1296 差し伸べられた手

 練習の時点から、3B-GUILDのダンスに苦戦を強いられる眞子。

そんな眞子を見かねたのか、運命ちゃんが『ダンスの仕方を教えてあげる』っと言って、手を差し伸べてきたのだが……


***


「良い眞子?よく見てて。3B-GUILDのダンス、一定の呼吸パターンがある。これ憶えたら、少し呼吸が楽になる」

「えっ?」

「やるよ。『ダン!!』ブレス。『ダダダンダン!!』ブレス。『ダン!!』ブレス。『ダダダン』ブレス。『ダン!!』ブレス……」


 その後、運命は、その場で5分程3B-GUILDのダンスを披露してくれたんだけど。


それはもぉ規格外の上手さ。


見事なまでに緩急の付いたメリハリのある動き。

綺麗に伸びきった手足。

全身を使ったダイナミックな動き。

それでいて、全てが繊細な動きで纏まってる。


なに、その隙の無い綺麗なダンス?


3B-GUILDのメンバーより完成度が高い上に、1度見たら、目が離せない程の表現力を見せ付けてくる。


これは、ダンスユニットの【Fish-Queen】レベル以上の上手さだ。


しかも運命は、踊り終わった後も『ふぅ』っと一息付くだけで、息1つ乱していない。


なにこれ?


有り得ない光景なんだけど。



「解った眞子?3B-GUILDのダンスの基本呼吸は『ダン!!』ブレス。『ダダダンダン!!』ブレス。『ダン!!』ブレス。『ダダダン』ブレス。『ダン!!』ブレス。……此処までの繰り返し。後は、これを、曲のリズムに当て嵌めれば、呼吸が乱れない」

「えっ?えぇっと……」

「難しい?」


首を傾げながら、心配そうな表情を浮かべて聞いてくれてるんだけど。


うん『難しい』……って言うより、難しいか、どうかは、まだ体を通してないから、なんとも言えない状況かなぁ。



「うん。ちょっと今のだけじゃ解らないかなぁ」

「そぉ……じゃあ、立てる眞子?」

「うっ、うん」

「そぉ。じゃあ、一緒にやって教える」

「あぁ、うん。そうだね。そうして貰えると有り難いね」

「じゃあ、立って」


そう言った後、運命は、私に向かって手を差し伸べてくる。


けど私は、一瞬、戸惑いを隠せずに、手を取る事を躊躇した。


理由は勿論、何故、運命が、こんな事が出来るのかが不明だからだ。


けど、直ぐ様、そんな想いは払拭して『ガシッ』っと彼女の手を取った。

今は、そんな無駄な事を考えるよりも、ダンスの完成度を、少しでも上げるのが優先事項だからね。


変に疑ったり、悩んでたりするのは、ライブが上手く行ってからで十分。


そこに救いの手が有るなら、どんなモノにでも縋らなきゃね。



そして、手を取った私に、運命はニッコリと微笑んだ。


この子……なんて綺麗な笑顔で笑うんだろ。


***



「『ダン!!』ブレス。『ダダダンダン!!』ブレス。『ダン!!』ブレス。『ダダダン』ブレス。『ダン!!』ブレス……」

「『ダン!!』うぅっ!!『ダダダンダン!!』はぁっ!!『ダン!!』うぅっ!!『ダダダン』うぅっ!!『ダン!!』はぁっ……」

「眞子ダメ。もっと声を出して。呼吸をするタイミングが発声をするタイミング。息を止めちゃダメ。声を出さないと憶えない」


厳しいんだね。


ダンスをしてない時のポヤ~~ンとした運命とは雲泥の差だ。

普段は、なんかポヤ~~~ンっとしてるのに、練習を始めたら、完全に別人みたいにハキハキ物を言うんだね。


なんかこの子も、そう言う特別なスィッチが付いてるのかなぁ?


