1290 転校生攻略戦
多感な子が多い3-Bに転校してきた仁科さん。
だが多感な子が多い故に、彼女は、どうにもクラスに馴染めない処か、どちらかと言えば拒絶し、完全に嫌われている様子。
そんな仁科さんを見た眞子は、この状況を、どうにか出来ないものかと考え、彼女との会話を試みるのだが……
***
「ねぇねぇ、仁科さん」
「なにか?」
「じゃあ、早速、質問なんだけど、仁科さんって、なにが好き?」
「質問の意図が見えない?」
「へっ?意図なんかないよ。ただ聞いてるだけだから」
「じゃあ、時間の無駄になるだけ。その質問を拒否」
おぉ……律儀に待ってる割には、素直ではないんだね。
……って事は、ヤッパリ変わり者だ。
変な子。
「そうなんだ。じゃあ、なにをしてる時が楽しい?」
「同じ意味。同じ理由で拒否」
「そっか。じゃあねぇ。どんな時に生きてるなぁって思う?」
「それも同じ」
「そっか、そっか、じゃあねぇ……」
「先持って、同意義の質問は拒否」
「ふふっ、鋭いねぇ。折角、次も同じ様な内容の質問をしようとしたのにね。拒否されちゃったよ」
今の所、拒否はされっぱなしだけど楽しいなぁ。
こう言う変わり者は、私にとっては大好物な部類の人間だからね。
そう言う子の攻略は楽しい。
でも、この今言ったセリフは、誘い水。
罠だから気をつけてね。
「解っているなら、何故、同じ質問をするの?」
ふ~~ふ~~~ふ~~~~(ドラえもん調)
早速、罠に掛かってくれたね。
私の奇妙な行動が気になって、自らの口で質問を繰り出しちゃったね。
まずは、こうやって仁科さんに、私に対する興味を持たせる事が狙いだったからね。
成功♪
「その質問を拒否します。自分で考えて下さい」
「えっ?なにを言ってるの?私が、何故、考える必要があるの?」
「自分で質問したんだよ。相手が答えてくれなきゃ、自分で考えるしかないんじゃないの?私、仁科さんが答えてくれなかった時、さっきから、そうやってるけど。なんか変な事を言ってる?」
質問の後に、奇妙な正論っぽい事を言って相手の思考を混乱させる。
これは以前、ホランドさんと初めて接した時には自然に使ってたみたいなんだけど、今回はそれを意図的にやってみた。
なんて言っても、合理主義の変わり者には、こういう訳の解らない理屈が最も有効的だからね。
この『なにが有っても、解らない事を嫌う』って習性を利用しない手はない。
「えっ?」
「それとも意味が解らないから、合理的に考えて思考を破棄する?1パスって事で」
「じゃあ、思考を破棄する」
「ふ~~~ん。じゃあ、私のターンだね。質問するよ」
「えっ?」
「『えっ?』って、なに?」
「どうして、質問するの?」
「えっ?だって、私が質問して、仁科さんが答えなかった。……っで、仁科さんが質問して、私が答えなかった。だったら次は、仁科さんへの興味が、まだ尽きてない私の番なんじゃないの?違う?」
理不尽の極み。
相手の意思を無視して、自分だけが有利に話を進める展開を作る。
勿論、此処では、決して相手にイニシアチブを握らせないのもコツ。
これ、重要。
でも、過度にやりすぎるのはダメですよ。
「答えないけど」
「そうなの?じゃあ、今度は仁科さんの番ね。答えないけど」
「その前に、アナタに質問が無い」
「そうなの?じゃあ、また私のターンだね。えぇっと、仁科さんって、どんなものが好き?」
「えっ?」
無限地獄。
相手が同じ様な内容の質問はダメだと言ったにも拘らず、ただ只管に同じ様な内容の質問を繰り返す。
かなり強引なやり方であり、また拷問的なやり方ではあるんだけど、こう言う精神面が強そうな子にはやっても大丈夫。
それに、そろそろ合理主義の顔を見せて、辞めを宣告してくれても良いんだよね。
もう既に、次の手は考えてあるから。
「だから、どんなものが好き?」
「答える気はない」
「そうなんだ。じゃあ、質問どうぞ。今度は、なにを聞いても、ちゃんと答えてあげるよ」
「なんの為に、こんな事をするの?意味が解らない」
やっちゃったね。
冷静に対処するなら、此処は、質問せずに怒って帰る所だよ。
幾ら『次はちゃんと答える』って言葉を聞いて、気持ちに余裕が出来たとしても、此処は質問だけはしちゃいけない場面なんだよ。
「うん?そんなので良いんだ。それなら簡単だよ。なぁ~~~んとなく面白そうな子だから、話をしてみたかっただけ。ハイ、答えたよ」
「えっ?」
「じゃあ、答えたから、私の質問ね。どこから来たの?」
「えっ?」
此処で突然、質問の内容を変える。
そうすれば『どうせまた同じような質問をしてくるだろう』って踏んでた相手は、更に混乱してしまうからね。
そんで、これが顕著に出るって事は、まだこの子は、私の思考パターンは読めていない証拠。
なら、この混乱してる隙に、更に、不条理と、理不尽を重ね合わせて畳み掛けるのみだね。
「えっ?って、なに?まさか、絵の中に住んでるの?」
「違う。絵の中には住めない」
「だよね。じゃあ、何所?」
「遠い所」
えっ?不思議ちゃん?
