1288 最強の助っ人と気難しい転校生

 素直ちゃんの願いとは『此処武道館で3Bのみんなと一緒に、眞子にも歌って踊って貰う』っと言う無謀な物だった。

勿論、眞子は諸問題からこれを断ろうとしたのだが。

そこには、眞子に対する今までのお礼として『是非、この大舞台で登って貰いたい』と言う気持ちと、素直ちゃん自身が3Bを卒業してしまったら、もうそのお礼すらも出来なくなってしまうからっと言う気持ちが入っていたを知り、無理を承知で参戦を決意。


そんな折、佐藤さんが、なにやら提案してきたのだが……


***


「あぁ、はい、なんでしょうか?」

「いや、なにね。良かったらなんだが、俺にも、その手伝いをさせてくれないか?」


はて?佐藤さんが手伝いですか?


・・・・・・


あっ!!あぁ~~~~!!そうか、そうかぁ!!

佐藤さんは、崇秀さん同様に支配系の奇妙な音楽を奏でる事が出来る希少な存在。

そんな人に、そこを上手くやって貰えば、私が出来ない筈のダンスの件も解決しなくもないかぁ。


これは悪い提案じゃないなぁ。

いや、寧ろ、今の現状で、これ程の有り難い提案はないですね。


意外な所で最強助っ人の登場ですね。



「あぁ、はい。だったら、是非お願いします。……っと、言いたい所なんですが。1つお聞きして良いですか?」

「なんだ?」

「あの~~~っ、どうして協力して下さる気に成ったんですか?」

「あぁ、そこな。それはソッチに居る子が、君に恩返しをしたいって言ったからだが」

「じゃあ、この話は、素直ちゃんの恩返しの件がメインなんですね」

「そう言うこった。義理や、人情を忘れちまったら、人は楽しく生きれないからな」


佐藤さんって、意外にも、そう言う系の人なんですね。

インテリ系の見掛けに拠らず、義理や人情を重視する『任侠系の人』だったんですね。


あぁでも、そう考えたら、崇秀さんが佐藤さんを尊敬する理由も解からなくもないなぁ。

佐藤さんの音楽は勿論の事、そう言った心構えもキッチリ持ってるからこそ、崇秀さんが尊敬し続ける人物なのかもしれないね。


この人も器が大きい。



「それだけですか?」

「いいや。その件も踏まえてな。この3B-GUILDの楽園に連れて来てくれた、君への恩返しも込みでの話だ。だから、俺が役に立つと判断するなら、君への協力も惜しまないぜ」


