1286 素直ちゃんが眞子を武道館に早く呼んだ理由
佐藤さんを連れて3B-GUILDの控室に来た事により、一悶着あったのだが、それは取り敢えず即座に解決。
その後、眞子を早くに呼び出した素直ちゃんの用事を聞こうとしたのだが……
***
「えっ?あぁ、うん。実は、それなんだけどね」
「うん、なに?」
「えぇっと、あのね。えぇっと……」
うん?なになに?この歯切れの悪い素直ちゃんの言葉と、不穏な空気は?
私に『用事がある』って言って呼び出した筈なのに、その要件を聞き始めたら、なにやら言い難そうにしてる感じ。
ひょっとして、これって、明らかに危険信号なんじゃないの?
ならもぉ……このまま帰ろうかなぁ?
って言うか、寧ろ、此処から即座に脱出すべき案件?
「えぇっと、なんか言い難そうな雰囲気だね。だからもし、この場で言い難いんだったら、また今度でもOKだよ。その時に聞くよ」
「あぁっと、そうじゃなくて、今度じゃダメなの。今じゃなきゃダメなの」
……ヤッパリだ。
この雰囲気から言って、私の感じた『この場から逃げろ!!』っと言う危機感は間違ってはいなさそうだ。
ならこのまま、なにも聞かずサッと帰った方が身の為なのかもしれないね。
勿論『ライブを観戦する』って約束を前以て素直ちゃんとしてる訳だから、観客席の方に帰るって方向での話なんだけどね。
「そっ、そうなんだ」
「うん。どうしても、今日っと言うか……今じゃなきゃあダメなの。……だから、あの、眞子ちゃん」
「えっ?あぁ、はい、なっ、なんですかね?」
「僕、眞子ちゃんに一生のお願いがあるの」
「いっ、一生のお願い?ですか。……あっ、あれ?なんだろ?これまた急に、話がヘビーな方向性に成った感じがするね。気のせいかな?」
ヤダよ。
何をオーダーするつもりなのかは知らないけど、此処で変な注文はしないでよ。
今の私は『頼まれると断れない人』だから、ついつい無茶な注文でも聞いちゃいそうな勢いだからね。
だから、せめて『一生のお願いだから、此処に居る全員分のジュース買って来い』ぐらいにして下さいね。
3B-GUILDにとっての初の武道館ライブだから、お祝いとして、此処に居る人数分のジュースなら、なんとか買って来ますから。
まぁ貧乏だから、金銭的にはギリギリだけど……
それでお金が無くなったら、帰りは崇秀さんに迎えに来て貰わなきゃ成らないけど……もぉそこは決死の覚悟で奮発しちゃいますんで!!
だから、それで勘弁して下さい。
「あのね、眞子ちゃん」
うん、人が一生懸命「変な願いはしないでね」って心で念じてると言うのに。
既に素直ちゃんは、お得意の『In my world(自分の世界)』に入っちゃって聞く耳を持ってませんね。
私の『ヘビーじゃないの?気のせい?』って話には、微塵も反応してくれてませんね。
……って言うか。
この状態の素直ちゃんは、本当に人の話を聞かない子だから、こりゃあ早々に諦めて話だけでも聞いた方が良さそうだね。
ダメだこりゃあ。
「えぇっと、なにかなぁ?」
そんな風に半分諦め気分の私は、ややビビりながらも、取り敢えず、素直ちゃんの要望を聞くだけ聞く事にした。
「うん、あのね、眞子ちゃん」
「あぁ、はい」
「今日の僕達のライブで、昨日の向井さんのライブの時みたいに、僕達と一緒に踊って唄って貰えないかなぁ?……眞子ちゃんなら、これぐらい慣れてるから、全然平気だよね」
「はっ、はい?」
うわぁ~~~っ、なにを言ってくるのかと思えば。
涼しい顔をして、これまた無茶な注文を突き付けてくれたもんですね。
『なんの打ち合わせもなしに、ステージ上でみんなと歌って踊れ』って……アンタ。
いやまぁ、そりゃあね。
確かに私は根無し草なベーシストだから、あちらこちらのライブに顔を出させて貰ってはいるよ。
だから、こう言った『即興系の無茶な注文』が、素直ちゃんの口から出てもおかしくはないとは思うよ。
だけど、それには、ちょっとした誤解が含まれてる。
それ故に、今のその素直ちゃんの出した依頼は、ちょっと厳しいんじゃないかな?っと思ってる訳なんですよ。
……って言いますのもね。
今の素直ちゃんの依頼が『歌って踊れ』ではなく、私の専門分野である『ベースを弾け』って言う注文であれば。
それが多少無茶な注文であっても、そこは理には適ってるだけに、私も喜んで引き受けさせて貰う事が可能なんですけどね。
ブッチャケ言っちゃえば、まだ本番までには時間があるから、その間に曲の調整をしてしまえば済む話だし。
でも、この依頼が『ベースを弾け』から『この大舞台で歌を唄え』って成ると全然話が変わってくるのよ。
っと言いますか、ちょっと私的にも専門外に早変わりしちゃう訳なんですよ。
どういう事かと申しますと。
前述した通り、色々なライブにHELPとして出演させて貰ってる訳だから。
その際に、何度かネタ的な感じで、人前で歌を唄わせて貰った経験がない訳じゃあないんですけど。
そんなものは、何処まで行っても、小さなライブ会場でオマケ程度にやったお遊びの域でしかない訳なんですよ。
だったら私、ソッチの歌唱方面に関しては、まったくのド素人って事に成りませんか?
なのに、この大舞台で、それを前振りもなしに『イキナリやれ』って言われても出来る訳がない。
なら、この提案は、ヤッパリ無理・無茶・無策・無謀なんじゃないかな?って成りませんかね?
どう考えても成りますよね。
それにまぁ、それ以外にも、色々な意味でマズイと思う節もある事ですし。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【後書き】
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>
素直ちゃん、またトンデモナイ要求を突き付けてきましたね。
まぁ、素直ちゃんの中では【眞子はなんでも出来る万能な子】っと言うイメージが定着してしまっているので。
多少、自分の中で『無謀かなぁ』って思った事でも『いや、眞子ちゃんなら絶対に大丈夫』って思考に変換されてしまうので、これはもぉ仕方がない事なのかもしれません(笑)
まぁ『それだけ絶大な信頼を勝ち得てる』っと言う言葉に言い換える事も出来る訳ですし。
……っとは言え。
幾ら絶大な信頼が有ろうと『出来る事と出来ない事』があるのも事実。
それに、本編でも眞子が語った様に『それ以外の問題』も山積みですからね。
さてさて、そんな状況の中。
眞子は、一体、この試練を、どう切り抜けるつもりなのか?
次回は、その辺を書いて行こうと思いますので。
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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