1291 心を溶かすには、少しづつ……

 無茶苦茶な眞子との会話の中にあっても、何か感じるものがあった仁科さん。

ならば後は『どれだけ彼女の本音を引き出して行けるか?』なのだが……


***


「うん。それにね。人の思考なんてものはコロコロ変わるもんだから、その都度、修正や、上書きが必要なんじゃないのかなぁ?いつまでも同じ考えの人なんて居ないんだし」

「なにが言いたいの?」

「別にぃ。ただ単に、いつまで殻に閉じ篭ったままツマンナイ人生を送るのかなぁって思っただけ。他意はないよ」

「殻に閉じ篭って……矢張り、アナタも、なにも解ってない」


解ってないかぁ。


なら、別の切り口で説き伏せるまでの事。


修正点は、そんなに多くない。



「『解ってない』かぁ。あぁ、じゃあ言い直すね。殻に閉じ篭らざるを得なかった……って、言った方が解り易いかな?」

「えっ?」

「感情表現が上手く出来ないんでしょ。それで無感情だとか思われて、人に避けられる。それが嫌なもんだから、仁科さんは、自らの意思で、他人との接触を断っていた。そう言う理論じゃないの?」


多分、そうなんじゃないですかね。


正確には解らないけど、殻に閉じ篭る大半の原因は対人恐怖症。

それで、余計に人と接しなくなっていくから悪化の一途だけを辿る。


そう言う一般論から導き出した安易な解答なんだけど、どうですかね?



「えっ?どうして、知り合ったばかりのアナタに、そんな事が解るの?」

「別に解ってる訳じゃないよ。これは、単なる一般論だからね。ただ、その一般論に、仁科さんの言動を分析した結果をプラスすれば、こう言う解答が、自然に導き出されただけ。早い話ね。よくある話って事だね」

「よくある話?」

「そうだよ。仁科さんの症例は、大して珍しくない症例だよ」

「珍しくないの?」

「うん。全然珍しくない。寧ろ蔓延してる」


ホント、どこにでも有る様な、極有り触れた話だよ。


それに、この症例は、今後ドンドン蔓延していくだろうしね。



「どうして?」

「あぁ、答えはね。単なるコミュニケーション不足。昨今のネットの氾濫で起きた弊害って奴だからね。端的に言えば、ネット上での楽な表面上の付き合いだけを重視して、リアルの煩わさを全てカット。そうやって行く内に、ドンドン殻に閉じ篭って抜け出せない感じかな」

「私、ネットはしない」

「だろうね。仁科さんの症例は先天性のものだし、今、私が言ったものは後天性のもの。多少の違いが出て来るのは否めないかもしれないけど。発症する症例としては同じ。初めからか、後からかだけの話だからね。だから、この話自体は、そんなに珍しくないんだよ」


本当にね。

こう言う症例が多くなってきてるのは嘆かわしい事だよ。


ネットを使うのは良いんだけど、そこにだけ依存するのは良くないよね。

これじゃあ、人が、パソコンや、携帯を上手く使ってるんじゃなくて。

パソコンや、携帯がなきゃ、コミュニケーションの1つも取れなくなってるのも同然だからね。


これが出来なくなるんだったら、人付き合いは、もうちょっとアナログでも良いんじゃないの?

じゃなきゃ、楽な付き合いバッカリ憶えて、煩わしい事に打ち勝て無くなっちゃうよ。


まぁ、仁科さんの場合は、もうちょっとだけ深い所に有る話なんだと思うけどね。



「あぁ……」

「まぁ、それとね。『自分が煩わしいと思ってる』って事は『他人も煩わしいと思ってる』って事も認識しなきゃね。一方通行で煩わしいなんて馬鹿な事は、絶対に有り得ないからね」

「じゃあ、私の事も……」

「勿論、最初は煩わしいと思ってたよ。けど、私は、さっきも言った様に、安易には人を嫌いに成らない。それにね。それを差し置いたとしても、仁科さんと話をしてみたいと思える、なにかを感じたから、アナタと話をした。私は、人と接するのが大好きだしね」

「じゃあ、これは治すべき事?」


全然。



「なんで治すの?別に必死に成ってまで、治さなくても良いんじゃない。そう言うのって、治そうと思って、治るもんじゃないよ」

「えっ?」

「人と接していれば自然に治るよ。それがさっき言った『変わらない人間なんて居ない』って奴」


1つ1つ段階を踏んで、ゆっくりと治すのが最良の方法だと思うよ。

変に勢いをつけて無理をしたら、途中でストレスが多大に溜まって、殻の中に逆戻りしちゃうからね。


しかもそれに付随して、相手に対して嫌悪感が募るのみ。


それじゃあ、上手くいくものも上手くいかなくなる。


だから、少しづつでも良いから人と接して。

お互いのルールを譲歩し合って、より良い人間関係を構築すれば良いんじゃないかな。


そう言うのが、これの解決方法だと思うよ。



「変わった人」

「よく言われる」

「そぉ。でも、どうして私に興味を?」

「さぁ、なんでだろうね?な~~~んとなくツマラナそうにしてたからじゃないかなぁ。その程度の理由だと思うけど」

「それだけ?」

「うん。それだけ」


まぁ本音を言えば。

綺麗な子だから、素直ちゃんが抜けた後『3B-GUILDの新戦力に成るかな』って思ってた節がない訳じゃない。


素直ちゃんの抜ける穴は、それ程までに大きいからね。


まぁそうは言っても、此処からは仁科さん次第だけどね。

幾らお節介だと言われる私でも、此処を強制する気は一切無いからね。



「本当に変わった人」

「だよね。……じゃあ、それを踏まえた上で友達って言うのはダメ?」

「……出来ればお断り。人の気持ちに無断で入って来られるのは、不快」

「そっか。じゃあ、しょうがないね」


ダメでしたぁ。


チャンチャン。



「……けど」


あっ……『けど』って事は、なんか続きがありみたいですね。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>


少しづつ……ほんの少しづつではあるのですが。

当初にしていた会話の内容から変化が生じ始めましたね。


実際、仁科さんも眞子に対して、少しづつではありますが心を開いてきている様子ですし♪


そして、最後に放たれた『けど』っと言う言葉。

この言葉の後から、一体、どんな進展があるのでしょうか?


次回は、その辺を書いて行こうと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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