でも、メリハリが有って良い事ですね。



「ごめんなさい!!『ダン!!』ブレス。『ダダダンダン!!』ブレス。『ダン!!』ブレス。『ダダダン』ブレス。『ダン!!』ブレス……」

「そぉ。その調子。頑張って」


……その後、こんな調子で10分程、運命の指示に従いながらダンスをしてみたんだけど。

今まで、あれ程苦しめられた呼吸の乱れが、一気に減少。


それに伴って、体に掛かる負担も減ってきた。


勿論、そうは言っても、運命と練習を始めた頃は上手く呼吸が繋げずに苦戦する羽目になったんだけど。

無理矢理にでも、運命の指示に従って練習してると、だんだん運命の言ってる理屈も解ってきたからこその負担軽減。


しかしまぁ、呼吸方法1つで、ダンスって、此処まで変わるものなんだね。


私は、そんな運命から学んだ呼吸方法に感心しながらも。

そのお陰で、ほんの少しだけ体力面で余裕が出てきたので、この後も継続してダンスの練習を続けた。


***


 ……結局、殆ど休憩時間に休憩をしないまま。

30分程、運命の厳しい指導の下、連続でダンスレッスンを受けていたんだけど。


……流石に息が切れた。


私は精も根も尽き果てて、その場で大の字に寝転がる。


運命は、そんな私の横にチョコンと座る。


因みに、只今の時刻は15時ジャスト。

開演まで、残り3時間。



「はぁ……はぁ……キッツイなぁ」

「そぉ?でも、大分良くなった。眞子、憶えるのが早い」

「ホント?はぁ……はぁ……ありがとう」


いやはや、もしそうなら、運命の教え方が上手いからだよ。


久しぶりに人からモノを習ったけど。

勝手が解らない也にも、人に習うと、ヤッパリ効率が良いもんだね。

独学や、コピーだけじゃ、どうにも成らない事もあるもんなんだね。


此処で再び、お金を払ってまで、人に教えを請う理由が解った様な気がする。


みんな、短期間での習得を目指す為に、時間を、お金で買ってるんだね。


それが世の常って奴なんだね。


まぁ……そんな常識を覆す、規格外の人も、世の中には居るけどね。


崇秀さんの事ですけどね。


……それにしても、人間、こうも変るもんなんだね。

ダンスを終えて、私の横に座った瞬間から、さっきまでの気迫溢れる運命は、どこへやら……いつものポヤ~~ンっとした感じに戻っている。


本当に普段は、こんな感じなんだね。



「どいたかまして」


ぷっ!!


不意に、なにを言うのかと思えば、なに?その可愛い間違い?


素の笑顔で、そんな言葉を言われたもんだから。

一瞬、最近の流行言葉で、そんなのが有るのかと思っちゃったよ。


吃驚して起き上がっちゃったよ。


でもでも、こうやって驚いたからこそ、改めて運命の顔をジッと見てるんだけど。

ドイツ人との混血なだけあって、鼻筋が通った綺麗な顔立ちしてるんだね。


だったらヤッパリ、此処は1つ、3B-GUILDの新戦力になってくれないかなぁ?


顔が綺麗な上に、ダンスが飛び抜けて上手いし、キャラも立ってる。


こんな逸材は早々に出ないからね。



「ふふっ……運命。そこは『どいたかまして』じゃなくて『どう致しまして』ね」

「どいたしかまして?」

「うぅん。違う違う。ど・う・い・た・し・ま・し・て」

「ど・う・い・た・し・ま・し・て?」

「うん、そぉそぉ。それで合ってるよ。良く出来ました」

「クスッ……どう致しまして」


ぬぬぬ……困惑しながらも、必至に言葉を紡ぐ姿も悪くないねぇ。


それでいて、その後の笑顔もバッチリだね。


この地域が美少女天国な事には、本当にギャフンですね!!


なんて馬鹿な事を思っていたら……


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>


眞子の予想通り、運命ちゃんは、やっぱり只者ではなかったですね(笑)

しかも眞子から【本格ダンスユニットであるFish-Queenレベル以上】だと言わせるほどの実力。


この子は、一体、何者なんでしょうね?


あっ、それはそうと。

本編を読んで頂いて『高々40分練習した程度で、そんな簡単に【呼吸方法が習得出来るものなのか?】っと言う疑問を持たれた方もおられると思うのですが。


此処に関しましては、眞子は『色んな事をしてきた下地がある』からこそ出来る話であって。

なんの下地も持たない子では、天才でもない限り到底無理だと思います。


経験なくして、早期の体得はできません。


しかも眞子の場合は、その『下地』+『崇秀から教わった複合原理』っと言う技を体得しているからこそ、これが可能になる訳です。


早く体得出来るのにも、ちゃんと理由がある訳なのですよ(笑)


さてさて、そんな中。

一旦は運命ちゃんとの練習を終えた眞子なのですが。

この後、まるで、なにかが起こる様な雰囲気を醸し出してきていますね。


だとしたら、一体、何が起こるのでしょうか?


次回は、その辺を書いて行こうと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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