事にしたみたいですね。
まぁまぁ、この手の話は本来。
理由を知らなければ、動き様がない所なのですが。
運命ちゃんから「表舞台に立たなければ問題ない」っと言う意思表示を最低限得れてる訳ですから、こういった勧誘メインの展開になってもおかしくはないのかもしれませんしね。
人前で踊れない理由については。
後々、もっと親密度が上がってから、眞子が個人的に運命ちゃんから聞いても良い訳ですしね。
さてさて、そんな中。
その辺の運命ちゃんの意思を、伊藤さんに伝えた眞子なのですが。
この意見に対して伊藤さんは、どう言った反応を見せるのか?
次回は、その辺を書いて行こうと思いますので。
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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