第3話

あかりは大学のキャンパスに足を踏み入れた。広いキャンパスと多くの学生たちに圧倒されつつも、里道百合の教室を探し始めた。大学の地図を確認しながら、目指す建物に向かって歩を進める。


ようやく目的の建物にたどり着いたあかりは、受付に立ち寄り、里道百合の名前を告げた。


「すみません、里道百合さんという方を探しているのですが、こちらの学生さんですか?」


受付の女性はあかりに微笑み、「はい、里道百合さんはこの建物の2階にある教室で講義を受けています。少し待っていただければ、講義が終わる時間ですので、こちらでお待ちください。」と案内した。


あかりは受付の近くのソファに腰を下ろし、待つことにした。しばらくすると、学生たちが教室からぞろぞろと出てくるのが見えた。あかりは一人一人の顔を見ながら、百合を探し始めた。


その時、あかりの目に留まったのは、一人の女性だった。長い黒髪に透き通るような白い肌、そしてやや緊張した表情が印象的だった。鞄の持ち主の名前と同じように「里道百合」と名乗る学生がいるという情報から、その女性が百合であることを直感的に感じた。


あかりは勇気を出して、百合に声をかけた。「すみません、里道百合さんですか?」


百合は驚いたように顔を上げ、少し戸惑いながらも答えた。「はい、そうですが…。あなたは?」


あかりはにっこりと笑い、「私は七星あかりです。昨日、カフェであなたの鞄を見つけました。それで、あなたの大学まで届けに来たんです。」と言って、百合の鞄を差し出した。


百合は驚いた表情で鞄を受け取り、感謝の気持ちを込めて深々と頭を下げた。「本当にありがとうございます!鞄を失くしてしまって困っていたんです。わざわざ届けてくださって、本当に助かりました。」


あかりは少し照れくさそうに笑い、「いえいえ、大したことじゃないですよ。でも、あなたに無事に届けられて良かったです。」


二人はその場で少し話をした後、あかりは百合に連絡先を交換することを提案した。


百合は嬉しそうに頷き、「もちろんです。ありがとう、あかりさん。」と答えた。

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