なるほどねぇ。

義理や、人情を掲げた上で、人に対しても貸し借りを作らない主義だと。


うん……だったら、私が断る理由はないね。


……でもですね。



「じゃあ……って、言いたい処なんですけど。これは私のライブじゃないんで決定権は有りません。3B-GUILDの、みんなの意見次第ですね」

「なるほど、そいつは、自分の分を弁えた意見だな」


当然ですよ。

自分勝手な我儘だけで話が通るほど、芸能界は甘い世界じゃない筈ですからね。


なので、通すべき筋は、キッチリ通さないといけません。



「あぁ、だったら、私は賛成。私、佐藤さんのシンセ大好きだから♪」

「じゃあ、僕からもお願いします。是非とも」

「前回の文化祭で、あれだけのポテンシャルを見せて貰ってるんだから、良いと思うよ」

「賛成でありんす。アチキも、佐藤様のシンセを聞きとうございます」


おぉ……速攻でセンター四天王は全員賛成ですか。


なら後は、済し崩し的に反対意見無しで決定するだろうね。

此処では、必ず『女性に於ける群集心理』が発動する筈だからね。


まぁ、そうは言っても。

これが完全に決定するのは、今日のバックバンドの構成次第ではあるだろうけどね。


流石に、現状でバックバンドの構成を替えるのは無理な注文だし、シンセを担当する人が居たら非常に失礼にも当たる。

なので、今の状態だと、佐藤さんには練習に付き合って貰う事が決定したと言った感じかな。


でも仮に、バックバンドにシンセを扱う人が居なければ、全てが解決。

正直言って、私の知ってるミュージシャンの中でも、佐藤さん程シンセを扱える人間はエディさん位のもんだしね。


それだけに、バックバンドの人と音を合わすぐらい、佐藤さんにとっては朝飯前の筈だし。



「「「「「「あぁ、じゃあ、私達からもお願いします♪」」」」」」


まぁ、そうなりますよね。


なんて妙に納得しながらいたら、突然……



「ちょっと待って貰って良い?その人が、イベントに参加するのは勝手だけど。その前に、私が、クラスメイトだからって、此処に呼ばれて、このイベントに強制参加させられる意図が解らない。……その件が解決する前に、どう言う事か説明して?」

「……仁科さん」


突然、誰が意見を述べたのかと思ったら、さっき私が気になってた転校生らしき子だね。


読んでいた本を読み終えたのか、意見をしてきたね。



「あっ、あの、仁科さん。別に強制してる訳じゃ」

「そぉ。じゃあ、帰る。さようなら」

「あっ、あの、でも、出来れば、転校生で、卒業までの短い期間だけど。折角、クラスメイトに成れたんだから。良かったら一緒に思い出作りをしてみませんか?」


ヤッパリ、此処は転校生ではあったんだ。


それにしてもまぁ、なんとも灰汁の強い転校生が編入してきたもんだね。

あの端的に話す口調から言って、協調性が欠片も感じられない様な雰囲気だもんね。



「興味がない。それに思い出作りなんてして、なんの意味があるの?……そう言うの気持ち悪い」


うわっ!!その上、感じも悪いなぁ。


それに無表情で、凄い冷めた感じ。

それでいて、時折見せる眉間に皺を寄せた、あの鬱陶しそうな顔。


まるで転校したての自分を見る様だ。



「ちょっとアンタ、気持ち悪いってなによ?思い出作りの、なにがイケナイって言うのよ」

「イケナイとは言ってない。ただ、同じクラスに成っただけで、全員が仲良くする必要はないって言っただけ」

「どうしてよ?仲良くして、なにが悪いのよ」

「別に悪いとも言ってない。必要性が無いって言ってるだけ」


淡々と物を喋って、なんか機械みたいな子だなぁ。


感情が希薄なのかなぁ?


良かったら、私の有り余る感情を分けたげよっか?


……なんてね。


まぁ冗談は、これ位にしても。

多感な子が多い3B-GUILDに馴染むには、中々厄介なタイプの転校生だね。

見た感じ、以前のホランドさんを見てる様な『完全合理主義者』な顔も見え隠れしているし。


これは一筋縄では行かないタイプだね。


……かと言ってなぁ。

それが解っていても、部外者の私が口を挟む問題じゃないしなぁ。


これは、どうしたもんだろ?


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>


偶然に出会ったとは言え、意外な助っ人の登場でしたね♪


もうこれに関しては、眞子の引きの強さが齎した現象なのでしょうが。

あの時、キッチリと佐藤さんに声を掛けなければ、こういう事態にはならなかったのでしょうから、此処は眞子の人間性が生み出した奇跡と言った所でしょうか。


まぁそうは言っても、倉津君の時から、その妙な奇跡を産む傾向はありましたがね(笑)


さてさて、そんな中。

それでなんとかライブの方は上手く行きそうな雰囲気に成っては来たのですが、此処でまたしても別の問題が発生!!


控室に入ってからというもの、眞子が妙に気に成っていた本を読んでいるだけの見知らぬ少女が、なにやら『此処に呼ばれた事に不満がある』らしく反論の意を示してきましたね。


これは一体、何事でしょうか?


次回は、その辺を書いて行こうと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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