……っとは言っても。
一応は「遠い所」って、ちゃんと答えてくれたでしょ。
此処は人間心理に於ける「貸し借りの法則」
要するに、さっき私が答えた事によって『なら自分も1つぐらいなら答えても良いかなぁ?』って心理状況を作った訳ですよ。
特に質問を替えた直後の混乱した状態なら、咄嗟に答えてしまうものだしね。
「そっ、そうなんだ。じゃあ仁科さんは、此処じゃない、遠い所から来たんだね」
「そぉ……もぉ、答えたから帰って良い?」
「別に良いよ。その代わり、お互いの事を1つづつ知ったから、これで友達だね。宜しくね、私、向井眞子」
「えっ?友達じゃない」
「なんで?友達だよ」
「どうして?アナタの言ってる意味が解らない」
2つ目の質問、キッチリ受理します。
……ってか、2個処か、めっちゃ答えてるんだけどね(笑)
「そりゃあ、なにも知らなきゃ、赤の他人だけど。なにか1つでも知ってたら、それは知り合い=友達。これ、私の法則」
「押し付けないで」
「じゃあ、私にも、仁科さんの法則を押し付けないで。自分1人で勝手にルールを決めないでくれないかなぁ」
「えっ?」
「だって、そうじゃない。自分のルールが有る様に、他人にもルールは有る訳でしょ。それで意見が合わないからと言って、自分のルールだけを一方的に押し付けられたんじゃあ堪ったもんじゃないよ。それに、友達じゃないって言うなら、なんでルールを押し付けるの?それこそ意味が解らないよ」
「えっ?えっ?」
意味が解らないでしょ。
言ってる自分ですら半分ぐらいしか意味が解ってないんだから、他人である仁科さんに解る訳が無い。
ただね。
そうやって訳が解ってなくても、揚げ足を取られる様な間抜けなミスだけはしちゃいけないけどね。
……って事なので。
話を続けながら、整合性を上げて行きますかね。
「うん?ひょっとして意味が解んないの?友達ならルールの押し付け合いが有るけど。他人で知らない人ならルールを押し付ける必要はないって言ってるの。解る?」
「じゃあ、勝手にそう思って」
「うん、ありがとう。友達だから折れてくれたんだね」
「折れてない。それに認めてない」
「なんで?ルールを押し付けあって、仁科さんが、私の方が正しいと思ったから折れてくれたんでしょ。認めてるじゃん」
「そんな勝手な」
「勝手じゃないよ。私、ちゃんと言った筈だよ。ルールの押し付け合いが有った時点で友達だって」
此処は、恒例の詭弁ですね。
「アナタ、おかしいんじゃないの?」
「そぉ?おかしいのは、どちらかと言えば、仁科さんの方なんじゃないかなぁ?」
「どうして?」
「だって、人には質問ばっかりして、散々答えさせてるのに。私が質問しても、自分は、たった一回しか答えてくれないんだよ。これって、どっちが変?どう考えても仁科さんの方が変なんじゃないのかなぁ」
「それは、アナタが勝手に答えただけ。答えて欲しいなんて言ってない」
理屈は合ってるね。
けど、理屈が合ってるからといって、それが正論とは限らないよ。
どんな正論にも、それをひっくり返す言い回しが、この世には存在するからね。
「じゃあ、なんで質問するのかな?答えて欲しくないのに、質問するって、なんか矛盾してない?もし本気で、そう思ってるなら、質問しない筈だけど」
「それは……」
ちょっとでも相手に興味がないと、質問なんてしない。
どういう感情であれ。
なにかしろの興味が湧いたから、質問を繰り出す。
これも人間心理に於ける基本。
故に、此処を逆手に取れば、人間の本質的な部分を表面化させるのは、そんなに難しい事じゃない。
これは、そう言う罠。
「まぁまぁ、そうは言ってもね。別に、そんな事は、どうだって良いんだけどね。私は、仁科さんと話がしたかっただけだから」
「そんな事だけ……」
「そうだよ。私は、相手の事が解ってないのに拒絶をする事が嫌いなの。だから、この時間は、仁科さんを知る意味では有意義だったと思うよ。……どういう人か、よく解ったし」
半分ぐらいだけどね。
実際は、まだ良く解って無いけど。
「解った?私の事を?」
「うぅん、正確には、解った気に成ってるだけ。他人の全てを理解するなんて一生掛かっても無理だからね。それに……」
「それに?」
聞き返してきたね。
まぁ、気に成る様に話してるから、此処で、聞き返してくれなきゃ困るんだけどね。
こうも簡単に聞き返すって事は、人嫌いを装っていても、結構、他人に興味が有る証拠だよね。
それ=今までの経過からして、彼女が感情表現が下手な証拠。
上手く感情を表に表せないからこそ、人とのコミュニケーションが上手くとれない。
今の所、そう言う分析結果。
まぁ、これ自体は、ただの私の思い込みかも知れないけどね。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【後書き】
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>
仁科さん攻略戦の火蓋が切って落とされたのですが。
話している内に眞子は、どうやら、この仁科さんの態度も『訳ありな様子』と判断したみたいですね。
そして、その理由としては『感情コントロールが上手く出来ていない』との事なのですが。
果たして、此処が上手く嚙み合って、彼女の本音を引き出す事が出来るのか?
次回は、その辺を書いて行こうと思いますので。
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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